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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-A 凄い勇者と魔王転生の儀式
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俺と悪魔の戦い 『俺は弱いな』

※この話には残酷描写があります。


 クレスの戦闘力 オーバーロード状態の悪魔との戦い 

 チート:全て使用

 勇者の素質:自主的に封印中

 神に能力がばれるないように、結界を張ってチートを全て使用中

焼け野原となった森。

白い鎧と仮面を着けたクレスと黒い炎を背から吹き出す黒いリザードマンがいた。

だが黒いリザードマンは左の肩付近から右腰までを両断されている。


「……やる…じゃあねえ…か」

「こっちもボロボロだがな」


俺は火傷に回復魔法をかけながら話している。

悪魔の炎は通常の物とは違うため防ぐのは難しかった。


「この…後……俺が…何するか…分かるか?」

「オーバーロードだろ」

「分かって…んなら…始…めよう…か」


オーバーロード。それは悪魔が自らの魔力を増幅させ暴走させる行為。

魔王の素質を得られなかった不完全な悪魔とはいえ災厄と呼べる力を持つだろう。


今の俺ではオーバーロードの発動を止めることは出来ない。

ここは無駄な消耗を防ぐため黙って見ているのが最善といえる。


「じゃあ……な」


悪魔が不気味に笑うと噴き出ていた炎は黒く変わった。

地獄の炎とは、このような炎なのだろう。


分断されて、2つになった両方の体から同時に黒い炎が吹き出している。

そして分断された体は炎その物となったあと、再び一つに修復された。


悪魔の姿が少し変化した。

噴き出していた炎は黒くなり、肉体も一回り大きくなっている。


「GAAAaaaaaaaaaaaa」


悪魔の意識が戻った時に感じた知性は消えて再び本能だけとなった。

……いや、意識が無かった状態よりも禍々しい意思を感じる。


モンスターですら生存本能などの生きるための意思がある。

だが目の前の悪魔からは破壊衝動しか感じられない。


魔王の素質が無ければオーバーロードを発動させた悪魔が元に戻ることはない。

だから今回の場合は敵を道連れにする自爆技だ。


だが俺はオーバーロードに対抗する手段を持っている。

魔女の庭は、これから使う魔法を神に察知されないための物でもあるんだ。


「マスターエレメント」


マスターエレメントは、全属性の魔力を干渉させ合い暴走を引き起こす。

魔力の大半を消耗するのだが、この魔法単独ではデカイ魔力を得るだけだ。


俺がマスターエレメントを発動させると悪魔は襲いかかって来た。


先程までよりも遥かに速い動きだ。

そして炎の威力を物語るかのように、走るたびに足元から黒い炎が周囲に燃え広がっている。


足元を燃やしながら俺に近づいてくる悪魔。

間合いに入ると、右腕に黒い炎が集まり……俺に右腕が振り下ろされた。


「GUAAaaaaaaa」

「ううおおおぉぉぉぉぉ」


俺は振り下ろされた右腕を両手で防いだ。

だが力比べとなってしまっている。


このままマスターエレメントの魔力を無駄に消費するのは避けたい。


俺は両手を離し、鎧で悪魔の拳を受け止めることにした。

拳が触れるであろう個所に障壁を集中させピンポイントで発生させる。


俺は手を離す時に、拳の軌道を誘導するため、横から爆発魔法を放った。


そして悪魔の拳は障壁を張った俺の胸へと当たる。

俺は衝撃によって後ろに大きく吹き飛ばされた。


(光輝の鎧を砕くのか!!)


