俺は暇つぶしに大道芸を行った 『ショータイムだ』 2
前回の話である、俺は暇つぶしに大道芸を行った 『ショータイムだ』の後半です。
~南天の果実 食堂~
俺は『南天の果実』の食堂へと来た。
商人や冒険者風など幅広い服装の人間が椅子に座っている。
だが時間的に少し早いためか席には空きが多い。
俺がしばらく待っていると周囲がどよめいた。
これは酒場のパターンだな。
「待った?」
「いま来た所だ」
「そういうことも言えるようになったのね」
「?」
通話石で話してから10分程度しか経っていないのだが。
気を利かせたとでも思ったのか?
昔もそうだったが、コイツは少し抜けた所があるんだよな。
話しながらシルヴィアは俺の向かい側の席に座った。
「おすすめはあるか?」
「そうね……照り焼きがいいんじゃない?」
俺は壁に掛けられたメニュー表の値段を見る。
どうやら俺の華麗なパフォーマンスで稼いだ金額で十分に食べられそうだ。
「当然、おごってくれるんでしょ」
「子どもに、たかるなよ……」
このあと、俺はシルヴィアに奢らされ大道芸で稼いだ金の大半を失うことになる。
食事をしながらケット・シーとの面会についても話し合った。
「これは返しておくわね」
シルヴィアが返すと言ったのは、俺がケット・シーの長老から受け取ったメダルだ。
俺は面会の取り付けに役立つと思いメダルをシルヴィアに預けた。
どうやら、その選択は正解だったらしく面会の日程はすぐに組まれたそうだ。
だが面会相手は長老ではなかった。
長老の上にいる大長老が面会相手らしい。
大長老か……やはり大きいのだろうか?
(7つの玉を集める某アニメの、他の星に住む緑色の住人の大長老みたいに)
「変なこと考えていない?」
「俺は日本人なら誰もが抱く疑問を考えていただけだ」
「ニホンジン……ああ、昔あなたが住んでいたっていう」
「そうだ」
こうして俺達は馬鹿な話を交えながら食事も終わった。
「そういえば、教師の件なんだけど……」
「どうだ?」
「受けてもいいけど2つ条件があるわ」
「条件?」
条件か……俺に出来ることならいいのだが。
「ちょっと待て」
「なに?」
俺は幻覚魔法を周囲にかけた。
強すぎる幻覚魔法だと逆に腕のいい魔法の使い手に勘繰られることもあるから弱い魔法だ。
だが酒の入った席でなら十分に効果がある。
「これで大丈夫だ」
「隠す程の事じゃないと思うけど」
「昔のことは知られたくないんだ」
「そう……私も気を付けるわ」
「助かる」
これで準備はできた。
だが条件は気になるな。
「1つは質の良い剣が欲しい。あなたのアイテムBOXにならあるんじゃない」
「それなら大丈夫だ。魔王の剣で良いか?」
「なんで、そんな物を持っているのよ!!」
「別の世界に召喚されたときの戦利品だ」
「……別のをお願い」
シルヴィアは呆れたような顔で別の剣を要求してきた。
「じゃあ、邪神から奪った……」
「少し禍々しい剣から遠ざかって」
「そうか……なら神を倒した時の…」
「却下」
このあとも交渉は続くも一本の剣で話はまとまった。
「本当にいいのか?」
「十分すぎる程よ」
シルヴィアとの交渉の末、一本の剣に落ち着いた。
彼女が選んだのは神から授かった剣を人が打ち直した剣『レスト』
普通の剣に話がまとまったから拍子抜けだ。
「もう一つの条件なんだけど」
「ああ」
「言いにくいんだけど、私にも生活があってね」
「金か?」
「ストレートに言わないでよ。凄く嫌な女みたいじゃない」
「金を条件に入れるのは当たり前のことだと思うが?」
「そう?」
「で、契約料としては……」
俺が金額を提示するとシルヴィアは硬直した。
「あなたの金銭感覚はおかしすぎるわよ…」
「俺も高額だとは思っているぞ」
「じゃあ、どうしてそんな金額を提示するのよ」
「理由はある。それは……」
※俺がシルヴィアに伝えた理由
1.前世で見たシルヴィアしかしらないが、彼女の腕をそれだけ買っている。
2.アイテムBOXには前世で稼いだ金も入っているが、今世の俺が実力で稼いだ金ではないので使えば金銭感覚が壊れて身を崩す可能性がある。よって勇者達の育成以外では使う気がない。
3.お前が美しいから
「はっ?」
「3番目は冗談だ」
「……………」
シルヴィアに睨まれた。
「美人だとは思っているが、分かり切ったことを冗談でもわざわざ言わないという意味だ」
「………そう………」
なぜか沈黙が怖い。
「まあ、いいわ。契約料に関しては後で相談しましょう」
「そうしてくれると助かる」
今回の目的のひとつであった、魔法の教師を得ることに関しては上手く行った。
あとは勇者ギルド(仮)を作るための面会だ。
俺とシルヴィアは明日に備えて自分の部屋へと帰った。
シルヴィアが宿をとれず一緒の部屋でドキドキという展開を期待したか?
俺も期待したが、世の中は上手く行かないものだな。




