俺は悪魔と戦う 『条件は揃った』
クレスの戦闘力 悪魔との戦い
チート:一部を使用
勇者の素質:自主的に封印中
神に能力がばれるのを恐れて、チートは一部のみ使用中
森だった場所は火の海と化している。
そして、この地獄を作った悪魔は目の前にいる黒いリザードマン。
まずは様子見のため、俺は短剣を逆手に持ち斬りかかる。
だが悪魔もまた反撃として右手で殴りかかって来た。
その右手は炎に包まれており、触れた瞬間に爆発する術式が込められている。
俺は悪魔の拳を避けながら通り抜けざまに脇を斬り付けた。
脇の傷は火の色で輝いている。
俺は悪魔から距離を置き様子を見ることにした。
悪魔は、ゆっくりとコチラを振りかえると大きく息を吸い始める。
そして周囲を焼く炎を吸いこんだ。
(やはり、そう来たか)
悪魔は周囲の炎を喰らい傷を治せるようだ。
俺が負わせた傷は、みるみる回復した。
(一気に勝負を着けるか、回復出来なくするのどちらか……)
周囲の炎を魔法で消すにしても消耗が激しすぎる。
俺は一気に勝負をかけることを選んだ。
「マスターウォーター」
再度俺はマスターウォーターを使った。
そして無数の水滴を周囲に展開させる。
「撃ち抜け!!」
俺の掛け声とともに水滴は弾丸のように悪魔に襲いかかる。
だが対する悪魔は微動だにせず咆哮を上げた。
「GAAaaaaaa」
周囲に響き渡る咆哮と共に巨大な炎の壁が生じた。
炎の壁に俺が放った水の弾丸は飲み込まれ蒸発させられたようだ。
だが炎の壁は俺の攻撃を無効化しただけではない。
悪魔を中心に出来た炎の壁が俺に迫ってきた。
「マスターフレイム」
俺はマスターフレイムを唱え自分の属性を火へと変えて炎の壁に飛びこんだ。
マスターフレイムを使った状態であれば、この程度の温度は大したことはない。
俺は炎の壁の中を走り抜け悪魔に襲いかかった。
悪魔は口から火球を吐きだす。
だが俺は、それを避けながら一気に近づく。
再び脇に深い傷を負わせて、そのまま距離をとる。
一定の距離を置いた所で俺は精霊石の腕輪にマスターフレイムの魔力を込めた。
傷を負わせたわけだから悪魔は回復するために炎を吸うはずだ。
「マスターウインド」
俺は風魔法属性へとマスター魔法を変えた。
同時に悪魔は自らの傷をいやすために周囲の炎を再び吸い込み始める。
巨大な口へと入っていく大量の炎。
俺は口の中に圧縮させた空気を撃ち込んだ。
密閉された空間に火と大量の酸素が入ったらどうなるか?答えは、爆発するだ。
圧縮した空気が悪魔の口に入ると爆音が響いた。
だが悪魔はケロッとしている。
(やはり無理か)
最初から期待はしていなかったが全くダメージが無いとは。
俺は再び精霊石の腕輪に触れた。
マスターウインドで作りだした魔力を流しこみながら。
「マスターアース」
今度は地属性へと変える。
俺は地面に手を置いた。
「波立て!」
俺の声とともに地面は波のように動き悪魔を飲み込んだ。
だが悪魔は平然と大地を砕き姿を見せる。
(時間稼ぎすら出来ないか)
俺は再び精霊石の腕輪に触れる。
そして大地属性の魔力を注いだ。
大地を砕き現れた悪魔は赤い炎を一層強く輝かせていた。
ヤツに魔力が集まっている……大規模な攻撃が来る合図だろう。
「マスターウォーター」
俺は悪魔の炎に対抗するためにマスターウォーターを発動させた。
悪魔は自らの炎を頭上に集め巨大な火球を作り出す。
それは赤い太陽……あれが落ちればこの森一帯が焼け野原になるだろう。
(避けるわけにはいかない)
防がないと逃げた子どもたちがマズイかもしれない。
俺はマスターウォーターを使い悪魔の火球に対処することにした。
そしてマスターウォーターの魔力を精霊石の腕輪に注いだ。
俺は両手を前に出し準備をした。
悪魔の炎を受け止めるために……ではない。
精霊石に込めた魔法の条件を満たすために!!
その魔法は4属性のマスタークラスの魔力が必要となる。
だが、もう一つ必要な魔力がある……それは……
両手を前に出し構える俺に向かい、遂に悪魔は太陽の如き火球を放った。
周囲が赤く染まっている。
空気は熱により暖められ激しく流動し強い風を生んでいる。
「水の魔力よ」
俺は青い水の魔力を集める。
上空から墜ちる太陽。
そこに見えるのは本来、絶望だろう。
だが、俺の目に見えるのは希望!!
「槍となれ!」
俺は水の魔力を槍の形状に変化させ天に向かって放った。
その槍に精霊石の腕輪に組み込んでいた術式と魔力を込めて。
白い槍が赤い太陽に向かって飛んでいく。
槍は太陽に飲み込まれるだけだと誰もが思うだろう。
だが、その予想は裏切られる。
太陽と槍が重なったとき、空に大きな模様が描かれた。
(条件は揃った!)
精霊石の腕輪に込めた魔法。
その発動条件は4属性のマスタークラスの魔法の魔力を込めること。
そして閉じ込める相手の魔力を込めること。
閉じ込める相手の魔力……すなわち俺の発動させた魔法は『結界魔法』
「発動せよ!魔女の箱庭」
魔方陣から柔らかな白い光が広がった。




