俺はドクロの仮面で美幼女勇者に接触した 『ガッカリしたか?』
※2015/04/07加筆修正しました
ドクロノ仮面を着けて俺はイリアの前に立った。
「*?KOW}A+!!!!」
イリアが発したのは、声にならない声。
だが、泣きだしそうになりながらも、勇気を振り絞って俺に剣を向けた。
(良い反応だ)
危険が伴う勇者という仕事。
恐怖心に流されずに剣を構えたのは高評価だ。
俺が学校の先生なら、通信簿の通信欄に一言添えたいぐらいだ。
それにしても──。
(目元に涙を溜めこんだ美幼女……ゾクゾクする)
イヤ、いかんいかん。
このとき、変態チックな世界に俺の性癖は踏み込みかけた。
だが強靭な理性の力で元の世界に己の性癖を引き戻すことに成功する。
──さすが俺だ!
自分を褒めていると、目の前の美幼女が涙ぐんでいるのを見てハッとした。
(このドクロの仮面はリアルすぎたか)
警戒心丸出しのイリアを見ると、罪悪感が込み上げてくる。
「すまない。驚かせてしまったみたいだな」
未だに俺の作った霧に森は包まれたままだ。
こんな場所でドクロの仮面をつけた不審者に出会ったんだ。
驚かない方がおかしいよな。
ってか、イリアが驚いたのは全部俺が原因だ。
それなのに『すまない』はないか──。
「い、いえ」
剣を強く握りしめてコチラの様子ををうかがっている。
明らかに警戒されているようだから、これ以上は近づかない方が良いだろう。
「迷っていたようだが、森の外に出たいのか?」
「ええ、まあ」
まずは当たり障りのない会話を…
「……なぜ、迷っていたことを知っているのですか!!」
速効で会話は失敗した──。
「見ていたからな」
「見ていた?……なぜ」
「勇者の素質を持った人間だったから」
下手なごまかしは不信感を招くだろう。
だから、ある程度の情報をイリアに渡そうと思う。
「勇者……わたしがですか?」
「ああ、まだ開花していない段階ではあるが」
「わたしが勇者……」
イリアは少し嬉しそうにしている。
それに剣を握る手からも、力が先ほどまでよりは抜けているのが分かった。
少しは警戒心も解けたのかもしれない。
(俺のストーカー紛いの調査が生きたな)
今この瞬間、これまでの努力が実ったのを俺は感じた。
だが油断をすれば、再び警戒心を抱かせてしまうことだろう。
慎重に事を進めるためにも、話の周辺をつついてみるか。
「お前……イヤ、君は勇者の素質がある。これは分かるかな?」
「少し信じられませんが」
「その反応を見るからに、勇者の素質への勘違いがあるようだ」
「勘違い?」
おっ、喰いついてきた。
「勇者の素質を持った人間は少なくはない。」
「そ、そうですか」
やはりガッカリしたか。
「少ないのは素質を持った人間ではなく素質を開花出来る人間だ」
「素質を開花…」
「ああ、そして素質を開花させるのには一定の条件がある」
「開花の条件……」
なんか洗脳をしている気分になってきた。
ちょっと罪悪感もあるが──俺の平穏のためだ!
「この話は長くなるから、この辺にしておこう」
「えっ はい……」
ほどよく話に喰いついてくれたイリア。
話を良い所で切ったから、話の続きが気になって仕方がないのだろう。
顔に現れた残念だという想いが半端ない。
それにイリアは、すでに剣を下ろしている。
警戒心もだいぶ治まったようだ。
──仕上げに行くか。
「勇者の話に興味はあるのか?」
「……いえ」
「そうか、君の勇者の素質を開花させようと思ったのだが」
「えっ?」
驚いた表情と共に『しまった』という後悔の念が顔に出ている。
子どもは単純な方が得だぞ──俺は、ふてぶてしいって言われるが。
「無理強いはしない。それに今の私は不審者にしか見えないしな」
「い、いえ」
「そうか、無理強いではないか」
「えっ?」
「気が向いたらでいい、コイツを使って欲しい」
俺は言葉の綾を使って無理矢理に話をつなげた。
そして透明な石と紫の宝石を見せる。
透明な石=転移石
転移魔法での移動場所を設定する宝石で、
俺も数個しか持っていない貴重品だ。
紫の宝石=通話石
距離制限があるけど遠く離れた相手と会話できる石。
だが四角い長方形のケースに設置してあり見た目はス○ホ。
ぶっちゃけると電話。
イリスには勇者について知りたければ通話石を使うように言っておいた。
そして実際に会って話がしたい場合には転移石を使うようにと伝えた。
俺は最初の内は通話石で会話をする予定だ。
そして「君の勇者の素質を開花させる気は無いか?」
このようにタイミングを見て伝える予定だ。
急いでも警戒されるだけだしな。
一通りの話を終えた俺はドクロの仮面をとる。
そして……
「森の出入口まで案内をする。」
「えっ?」
俺が仮面をとったことに驚いているようだ。
「仮面を着けたままでは信用できないだろ?」
「は、はい」
なんか凄い勢いでうなずいている。
本気で俺をモンスターだとでも思っていたのか?
「あ、あの」
「うん?」
「それが素顔ですか?」
「ああ、そうだ」
「そうなんですか。素顔……」
「ガッカリしたか?」
「い、いえ、むしろ…いえ、なんでもありません」
悪い反応ではないんだろうけど、なんか釈然としない反応だ。
まあ、仮面を外したことで少しは信用していることも伝わっただろう。
こんな森で突然現れたら貴族に不審者扱いされて後で危険になる。
そんな理由で用意した仮面だ。もう着けておく必要もない。
「じゃあ、森を出ようか」
「はい!」
こうして俺たちは森を出ることとなった。
イリアを彷徨わせたのが俺なのは内緒だ。