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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第4章-C 凄い勇者は勇者ギルド?を作りたい
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俺の交渉?は終了した 『遺産ですか?』

俺は車椅子に乗った巨大なペルシャ猫である大長老と向かい合い座っている。


「では、本題に入りましょうか」

「ええ」

「……………」


大長老の言葉に俺が返答すると彼は沈黙してしまった。

眉間にしわを寄せ凄く難しい顔をしている。


「あなたに敬語を使われると寒気がするのですが……」

「その言葉は酷くないか?」


大長老は俺の敬語がお気に召さないようだ。


「なら敬語無しで話させてもらう」

「ええ、敬語をやめて頂けた方が助かります」


『助かります』とまで言うか……

俺の敬語は彼をどれだけ追い詰めていたのだろうか?


「だが、名前を呼び捨てにするのはマズイから大長老と呼ぶぞ」

「止むをえませんね」


大長老は覚悟のこもった眼で返答した。

なぜ覚悟が目にこもったのか深く考えるのはやめておこう。

精神的にマズイ気がする。


「俺の提案したいのは勇者を支援する民間組織の設立だ」

「ええ、うかがっております」

「俺は『勇者ギルド』と呼んでいるが、これは仮称だ。後で必要なら変える」

「では私も勇者ギルドと今は呼ばせて頂きます」

「ああ」


これで俺が話せることは無くなった。


「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「あの……」

「うん?」

「続きは?」

「シルヴィア、後はまかせる」

「私に話せることなんてあるわけないでしょ!!」


シルヴィアに丸投げしようとしたが説明は出来ないとのことだ。

まあ、何も教えていないのだから当たり前なのだが。


「……相変わらずですね…」

「最高の褒め言葉だ」

「なぜ、そこで開き直るのよ…」


大長老の言葉に俺が返答するとシルヴィアが呆れた声を出した。


「では、どのような組織を作りたいのか要望はございますか?」

「要望を言うだけなら可能だ」

「コイツは馬鹿だから根気強く付き合ってあげて下さい」

「存じております」


俺のことで、大長老とシルヴィアの間に友情のような物が芽生えた気がする。

気のせいだろうか?


「では要望を言わせてもらうぞ」

「ええ」


大長老の邸宅なのに、いつの間にか俺の方が偉そうになっている。

まあ、気にする必要はないだろう。



~ここからしばらくは、つまらないので読み飛ばしても大丈夫です~


「国などが勇者に馬鹿な命令が出来ない権力が欲しい」

「権力ですか……」

「ここでいう権力は、世論を味方にして馬鹿なことをしたら相手が痛い目を見せられる状態だと考えて欲しい」

「ふむ……」


勇者という存在は影響が大きい。

このため戦争の最前線に立たせて国民を扇動する。

あえて殺して責任をライバルに押し付け失脚させる。

その他、色々な理由で馬鹿な命令をする奴らがいる。


これらの理由があるため勇者を政治的に保護する必要があるわけだ。


「次は情報についてだ」

「情報ですか……」


情報という言葉が出て大長老の目付きが一瞬だけ変わる。

商売に関わっていれば情報の大切さも分かるからな。


「情報に関しては色々とある」

「そうでしょうね」


情報は、勇者への依頼に関する危険度を調べる。

これが最初に思いつくことだ。


だが、それ以上に重要な情報の役割がある。

それは利益の配分だ。


「勇者ギルドが有名になればモンスターの襲撃の情報も手に入りやすいはずだ」

「ええ」

「モンスター襲撃などの被害で生じる利益を誰に与えるかを選べるようにしたい」

「ちょっと!!」


シルヴィアがわって入って来た。

気持ちは分かるぞ。


「モンスターに襲撃されての利益って!!」

「人が傷つけば薬が売れて、家が壊れれば木材が売れるのは分かるよな」

「でもね!」

「足元を見たり借金なんかをさせて悪さをしたがる奴も多いだろ?」

「まあ、それはそうだけど……」

「情報を素早く手に入れられれば、そういう悪さも防げるんじゃないか?」

「……………」


シルヴィアは納得できていないようだが黙ってしまった。

彼女も分かっているのだろう……でも感情が受け付けないというヤツだ。


「もう少し大人になれよ。シルヴィア」

「8歳児に言われたくない」

「否定はしないが……そう言えば、お前は何歳に(ブオッ)」

「それ以上言うな」


俺がシルヴィアに年齢を質問したら高速で拳が飛んできた。

早すぎて俺ですらかわせずクリーンヒットしてしまったぞ。

コイツは武道家に転職でもしたのか?


