俺と炎の悪魔 『来な』
※この話には残酷描写があります。
クレスの戦闘力 悪魔との戦い
チート:全て使用
勇者の素質:自主的に封印中
神に能力がばれるないように、結界を張ってチートを全て使用中
俺は『魔女の匣庭』という結界魔法を発動させた。
この魔法の効果は……
『術式を込めた魔力を持っていた相手』と『術者自身』が対象だ。
今回の場合は俺と悪魔が対象となる。
俺が魔女にの庭を発動させると、周囲に淡い光が展開された。
その光は森全体を包むかのような広さに展開されていく。
そして十分に展開すると足元と上空に魔方陣が浮かぶ。
足元の魔方陣は赤く、上空の魔方陣は青い。
「さて……結界の説明は必要か?」
俺は悪魔に語りかける。
すると背から噴き出ている炎の色が赤から青い色へと変化していった。
「俺が意思に目覚めたことに気付いていたのか」
「魔法を防ぐときに意思のような物を感じたからな」
青い炎の黒いリザードマンには知性が見える。
時間をかけ過ぎたせいで悪魔の意思が目覚めてしまったようだ。
「随分、悪魔と戦い慣れているようだな」
「昔の話だ」
リザードマンの瞳も青く変わっている。
その目に知性を感じるのは気のせいではないのだろう。
「フン、まあいい。せっかくだ、結界の効果を聞かせてもらえるか?」
「ああ」
『魔女の庭』は相手や自分に影響を与える物ではない。
だから効果を話そうとも全く問題はないハズだ。
「 魔女の庭は俺やお前を、どうこうする物ではない」
「そいつは、随分お優しいことで」
「疑似的な空間を作り術者と対象者を閉じ込める。そして結界内に外から誰も入れなくなり、内部の観察も外からでは出来なくなるだけだ」
「それって出られね~って事じゃねえか」
「安心しろ。俺とお前の2人が生きていなければ結界は維持できない」
「……ようするに殺し合いをして1人になれば良いわけか」
「結界があろうとなかろうが殺し合っていたんだ。問題はないだろ?」
「違いない」
魔女の庭は、外からの干渉を避けるための結界。
特定の方法以外では外部から結界内部を覗くことも出来ない。
「お前にメリットはないようだが……何かあるんだろ?」
「俺のメリットは企業秘密というヤツだ」
「それは残念」
悪魔は肩をすくませるようなポーズをとった。
「じゃあ、始めるか」
「そうだな」
俺と悪魔は口元を歪ませた。
そして……俺は短剣で、悪魔は爪で戦いを始める。
「はあぁぁぁぁ」
「おぉぉぉぉぉ」
俺の短剣と悪魔の爪が何度もぶつかりあう。
爪とぶつかったとは思えない甲高い金属音が周囲に響き渡る。
その音は何度も、何度も、何度も、何度も響き渡った。
「こんなもんじゃ、ねえだろ!!」
俺に浴びせられる悪魔の怒声。
その声に俺が応えるようにマスターウォーターの制限を外し発動させる。
魔女の庭を使う俺のメリット。
それは制限を外した俺の魔力を神に知られないことだ。
「斬り裂け」
俺の声に合わせ、無数の水刃が悪魔に襲いかかる。
だが水の刃は悪魔の爪により次々に引き裂かれていく。
「水よ舞え」
俺は再度、魔法を発動させる。
水滴が悪魔を囲むかのように展開された。
「斬り裂け」
俺の声に合わせて再び無数の水刃が悪魔に襲いかかる。
だが今回は全方位からの攻撃だ。
「クソッ」
悪魔は炎と組み合わせた障壁を張り身を守った。
そこに無数の水刃が飛来し敵を切り刻んでいく。
水刃は悪魔の炎に蒸発することなく襲い続けた。
しかし水刃が止んだあと、傷を負いながらも悪魔は立っている。
一瞬笑みを浮かべたと思ったら悪魔は自身を軸とし青い炎の壁を作りだした。
悪魔が作った炎の壁は周囲に広がり俺を飲み込みつつある。
「マスターフレイム」
俺は悪魔の炎を防ぐため、属性を変える。
だが悪魔が操る炎は通常の炎と根本的に違うため完全に防ぐのは難しい。
障壁を張り敵の攻撃を少しでも和らげることにした。
炎の壁は俺を通り過ぎた。
何とか凌ぎ切ったようだ。
悪魔はというと、俺に攻撃している間に炎を喰って回復したらしい。
先程、水の刃で付けた傷は完全に消えていた。
「やるじゃねえか」
「お前もな」
俺と悪魔はお互いを認め合った……殺す価値があることを。
「ほら、今度はこっちから行くぞ」
悪魔が叫ぶとヤツの周囲に数十個に及ぶ青い火球が生じる。
その火球はバスケットボール程度のサイズだ。
「ほらよ!」
悪魔の声に合わせ十数個の火球が同時に飛んでくる。
その火球は一点に向かっているのではなく散らばっていた。
(俺の避ける場所を予測して撃ってきたか……なら!!)
俺は正面の火球に飛びこむように走り始めた。
右手に短剣を逆手に構え水の魔力を込めている。
「来な」
俺を試すかのような目をして笑っていやがる。
「マスターウォーター」
余裕を見せる悪魔に向かって俺は走り続ける。
その途中で水滴を俺の後ろに展開させた。
飛んでくる火球を……
正面から来た数個はギリギリで避ける。
右から来る物には姿勢を低くするも背を焼かれる。
再び正面から来た火球はジャンプして避けた。
「だああぁぁぁぁぁぁ」
俺はジャンプした状態から、短剣を突き刺す姿勢で悪魔に飛びかかる。
「甘え!!」
悪魔は俺を右手の爪で貫くように突いてきた。
(撃て!)
火球を潜り抜けるときに俺に隠れる形で展開させた水滴。
それを自身の右半身に撃ち込んだ。
空中で体勢は大きく変わり、右手が前に出た形になった。
身動きが取れないハズの空中。
力ずくではあるが虚を突くには最適な方法だ。
「なっ」
悪魔に驚愕の表情が浮かぶ。
爪は俺の鎧を僅かに掠るも外れる。
そして左手に持ち替えた短剣を逆手で、悪魔の肩と首の間に刺した。
「ガアアァァァァァ」
悪魔の口から発せられる絶叫。
だが、悪魔を倒すには傷が浅すぎる。
俺は水の魔力を短剣に流し、水の刃を作って悪魔の傷を広げた。
「アアアァァァァァ」
一層、悪魔の絶叫は大きな物へとなった。
水の刃は敵の右腰にまで達して貫いている。
しかし俺も無傷ではない。
悪魔が噴き出す炎で俺には火傷が出来ている。
水魔法だけで悪魔の炎を防ぐことは不可能なためだ。
だが手をココで緩めるわけにはいかない。
俺は一層、短剣に通す魔力を増やし巨大な刃を作り出す。
その刃は悪魔の胸や背からはみ出すほどの幅となり……悪魔を両断した。




