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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-A 凄い勇者と魔王転生の儀式
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俺は魔王と戦った 『問うのは聖鍵の所在だ』

 クレスの戦闘力 魔王との戦い 

 チート:一部? だけ使用

 勇者の素質:自主的に封印中

 消耗しすぎてチートも弱体化している

焼け野原となった森に魔王は立っている。

いつの間にか満月が顔を覗かせており彼女に光を当てていた。


銀色の髪に金色の瞳、肌は病的なまでに白い。

黒い服とマントを身につけておりヴァンパイアを連想する。


雰囲気は男装の麗人と例えるべきだろうか?

凛々しさと美しさを兼ね備えた女性のように感じる。


「己の領分を理解出来たのなら、お前に1つの道を用意してやろう」


俺の目の前に立った魔王は銀色の髪を風にたなびかせながら口にした。


「道?」

「我の問いに答えられたのなら、生かしてやる」


答えられなければ、間違いなく殺されるだろう。

今の俺は勇者の素質を使えない。

さらに体力も魔力も尽きかけている。


「問いとはなんだ?」

「口のきき方も知らんか……まあいい。問うのは聖鍵せいけんの所在だ」


聖鍵……か。


「知らないな」

「そうか」

「!!」


俺の答えに言葉を返すと魔王は再び細剣で斬りかかって来た。

彼女は風のような身のこなしで細剣を振るう。


俺は短剣を使って何とかさばいている。

左右前後上下、あらゆる方向から襲いかかるかのような剣。

いずれ俺に限界が来るのは目に見えていた。


しかし結果が見えていながらも、今の俺は相手の剣をさばくしか出来ない。

魔王の攻撃は続き、俺の体力は削り取られていく。


(マズイな)


少しずつ自分の動きが鈍くなっているのが分かる。

鋭い斬激を防ぎ続けたせいで手もマヒしかけてきた。


そんな中、相手の突きを反らしたときに俺はバランスを崩してしまった。


「クッ」


その隙を狙われ、力を込めた剣が俺の左から迫って来た。


「くっ」


俺は短剣を盾にして何とか防いだ。


アブねっ……だが、これだけの力で打ち込んで折れないとはな)


細剣というのは基本的に折れやすい。

だが魔王の力に耐えられる程の強度を持っているとは、とんでもない剣だ。


俺が魔王の剣を受け止めると表情一つ変えず彼女は下がった。


「我が剣を防ぐとは……お前はここで葬る必要がありそうだ」


魔王から強大な魔力が発生する。

どうやら本気になってしまったようだ。この時点で俺の生存確率は0となった。


──正面から戦えばの話だが。


「黒獅子よ」


俺は使い魔を呼んだ。

フェンリルをイリアにプレゼントしてしまったので新しいのを作っておいた。


黒獅子は、全身が黒いライオンで、たてがみが赤い。

悪者にしか見えないが気にしない。


「行け!」


俺は黒獅子を魔王にけしかけた。


「ほう、使い魔か」

「GUOOoooooo」


黒獅子は魔王に襲いかかった。

時間を稼ぐための捨て石になってもらおう。


正面から戦っても魔王には勝てない。

逃げようとしても無理だ。


今の俺が最優先に考えるべきは何か?

それは『どうすれば生き残る可能性を高められるか』だろう。


この時間を利用して俺は、場を荒らすつもりだ。

ゴチャゴチャすれば逃げ出す隙ぐらいは生まれるかもしれない。


ぶっちゃけ運任せだ。


俺はアイテムBOXから一冊の本を取り出す。

その本は『邪神を(戦って勝てば)使役できる本』。


俺は本を開き邪神召喚を行った。


「古の盟約にしたがいて我は汝の試練を求むる者なり。悠久の戒めを解き、我の前に顕現せよ。邪神ラウフト・ポルテ」


開かれた本からは、おぞましいまでの魔力が溢れだす。

そして黒い煙が本から溢れだし呻き声のような物すら聞こえる。


「!!」


俺が視線を向けると魔王は本から溢れ出る魔力を警戒していた。

彼女の顔からは、これまで見せていた余裕は消えている。


そんな魔王の横では黒獅子がピクピクしている。


(1分も持たなかったか……)


俺は、黒獅子を爆発させた。

可哀想だが、これも俺が生き残るためだ。


「くっ」


爆発に気を取られ魔王の視線が俺から一瞬だけ外れた。

少しだけ時間を多く稼げたようだ……元勇者のすることではないが気にするな。


邪神を呼び出している最中に襲われたら、呼び出しに失敗するからな。


本から溢れだす魔力は増え続けている。

赤い雷が本から時折、光を放つ。


そして遂に邪神が召喚される!


魔人は黒い煙に包まれていて姿がまだ見えない。

だが少しずつ煙が晴れていき僅かに右手が見えた。


俺の前に現れた邪神の手は白く……(昔と色が違うような?)


さらに黒い煙は晴れていく。

黒い煙が晴れると、5メートルはあろうかという巨大な骨が、目の前に立っていた。


そこに僅かな風が吹くと邪神の白骨死体・・・・・・・・は崩れ落ちた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


俺は、崩れ落ちる邪神の白骨死体を見て何も言えなかった。

この世界から俺が自分の世界に戻って130年は経っている。


この本を手に入れたとき、すでに邪神はご高齢だった……寿命かな?


唖然とする俺とは違い魔王は警戒を緩めていない。

俺が何かを企んでいると思っているのだろうか?


──やり通すしかない!


俺は変な覚悟を決めて魔王の警戒心を利用することにした。


「コイツに俺の全てを賭ける」

「フンッ」


魔王の瞳には先程とは違い強い意思を感じる。

挑む者を正面から向かい打ち勝とうとする王の誇りかもしれない。


「我は天の門を開きて彼の地への道を求める。我の名はスバル」


俺は魔王に聞こえない程度の小さい声で詠唱している。

この魔王の聴力が、どの程度か知らないが聞こえないことを祈る。


「大地を歩きし人の子にして天の道を歩む資格を有す者」


魔王は俺の魔法を正面から受けて破る気なのだろう。

剣を構えて、その時を待っている。


「彼の地の名は『次元の狭間』天の門よ開きて我に道を示せ」


俺は光に包まれて転移した。


「…………」

「…………」

「…………!!」


状況が飲み込めず、しばらく茫然ぼうぜんとしていた魔王。

しかし状況が飲み込めたとき、冷徹その物だった顔に初めて感情を表した。


「…………」

「……これほどの愚弄を受けたのは初めてだ」


魔王は妙に迫力のある笑みを浮かべて今しがた起きた出来事を思い出していた。

だが彼女の内心は堪えようのない怒りに満ちており……


「…………」

「ふざけおってーーー!!」


この夜、森には怒りに満ちた女性の声が響き続けた。

ちなみに転移する寸前に俺は、邪神の亡骸を本にしっかりと回収しておいた。

何かで再利用できるかもしれないしな。


あと転移魔法はスバルという名前と次元の狭間を指定して使った。

だから魔王に探し出されることはないだろう。

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