俺は恩を売ったがプランはなかった 『男ですから』
俺は獣人族の少年に恩を売ろうと考えた。
少年に恩を売るために満たさなければならない条件は…
1番目の条件は、獣人族の少年が恩を受けたと感じること。
2番目の条件は、後に引きずらない形で終わらせること。
3番目の条件は、俺の強さが露呈しないこと。
1番目の条件について
少年が恩を感じたと思わなければ恩を売れない。
2番目の条件について
少年は堪えているのは、今後の影響を考えてだろう。
よって後に引きずる形だと恩を売ったことにはなりえない。
3番目の条件について
俺の平穏の為にはチートをバラしたくないからだ。
仮面を付ければ良いのだが…街中では目立つよな。
さて、どうしたものか…と、色々と考えてみたが思いつかない。
だから、やることは一つ!
それは『逃走』
するべきことが決まった俺は、幻覚魔法で霧の幻を作り出した。
「なんだ?」
周囲の野次馬達は霧の幻に驚いている。
チンピラ達も全員が戸惑っている様子だ。
(やはり、幻を見破る程度のことも出来ないようだな)
幻覚魔法を見破るのは、難しくは無い。
特に今回の魔法は初級魔法だからイリアやコーネリアは簡単に見破れたはずだ。
すなわち、このチンピラ達は8歳児や6歳児以下ということだ。
(追加だ)
俺は更に幻覚魔法を追加する。
するとローブを着た2人の少年が霧の向こうに映る。
そして、少年達が走っていくような足音も幻覚魔法で追加して…
「逃げやがった!!」
俺は声を張り上げる。
そしてチンピラ達の脳に、ある幻覚を流し込んだ。
その幻覚とは、自分の仲間が少年達を追いかけて行くというもの。
幻覚を見せられたチンピラ達は、走って霧の中に消えていった。
(コイツ等、どこまでレベルが低いんだよ!)
脳に幻覚を送りこむ魔法は相手が抵抗しやすいため成功など滅多にしない。
それは俺が使っても同じで、成功率は高くないのだが…
チンピラ全員に幻術がかかってしまった。
どうやら、俺の予想を超える程、低能だったようだ。
まだ霧の幻が生じたままだ。
(そろそろ数人が幻だと気付き始めているな)
俺は獣人族の少年達に近付き逃げるように伝える。
このまま、ココにいたら2人が幻覚魔法を発生させたと思われるからな。
そうなれば手を出したのと同じになってしまう。
少年達は俺の言葉に従い一緒に逃げてくれた。
露店で広げていた商品を片づけるスピードは神技と呼べるほどだった。
幻に包まれた状態で、このスピードとは…勇者としての未来は明るいだろう。
俺と少年達は、この場所から離れようと走り出した。
イリアとコーネリアも幻を見破り俺達に気付いて走り出していた。
幻を見破るとは、さすが俺の教え子たちだな。
「こっちだ!逃げろ!!」
俺は声を変えて太い男の声を出した。
これで2人は、見知らぬ誰かに助けられたと、言い訳がいくらでも出来るはずだ。
~~
「撒いたな」
「ああ、助かった」
俺の言葉に返答したのは、白髪の獣人族の少年だ。
「あの、ありがとうございました」
礼を言ったのは、もう一人の獣人族の子どもだ。
こちらは女の子みたいだな。
「一応、聞いておきたいのだが…」
「?」
「さっきのチンピラが知り合いだということはないか?」
「いや、初めて会った…それが、どうしたんだ?」
「知り合いでないのなら問題ない。知り合いなら、別の処理が必要だったからな」
「…そういうことか。問題はないと思う」
「別の処理というのは?」
俺と獣人族少年の会話を聞いていたイリアが不安そうな顔で質問してきた。
「知り合いだった場合、あとで問題が生じないように…」
ここまで口にした俺は、イリアの年齢には早い情報だと気付く。
だから脅迫すると言うだけに留めた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はクレス」
「俺はラゼルだ。改めて礼を言わせてもらうよ」
「僕は、セレグといいます。ありがとうございました」
僕?…僕っ娘というヤツか。
昔の知り合いに好きな奴がいたな。
「俺が兄で、コイツは弟だ。妹だと良く間違えられるがな」
「は、はい…男です。よろしくお願いします」
男だったのか。腐の方が喜びそうだな。
大人になれば色々と変わるから大丈夫だろう…たぶん。
ちなみにセレグは黒髪に茶目だ。
「私はイリアと申します」
「ワタシはコーネリアで、クレスの妹です」
「よろしく」
ラゼルは歯が輝きそうなイケメンスマイルで返答した。
「ヨロシクお願いします」
セレグも返答をした。
こちらは、少し緊張して腐の方に好かれそうな雰囲気だ。
…この世界の法律は、セレグを守ってくれるのだろうか?
少しセレグの未来が心配になった。
だが、今は本題の方が大切だと自分に言い聞かせて、頭を切り替えた。
平穏に生きようとする俺には、法律に手を出す余裕などない。
セレグには自力で身を守ってもらうことにしよう。
クレスの新キャラ評価
ラゼル=爽やかイケメン獣人族 白髪に蒼い瞳で武の心得あり
セレグ=男の娘が可能な美少年 黒髪に茶目で武の心得があるかは不明




