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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-B 凄い勇者は勇者ギルド(仮)の拠点が欲しい
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俺は魔王城に向かった 『……認めなさいよ』

俺達は魔王城『ラジ・アーシカ』を目指している。

念のために言っておくが、別に最終決戦に向かうわけではない。


魔王城への道のりをまとめるとこうなる。

船→草原→森→崖(小さな山)→魔王城


今、俺達は森の中を進んでいる最中だ。

周囲は、うっそうと茂る木々に覆われ薄暗い。


だが所々目印となる道標が用意されており迷うことはない。

この道標は魔王城を調べている研究者達の為に用意された物だ。

で、俺達は最初に研究者と接触する予定だから道標に沿って行けば良い。


「クレスさん……こっちで良いんですか?」

「多分な」

「……認めなさいよ」


不安げにしゃべるセレグ。

シルヴィアは少し苛立っている。


「何をだ」

「目を合わせないことが、何を言っているのか分かっている証拠よ」

「……きっとこの先に」

「「絶対に何も無い」」


セレグとシルヴィアは声をハモらせながら俺の意見を否定した。

俺も薄々は気付いていたんだがな迷ったことに……


「なんで道標みちしるべを無視するのよ」

「こっちの方が近いと思って」

「……もういいわ。戻りましょう」

「呆れた風に言うな。そもそも、なぜ止めないんだ!」

「どんどん奥に進むからでしょ! 1人にするわけにいかないじゃない!」

「うぐっ……すまん」

「あと、逆切れしたことも謝ってね」

「すまん」


俺が謝るとシルヴィアの目が、一瞬光った気がした。


「もっと心を込めて!」

「すみ……」

「『ごめんなさい』でしょ!」

「ごめ……」

「もっと可愛く」


………

……


~数分後~


「シルヴィアお姉さま。ゴメンなさい」

「もう、しちゃダメよ」

「はい」


俺は涙目でシルヴィアお姉さまと言わされている。

なぜか彼女は凄く嬉しそうだ。


──俺は何かを失ったような気がした。


「あの、そろそろ行きませんか?」

「そうね」


セレグの要望にシルヴィアは答えた。

俺の扱いとセレグの扱いが全く違うような気がするのだが。


きっと質問したら馬鹿だからとかいうんだろうな……聞かないでおこう。


シルヴィアを先頭に俺達は歩いて来た道を戻った。


だが……


「シルヴィア」

「きっと……」

「認めろよ」


俺は凄く嬉しかった。なぜなら……


「迷ったな」

「うっ ……きっとこの先に」

「俺と同じことを言っているぞ」


シルヴィアは森の民と呼ばれるエルフだ。

そんな彼女がアッサリと迷った時点で不自然だが、教える気はない。

何故なら仕返しのチャンスだからだ。


「ごめなさいは?」

「…………ごめ……」

「おかしくないですか?」


シルヴィアの謝罪をもう少しで聞けそうだった。

しかしセレグが気付いてしまったようだ。


「チッ」

「なぜ舌打ちを……あっ」


うっかりおこなってしまった俺の舌打ちで、シルヴィアも気付いてしまった。


「エルフの私が簡単に迷うわけがないわよね。クレス」

「お、おう」

「それに、この辺りって魔力で感覚に干渉を受けているみたいね。クレス」

「そ、そうだな」


笑顔で俺に現状を説明するシルヴィア。

俺は冷や汗をダクダク流している。


「何か言うことはないかしら? クレス」

「……シルヴィアお姉さま。ゴメンなさい」


──俺は再び何かを失った気がした。



~クレスが何かを失った後~


俺達は感覚に干渉している魔力を調べた。


「これは結界ですね」

「ほ~ 分かるのか」

「少しですが」


セレグは、俺が思っていた以上に魔法への適性が高いようで感心した。

実践訓練として森の脱出を行わせるのも良いかもしれない。


「セレグ。お前ならどうやって脱出する?」

「えっ僕だったらですか」

「実践訓練だと思ってくれ」

「いきなり……」

「こういうトラブルは、いきなり起こるもんだろ」

「そうですが……」

「今なら俺とシルヴィアがいるんだ。気軽にやってくれ」

「そうね。この馬鹿のせいで迷ったわけだけど……セレグ君の訓練になるのなら、迷ったのも無駄じゃなくなるから頑張って」


シルヴィアは、さりげなく俺を馬鹿だと言った。

まだ怒っているようだ……器の小さいヤツめ。


「クレスって考えていることが顔に出やすいわよね。前世の時から」

「そうか?」

「私の悪口を頭の中で言ったでしょ」

「…………」

「ごめんなさいは?」

「シルヴィアお姉さま。ゴメンなさい」


──俺は、この謝り方に抵抗が無くなってきた。



「あの、もう良いですか?」

「ええ、満喫したわ」


満喫というか……シルヴィアにとって俺の謝罪は娯楽の一種ということらしい。


「木に傷をつけて印にするというのはどうです?」

「感覚を乱されているだけだから十分効果はあるな。他には?」

「えっ 他ですか……」

「トラブルに会った時は選択肢の把握が重要となるんだ。なぜなら……」


トラブルに会うと平常心を失う。

だからパニックを起こした状態で考えていると思えば良いだろう。

パニックを起こしているのだから、狭い視野でも見つけられる対策しか思い浮かばない。


よってトラブルにあった時は、視界を広くするため選択肢を多く見つける必要がある。


「少しは考えているのね」

「俺とて全く考えていないわけではない」

「クレスさん……褒められていませんからね」


セレグは呆れたような声で俺に注意した。

そうか俺は褒められていなかったのか。


「じゃあ、セレグ君。他の回答を聞かせて」

「はい。他には……」


その後、セレグはいくつかの考えを述べる。

俺達は、そのうちの一つを採用し元の場所に戻った。


俺が迷ったのも感覚が魔力で乱されていたせいだ……多分。

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