俺はエルフと出会った 『子どもなのね』
俺はヴィショットの街へと入れた。
商売が得意なケット・シーが築いた街だけあって活気がある。
俺にメダルをくれたのは長老と呼ばれるケット・シーのトップだ。
だからメダルの効果があるのも長老のみの可能性があった。
俺にツテがないためガリウスに頼ったが彼も長老とはツテがないらしい。
何でも『武の道を極めんと邁進していたため商売とは無縁の世界にいた』そうだ。
友達が少ないだけじゃないか?という思いは心にしまった。
だがガリウスの数少ない友人にケット・シーの長老に繋がる人物が数名いた。
今回は、そのうちの一人に手を貸してもらうことになっている。
~酒場 パミラ~
俺は待ち合わせ場所である『酒場 パミラ』のカウンターでミルクを飲んでいる。
キュウリのスティックをバリボリさせながら。
「もう一杯くれ」
「お客さん、飲みすぎですよ」
「他にすることがないんだ」
俺が3杯目のミルクを注文していると後ろの方が騒がしくなった。
男達がどよめいているようだ。
俺が振りかえると1人の女性が歩いていた。
彼女は金色のサラサラとした髪に青い瞳をしている。
そして白磁のような白い肌。
その美しさに男達はどよめいたのだろう。
だが最も注目すべきは豊満な胸!……ではなく耳。
彼女は森の民と呼ばれるエルフだ。
獣人族と同様にエルフ族とも呼ばれているが当人達はエルフと名乗っている
彼女の名はシルヴィア。
シルヴィアこそがガリウスから紹介された俺の待ち人だ。
シルヴィアは、自分を見つめる男達を無視して歩き俺の座る椅子の前で立ち止まった。
「…………」
「シルヴィアさんか?」
「あなたがクレス?」
「ああ、ガリウスからアナタを紹介してもらった」
「そう、書かれていたとおり、子どもなのね…」
この世界では電話は存在しない。
だがイリアに渡した念話石は高額すぎるため普及していない。
このため遠距離の連絡手段は手紙が主流だ。
「話を聞きたいけど……その前に一杯飲ませてね」
シルヴィアはウインクをして、俺の横に座った。
「強いのもらえるかしら」
「はい」
店主にシルヴィアは注文をすると酒はすぐに出てきた。
「酒は強いのか?」
「ええ」
「知り合いのエルフとはエライ違いだ」
俺は知り合いのエルフのことを思い出していた。
「エルフに知り合いがいるなんて珍しいわね」
「旅をしたがる変わったエルフだったからな」
エルフは森の民と呼ばれ森から外に出ることは少ない。
もちろん少ないというだけで多少は森の外にもエルフはいるが……
それでも普通の人間と親しくしているエルフは珍しい。
「どんな人なの?」
「そうだな…酒が苦手なのに背伸びして飲んで泥酔して酒場でデカイ風魔法を放ち、酒場を吹きとばしたり……森を探索していると頭の上に毛虫が落ちてきたことに驚いて、悲鳴を上げながら火魔法を放って森を焼きつくしたり……武器屋で鋼鉄製の杖を持ったら、全力で振って仲間を殴打して重傷を負わせたり……他には……」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「なにか?」
「い、いえ」
シルヴィアが言い淀むと同時に店主は注文された酒を出した。
その酒に彼女が手を伸ばそうとしたとき……
「そいつはウォッカじゃないから、店は吹き飛ばされないよな」
「!!……」
俺の一言で顔を青くしたシルヴィアが、ぎこちなくコッチを見た。
ウォッカというのは知り合いのエルフが店を吹き飛ばした時に飲んだ酒だ。
「ねえ……」
「うん?」
俺はニヤつきながらシルヴィアに答える。
コイツは昔から、からかうと面白い。
「私たち、どこかで会ったことがない?」
「会ったことが無いと思うか?」
「……あなたみたいなことをする人に心当たりがあるんだけど……」
「名前を聞かないと分からないな」
やっぱりコイツは面白い。
「……スバル」
「そう言えば、こんなの見たことあるか?」
「質問に!!」
俺はアイテムBOXから『神剣 ファーウェル』を取り出す。
こいつは、この世界に召喚された当初から使っていた思い出深い剣だ。
「ファ、ファ、ファーウェル」
やはり面白い反応をする。
「久しぶり」
「……スバル?」
こうして俺は、前世で一緒に旅をした仲間と再会した。




