俺は猫に恩を返してもらおうと思う 『珍しいね』
コメディー要素は少ないです
俺は獣王の協力を得られることになった。
このため武術のトレーニングなどに関して、獣王に任せることが可能となった。
コーネリアとセレグには魔法をレーニングさせたい。
だが、しばらくは獣王の下で体を鍛えながら精霊感知を行っていてもらう。
とりあえず俺は別の仕事を片付けることにする。
その仕事というのは勇者をバックアップする組織を作ること。
勇者は国や教会に所属したり個人で活動したり色々と活動には選択肢はある。
今回、そんな勇者達をサポートする組織を作ろうというのが俺の考えだ。
武具の融通や仲間の斡旋。
国境を越えた色々な調整。
あとは金策や情報のやり取り。
国や教会等の組織はしがらみが多いため出来ないことも多い。
かといって個人で出来ることは限られている。
だから、しがらみの少ない少ない組織が必要となってくる。
本心を言えば、イリアに死なれるのを避けたい。
だから仕事の環境を早めに整えておこうという親心だな。
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勇者を支援する組織を作るにも問題がある。
俺は組織運営が得意ではないことだ。
だから、ある種族の力を借りようと思いラクーンという国へとやって来た。
俺の目当てはケット・シーという猫の姿をした妖精達が作った街だ。
その街の名前はヴィショットという。
ケット・シーは、商売に長けた妖精で世界中のあちこちで店を開いている。
商売に長けているというと強欲というイメージもあるだろう。
だが俺の知る限り『商売』と『金儲け』の違いを理解した一族だった。
ケット・シーの姿は童話の『長靴をはいた猫』を読んだことがあるだろうか?
あの物語に出てくる二足歩行の猫という感じだ。
なぜ俺がケット・シーを当てにしているのかというと…
過去に俺は、この世界に召喚された。
その時にケット・シーを助けたことがある。
その恩に必ず応えると言っていた……
転生した俺に報いてくれるか心配ではあるがな。
とりあえず勇者コレクションの中に放り込んだ過去に渡されたメダルを取り出す。
虹色の金属に猫の模様が入った手の平サイズのメダルだ。
このメダルを証として俺に力を貸してくれると言っていた。
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俺は現在ヴィショットの街に入るため審査を受けている。
さすがに金持ちの街だけあって審査が厳しい。
街の門には長い行列ができている。
荷物のチェックで時間がかかる商人は3列で馬車の列となっている
一方で俺が並んでいるのは旅人などの列で2列となっている。
時間のかかるグループと時間がかからないグループを分けるとはな…
商売に通じるケット・シーの街らしく効率的だ。
しばらく待って俺の番が来た。
先程のメダルを身分証にならないか渡したら優しい目をされて頭を撫でられた。
子どもがオモチャを見せたのだと思われたようだ。
ガリウスなら獣王と呼ばれるほどだから顔が効くだろうか?
妖精とはいえ猫だから、獣つながりということで……
そういえば転移方陣を使って手続きなしで直接入国したから密入国だ。
……いざという時は逃げるか。
俺は今更ながら密入国したことに気付き逃げる方法を思案し始めた。
「子どもが1人でココまできたというわけだね」
「はい」
俺の対応をしているのは30代の男性だ。
「魔物には襲われなかったのかい?」
「コイツを使いましたから」
俺は1つのアイテムを懐から取り出した。
それは認識阻害の腕輪と呼ばれておりモンスターに感づかれなくなるアイテムだ。
こういった魔法に関連したアイテムは魔導具と呼ばれている。
「コレは…珍しいね」
「ある人物から預かった物です」
ある人物とは俺の前世である昴だ。
今の俺ではなく前世の俺だから言葉としては嘘をついていないはず。
それにしても、認識阻害の腕輪を知っているとは只者ではないな!
その後、いくつかの質問をされ…
「ふむ…一応、上には報告させてもらうけど中に入っていいよ」
「ありがとうございます」
俺は子どもが危険な街の外から歩いてきたと思われている。
だから特別な教育を施された子どもだと思われたかもしれない。
街中での活動に支障がでないか心配ではあるが…まあ、いいだろう。
問題が起これば、その時に対処すればいいしな。
俺は子どもにとって決して安くない金額を街に入るために渡して街へと入った。
軽くなった財布に優しい微笑みを投げかけて…
ちなみに、この金は俺が稼いだ金だ。
冒険者ギルドに登録して稼いだ。
平穏を望む俺が冒険者ギルドに登録するのはおかしいと思うだろう。
だが冒険者ギルドの依頼には雑用や薬草探しなんかがある。
それらを一生懸命やったわけだ。