俺の鎧にはヒビが入った。

だが十分に距離はとれたハズだ。



「来い!ファーウェル」


俺はファーウェルを呼び出した。

更にアイテムBOXから『星の欠片』という蒼い宝石を取り出す。


「数多の大精霊よ、我の声に応えよ」


マスターエレメントにより発生させた魔力をにえとし大精霊に呼び掛ける。


「我が記憶を証とし、この世に混乱招く脅威を退けるための力を我に与えよ」


俺は戦っている悪魔に関する記憶を大精霊達と共有する。

ここから多少時間がかかってしまう。


自らを殺そうとする者を放っておく者などいるはずもなく、この隙を狙われる。


悪魔は再び襲いかかって来た。

右腕を振り上げて俺に攻撃を仕掛けてくる。


その右腕には先ほどよりも遥かに大きな黒い炎が集まっている。


俺は全力で悪魔の方へと走った。

そしてファーウェルを盾にして悪魔の攻撃を防いだが再び吹き飛ばされた。


「チッ」


今の攻撃で腕の骨にヒビが入ったようだ。

だが我慢すれば問題は無いだろう。


俺が吹き飛ばされている時、大精霊が呼びかけに応えた。


『クレス、脅威を払う力をお貸しします』


俺の呼びかけに応えたのは虚像の大精霊だった。


オーバーロードを発動させ強大になった悪魔の力は精霊にとっても都合の悪い物。

だから不必要な干渉を避ける大精霊も力を貸してくれる。


「呼びかけに応えしは虚像の大精霊。その力はうつろにしてじつ。何人たりとも捉えられぬものなり」


俺の言葉が終わると星の欠片に虚像の大精霊の力が集まる。

まるで金色の光が星の欠片に飲み込まれていくようだ。


光を全て飲み込んだ星の欠片は、それ自体が光り始めた。

俺が星の欠片をファーウェルの蒼い刀身に近付けると吸収される。


「虚像の大精霊よ、その力を示せ!」


ファーウェルの刀身が鏡のようになり、刃にヒビが入り砕け散った。


砕けた刃は宙を舞い周囲に広がっていく。

そして破片が俺の姿を模した幻を作り出した。


け!!」


俺の声とともに俺の姿を模した幻が一斉に悪魔へと襲いかかる。


その幻は虚にして実。

全てが偽物であり全てが実在する存在。


最初に攻撃を仕掛けた幻は悪魔が振るった爪により砕かれた。

だが鏡のように砕けた破片が悪魔に襲いかかり切り刻んだ。


欠片を浴びた悪魔は一瞬動きを止めた。


その隙に2体目の幻が一太刀を浴びせる。

一太刀を浴びせた瞬間、2体目の幻も鏡のように砕け悪魔に襲いかかった。


3体目、4体目、5体目……と悪魔にへ襲いかかる俺の姿をした幻。

幻は一太刀を浴びせると、自身が砕け欠片が悪魔を切り刻み続けている。


幻が放つ数十の剣と数千に及ぶ欠片は悪魔をズタズタに切り刻んでいった。


「アッ アァァ」


剣による深い傷にガラス片のような欠片による細かい傷。

全身から血を垂れ流す悪魔は小さく声を発することしかできない。


そして最後の虚像が攻撃を終える瞬間、俺が動く。


「終わりだ!」


ファーウェルに再び鏡のような刀身が生まれて、俺自ら悪魔を斬った。

振りぬいたファーウェルは普段通りの青い刀身へと戻っている。


悪魔の体は斬った個所から鏡のように変わっていく。

全身を侵食するまでに数秒とかからず悪魔は鏡となり砕け散った。


………

……


『魔女の庭』は俺と悪魔、2人が揃っている必要がある。

よって魔女の庭を維持する条件を満たせなくなり、魔方陣は砕けるように消えた。


「ふぅ」


俺は焼け野原となった森の中に立ってた。

砕けた悪魔の欠片は既に消滅している。


「不完全な悪魔に、ここまで苦戦するとは」


今の俺は勇者の素質を使えない。

そしてチート能力の多くは勇者の素質に連動している。

だから前世に比べて大幅に弱体化しているのは当たり前だが……


「俺は弱いな」


俺は自分の弱さを痛感していた。

今の俺だけでなく前世の俺も含めてだ。


前世の俺はチート能力による力押しで勝っていたと今回のことで実感した。

その頃の延長線での戦い方で俺は、しなくてもよい怪我をしてしまった。


「俺もガリウスに鍛えてもらうか」


俺が独り言をいっていると、悪魔の立っていた場所が光った。


「なんだ?」


俺は何かが光った場所に行ってみることにした。

だが、何者かが攻撃をしてくる気配を感じ、俺は咄嗟とっさに攻撃を防いだ。


「くっ」


俺が攻撃を防いでも、相手は次々に細剣による攻撃を仕掛けてくる。

重力が体に掛っているのか疑問に感じるほどの軽やかなステップだ。


俺はファーウェルで防ぐのが精一杯だった。


子どもの体にファーウェルの大きさは合っていない。

どうしても剣に振り回されてしまう。


(このままだと確実に押し負ける)


悪魔との戦いで体力を消耗した。

魔力に関しては、マスターエレメントの影響で空になる寸前だ。


しかもコイツは……


俺が、この状況を打破しようと考えていると突然相手が下がった。

数ステップで大きく俺から距離をとる。


下がっている最中、細剣を地面に向かって振った。

どうやら俺が確認しに向かった『光る物』を細剣に引っ掛けて拾ったらしい。


俺は短剣をアイテムBOXから取り出しファーウェルをしまった。


「実力の差は分かったか?」

「……ああ」

「己の領分を理解出来たのなら、お前に1つの道を用意してやろう」


俺には、相手の素質を見抜く能力がある。

その能力を使えば勇者の素質であろうと魔王の素質であろうと見抜ける。


目の前の女性は魔王の素質を持っていた。

それも魔王転生の儀式を成功させた者が持てる完全な魔王の素質を。

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