俺は美幼女な勇者と魔王を連れて王都を回る 『どうしてです?』
「イリア……どうしたんだ?」
「……………」
俺はイリアを世界樹に連れていくため、迎えに来ていた。
イリアが通う騎士学校は王都にある。
俺の自宅から王都にある転移方陣に移動する。
そしてイリアと落ち合ってから世界樹へと向かう。
これが俺の日課となっている。
現在、俺は転移方陣を設置してある一軒家の前にいた。
なぜか、この家は両親が所有しているからだ。
この一件家は王都の大通りにあるため、とんでもない値段ではないだろうか?
やはり、俺の両親はタダの冒険者ではないのだろう……
まあいい。
今はイリアの問題だ。
「どうしたんだ?」
「どうしてです……」
イリアは疑問をぶつけてきた。
何か不満があるのだろうか?
「どうして、コーネリアさんと一緒なのですか!」
「王都に興味があると言うから……」
普段は俺一人でイリアを迎えに来る。
だが、今日は王都に興味があると言うのでコーネリアを連れてきた。
「そうではないのです!私が言いたいのは……」
「なんだ?」
「どうして、手を繋いでいるのかということです!!」
そう言えばイリアを迎えに来る前に王都見学をして回ったな。
そのときに人が多かったから、はぐれないように手を繋いだままだった。
「王都見学をしたときに、はぐれないように手を繋いだんだが……」
「なんで、今も手を繋いでいるのですか!」
「さっき、一回りして帰ってきて、手を繋いだままだった」
王都を見学して、さっきイリアとの待ち合わせ場所に着いたばかりだ。
だから手を繋いだままだったのだが…
兄妹とは言え、人前で手を繋ぐのは恥ずかしいと考えるのが貴族の常識なのだろうか?
「そうだな……」
俺が繋いだ手を放そうとすると……
「お兄ちゃん」
「えっ お、お兄ちゃ……」
コーネリアの『お兄ちゃん』という言葉にイリアは驚いている。
いきなり呼び捨てから『お兄ちゃん』に呼び方が変わっていたら驚くか。
「いつの間に、そんなに仲良く……」
イリアは悲しそうな声で疑問を口にした。
…自分が疎外されるようで寂しいのかもしれないな。
「お兄ちゃん」
「ああ」
俺の手を引っ張りコーネリアが呼んだ。
「イリアさんと一緒に、もう少し王都を回らない?」
「それもいいかもな」
今日はトレーニングを休みにしてもいいか。
疎外感を感じたままだとトレーニングにも身が入らないだろうしな。
1日休んだら取り戻すのに3日は必要だと言うが…
人としての喜びを捨ててトレーニングをするのは悲しいことだろう。
俺は前世で出会った1人の少年を思い出していた。
「なに、遠い目をしているのよ!」
「いや、なんでもない」
「じゃあ、はぐれないように、イリアさんの手も握って」
「そうだな」
「えっ……」
イリアは俺の手を見て挙動不審になっている。
貴族にとって人前で手を握るのが恥ずかしいことなんだよな。
「悪い、嫌だよな」
俺は配慮なしに伸ばした手を引っ込めようとする。
「い、嫌じゃありません!お願いします!!」
「そうか?」
貴族にとっても手を繋ぐことは恥ずかしいことではなかったのか?
じゃあ、俺とコーネリアが手を繋いでいることを何故指摘したのだろう……
今度、イリアに直接聞いてみるか?
こうして俺とコーネリアとイリアは、一緒に王都を回ることとなった。
両手に鼻……両手に花状態です。




