俺は目をつむらせた美幼女に修業させた 『暇なんですか?』
※2015/04/08加筆修正しました
イリアに転移石と通話石を渡してから3日経った。
彼女は剣を振るために屋外に出ることが多いのは調査済みだ。
そこでイリアに俺が提示する条件にあう場所がないか訊ねてみた。
すると俺が良いと思っていた場所が、彼女の挙げた候補に含まれていた。
もちろん、その場所に早めに設置してもらうことにしたぞ。
なぜ俺が直接、転移石を設置しなかったのか?
それは、ストーカーチックな身辺調査をしていたとバレそうだったからさ。
バレたら、汚い物をに向けるような視線で見られるだろうしな。
俺には、美幼女にそんな目で見つめられて悦ぶ性癖はない──多分。
それはともかく、転移石の設置は完了した。
よって一瞬でイリアに会いに行けるようになったわけだ。
で、今日は直接話す日となる。
少し緊張しているのはバレていないよな?
「じゃあ、目を瞑ってくれ」
「は、はい!」
イリアは、そっと目を瞑り俺はイリアを見つめている。
幼い平民と貴族の身分違いの恋…ではないぞ。
あくまで修行だ。
………
………
ゴクッ
………
今のは冗談だ。
………
………
俺はイリアの手を自分の手で包み魔力を通わせる。
「イリア、俺の魔力を取り入れることを意識するんだ」
「はい」
これは勇者の素質を開花させる手段の一つ。
勇者の素質を開花させた者の魔力を得る。
そうすることで対象者の素質開花を促すという物だ。
「イリア、集中力が乱れている」
「は、はい」
「異性の手を握るのは抵抗があるかもしれない」
「い、いえ」
「だが必要なことだと割り切って欲しい」
「…はい」
イリアは頬を紅くしている。
異性に触れる機会は貴族の令嬢であれば尚のことないはずだ。
緊張するのも無理はないのかもしれない。
だが、しばらく経つとイリアは意識を俺の魔力に向け始めた。
そして俺の魔力を取り込んでいる状態になった。
*
「あの」
「うん?」
「あまり顔を見ないで頂きたいのですが……」
「そうか?」
俺は目を瞑る。
*
「あの」
「うん?」
「さっきからチラチラ、私を見ているのが分かるのですが…」
「そうか?」
俺は、なるべく見ないようにしようと心に誓った。
*
「あの?」
「うん?」
「暇なのですか?」
「かなり……」
魔力を流すだけの俺は暇だった。
~1時間後~
魔力による素質開花訓練はひとまず終わった。
これから出来る限り続けていくことになるが、素質の開花は時間の問題だろう。
だが素質は開花するだけでは勇者になることは出来ない。
技術的な物もそうだが心の面も重要だ。
だから師として、俺はイリアに言っておかないといけないことがある。
「イリアが勇者を目指したい気持ちは分かっているつもりだ」
「はい」
「だから、あえて聞いておきたいことがある」
「なんでしょう?」
イリアは勇者になりたい。
その気持ちを俺は理解しているつもりだった。
だが、おとぎ話の勇者に憧れているのなら先にあるのは地獄だ。
だからイリアには勇者の現実を伝えておかねばならない。
「勇者は人を殺す。そして魔物も殺す。それは分かるか?」
「理解しているつもりです」
「殺したことはあるか?」
「……いえ」
まあ、この年で殺しをやったことがないのは当然だろう。
彼女の目には戸惑いの色が見て取れる。
「一度殺したら殺さなかった頃には戻れなくなる」
「はい」
「恨まれることもあるし、自分が殺されることもある」
「はい」
「お前は女性だから尊厳を傷つけられる行為を受ける可能性も高い」
「…………」
ここまでは自分のことだ。
だから自分の決めたことだからと覚悟は決められる。
だが──。
「大切な人間を巻き込むこともある」
「!」
「それでも勇者になりたいのか?」
「…………」
この問いに答えなどない。
その瞬間が来た時に、どうするかが唯一の答えと言えるだろう。
「今すぐ答えを出さなくてもいい」
「はい」
「まだ時間はあるんだ。訓練をしながら考え続けることだ」
イリアは勇者を目指す気がある。
だが、その道は血に濡れている。
一度、勇者になったら迷っても昔には戻れない。
だから彼女自身で考え続けて欲しかった。
俺の求める平穏は俺のわがままだ。
誰かを騙して生贄にしていい筈は無い。
これは罪悪感を誤魔化すための言い訳かもしれないが。
あとは技術的な物を教えておこうと思う。
イリアは我流で剣を振っていたから、まずは剣の基本的な振り方を教えた。
一生懸命、剣を振っていた。
うん?変態的思考は無かったのかって?
美幼女の頬を伝わる汗に変な想像をしたり荒れた息に変な気を起こしたりとか。
そ、そんな事するわけないじゃないか。