俺が考えながらシルヴィアを見ていると……睨まれた!


話を戻した方が良さそうだ。


勇者ギルド(仮)のような危険に立ち向かう組織であれば襲撃の情報なども入ってきやすい。


しかも商人が襲撃の情報を集めれば強欲だと評価されて大衆からの信用を失うが、危険に立ち向かうという大義名分があるため大掛かりな情報収集を行おうとも逆に大衆からマジメに取り組んでいると評価すらされる。

大衆からの支持が高ければ、大衆の協力を得られるだけでなく、大衆からの評価を高めたいヤツらも協力してくれうようになる。


よって勇者ギルド(仮)は大規模な情報収集を行いやすくなり、情報を得るスピードも他の組織よりも早くなる。


──ような気がする。



~ここまで読み飛ばし可能。ここから交渉?結果~


「他の考えについてはコイツを見て欲しい」

「これは記憶の石板ですね」


※記憶の石板

魔力を通すことで残したい情報を入力できる。

パソコンのフラッシュメモリーみたいなもの。


「だが、いずれも俺個人の素人意見だ」

「……………」

「重要なのは勇者をサポートする組織が誕生することだと肝に銘じてくれ」

「……わかりました」


あとは返事を聞くだけだな。


「協力してくれるか返事を聞きたい」

「答えは最初から決まっております」


大長老は目を瞑り俺に答えた。


「確かに恩義はあります。ですが損をする気はございません」

「損をするようなら組織は維持できない」

「……………」

「……………」

「……ふう」


大長老は大きなため息を吐いたあと、笑みを浮かべた。


「この計画は我らケット・シーが全力を持って取り組むと約束いたします」

「ありがとう」


俺が礼を言うと大長老は顔をヒクつかせた。

おい、礼の言葉を俺が口にするのがそんなにおかしい……よな。

昔の自分を思い出すと納得することしか出来ない。


「コホン」


気を取り直すためにワザとらしく大長老は咳をした。


「計画が少し雑……かなり……いえ、あの。とにかく面白い案です」

「そうか……」


大長老の言いたかったこと。

それは『もっと考えをまとめておきやがれ ボケ~』という物だと思う。

だが、俺の頭ではコレが限界だから我慢してもらうしかない。


協力をしてもらえると決まった所で渡しておかないといけない物がある。

………そろそろ俺の体力も限界に達しつつあるから早めに渡さないと…


「計画にコイツを使って欲しい」


俺はアイテムBOXから大きな布を取り出しテーブルへと敷いた。

そして様々な財宝をアイテムBOXから取り出して布の上へと並べていく。

宝石類を中心にしたが結構な金額になるはずだ。


「なっ これは!!」

「使ってくれ」

「資金は私達の方でご用意いたします!」

「俺はケット・シーの財力ではなく手腕を借りたいんだ。それに……」


俺は最初からケット・シーの財力を求めてはいない。


「コイツはスバルの遺産だと思って欲しい」

「遺産ですか?」

「ああ、遺産は有効に使って欲しいと思うのが人情だろう?」

「……………」


大長老は、目を瞑りしばらく考えてから答えた。


「分かりました。スバル様の遺産は我らケット・シーが有効に使うと、お約束いたします」


大長老は強い意思を瞳の奥に宿して答えてくれた。


「それと……」


大長老にもう一つ伝えておく必要がある……

だが、意識が朦朧もうろうとしてきており俺は限界のようだ…


「顔色が優れないようですが」

「最後だから聞いてくれ」

「……はい」


この症状は覚えがある。

俺が転生したことを知った翌日、似た症状で俺は寝込んだ。


……あの時は知恵熱と診断されて親に笑われた。


まさか頭を少し使っただけで知恵熱が出るとは。

俺は普段、どれだけ頭を使っていないのだろう。


俺は最後の力を振り絞り言葉を発した。


「……将来、俺を勇者ギルドの安全なポジションで雇ってくれ…」

「「はぁっ?」」


大長老とシルヴィアの重なった声が聞こえたあと、俺は意識を手放した。

俺は暗闇の中で思う。

平穏な生活を望む俺にとっては安全な仕事が不可欠だと。

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