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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-B 凄い勇者は勇者ギルド(仮)の拠点が欲しい
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俺は仕返しに失敗した 『少しお願いしただけよ』

シルヴィアお母さんの件が終わった後、セレグが目を覚ました。

生きていた……本当に良かった。


俺、シルヴィア、セレグの3人は食堂にいる。


「クレスさん。シルヴィアさん凄いですね」

「本当にな……」


シルヴィアは10人程の女性職員に囲まれている。


俺に拳をいれた彼女に全職員がドン引き状態になった。

だが1人の女性職員が勇気を出し、シルヴィアに声をかけて状況が変わった。


今、女性職員達はシルヴィアに尊敬の眼差まなざしを向けている。


「どうしたら、そんな体系を維持できるのですか?」

「お子様がいらっしゃるのに凄くスタイルが良いですね」

「どんな美容をしているのですか?」

「お姉さまと呼ばせて下さい」


最初は子ども説を否定していた。

だが今ではどうでも良くなったようだ。


すっかりココでカリスマ的地位を築きやがった。


時々、俺を見てニヤっとするのでイラッとする。

完全に仕返しが裏目に出た。


そんな事を考えながらシルヴィアを眺めていると……


「クレスさんですね」

「はい」


誰かに声を掛けられたので、俺は猫をかぶって返答した。


俺に話しかけてきたのは……

茶色いカウボーイハットを手にした銀髪の男性だ。

目は黒く、日焼けをしたかのような色の肌をしている。


「初めまして。私はアルベルトと言います。以後お見知りおきを」

「クレストと言います、クレスと呼んで下さい」


俺が敬語で話すとアルベルトは目を丸くした。


「……敬語を……」

「なにか?」


アルベルトは茫然としている。

何で初対面の俺の挨拶に驚くんだ……初対面だよな?


いや、アルベルトは『初めまして』とさっき言ったから初対面のハズだ。


「すみません。聞いていた話と違ったもので……」

「聞いた話?」


どうやら俺のことを誰かに聞いたようだ。


「ええ。ケット・シーの大長老様からクレスさんのことは、お伺いしました」

「……そうですか」


そう言えば、大長老は俺に敬語を使われるのを嫌が……怖がっていたな。

凄く変なことを吹き込まれている気がする。


「少し失礼でしたね」

「いえ」


笑顔を崩さずアルベルトは謝罪をした。


「勇者ギルドについては、拠点の候補地の選定などで関わらせて頂いております」

「ご協力ありがとうございます」


俺が勇者ギルド(仮)に関わっていることは大長老など一部の者しか知らないハズだ。

協力しているということは、大長老に近い人間ということだろうか?


「昔から大長老様には懇意にして頂いておりまして、そのツテで勇者ギルドに関わらせていただきました」

「そうだったのですか」


俺は笑顔を作ってアルベルトに返答した。


「……笑顔を……」

「なにか?」


なぜかアルベルトは固まっている。

信じられないものを見たというような表情だ。


「失礼。少しお伺いしていたことと……」

「……いえ」


どうやら大長老は、とんでもない俺の人物像をを吹き込んでいるようだ。



~5分後~


俺とアルベルトは、それから5分ほど話した。


アルベルトから聞いた内容は……

勇者ギルドを作るのに、彼はケット・シー達と協力し合っている。

彼は、俺が勇者ギルドの資金を出したと知っている。

今回はスポンサーともいえる俺に挨拶しにココまで来たらしい。



「では、私はこれで……」

「ええ。それでは……」


俺と話し合ったあと、そのまま食堂を出ていった。


今度、大長老に色々と聞いておいた方が良いかもな。

彼の中で俺がどれほど邪悪な存在となっているかとか……


まあ、ここで考えていても仕方ないことか。


「部屋に戻るか」

「はい」


俺はセレグと共に用意された部屋に戻ることにした。


「シルヴィアさんには言わなくて良いのですか?」

「そうだな……」


シルヴィアを見ると、女性職員達に質問漬けにされ相当疲れているのが分かる。


考えてみれば、ココは娯楽に乏しい小島だ。

そこにシルヴィアという娯楽が現れれば飛び付くのは当たり前か。


俺の仕返しは思わぬ形で実を結んだようだ。


「話しているのを邪魔するのも悪いだろ。俺達だけ先に戻ろう」

「……そうですね」


俺は満面の笑みで建前を伝えた。

セレグは一瞬悩みながらも俺の考えを受け入れてくれた。


「じゃあ、戻るか」

「はい」


俺とセレグは食堂のドアへと向かった。すると……


「……あっ、もう部屋に戻る時間よね」


シルヴィアは俺をダシに質問攻めの状況から脱出するつもりのようだ。

そんな事は俺が許さん!


「シルヴィアお姉さま。お休みなさい」

「えっ?」


俺は精一杯の愛想を振りまきながらシルヴィアにお休みと伝えた。

意外な俺の反応に彼女は思考が止まったようだ。


俺達の姿が見えなくなればシルヴィアも俺達をダシにするのが難しいはず。

早足で、俺はその場を去った。


………

……


~翌日 食堂にて~


「なあ、シルヴィア」

「なに?」


俺の質問にシルヴィアは笑顔で応えてくれた。

だが、邪悪さを感じる笑顔だ。


「さっきからチラチラ見られている気がするんだが」

「……それ、僕も感じていました」


周囲の女性職員達が俺を朝からチラチラ見ている。

なんか残念な物を見るような、何とも言えない視線だ。


「あなたが部屋に戻ったあと、少しお願いしただけよ」

「……どんなお願いだったか気になるんだが」


その『お願い』が何かは聞いたらいけない気がした。


だが聞かずにはいられなかった。

チラチラ見るだけでなく、頬を少し赤くしているのが気になって仕方ないからだ。


「フッ」


鼻で笑うと彼女は手元のカップを口にした。

冷笑というか。

思いっきり俺を見下したような──。


「……なにを言ったんだ?」

「フッ」


再び冷笑。

コイツ、何も言わない気だな。


「フッ」


コッチをチラッと見て再び冷笑。


ああ、そうか。

俺は理解した。


「朝食にでもするか」

「っ!」


スルーという選択肢を選ぶと、彼女は目を見開き驚いた。

やはりな。

コイツは、相手をして欲しいだけだ。


──無視をしよう。


朝食を受け取り、穏やかな時間を楽しむことにした。

例えば、相手にして欲しそうにコッチを見ているバカ友がいたとしても。


──いや、やっぱり無理だ。


ヤツが無駄に美人なせいで、寂しげな姿が気になって仕方がない。

それに周囲の職員たちも、俺に敵意を向け始めている。


お前ら、大人げないぞ。

俺のようないたいけな美少年に、それはないだろ。

などと心の中で叫んでも、誰かに聞こえるはずがない。


徐々に居心地が悪くなり、結局は俺が折れることになった。


「そこ、空いているから座ったらどうだ」


不本意ながら、向かい合う席に座るように勧める。

一瞬、満面の笑みを浮かべた。

が、すぐに澄まし顔に。

そして──


「どうしてもっていうのなら仕方がないわね」


──などと、ほざいた。


少しイラっとしたが何も言えない。

職員達の敵意が怖いから。


この僅かな時間で、職員の心を掴むとはな。

恐ろしいヤツだ。

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