俺は美幼女に放置された 『寂しかったのですか?』
イリアは騎士学校に通っている。
騎士学校は本来、10歳以上の人間しか入れない。
だが勇者候補者は8歳から入学可能なためイリアは騎士学校に通えている。
騎士学校で勇者候補者は他の生徒とは授業内容が違う。
勇者を目指す生徒は外部に師を持つ場合が多いためだ。
勇者候補者になると周囲の期待が大きい。
貴族なんかだとステータスになるので金を沢山かける。
こういった事情があり勇者候補者には師を持つ者も多い。
特に優秀と認められた勇者候補は授業を午前のみで終えることが可能となる。
午前で学校の授業は終え午後は師の下で修業をするというわけだ。
イリアも優秀だと認められた。
だから午後は授業を受けるか自分で決めることが出来る。
更に成績が優秀であれば師が誰だとか学校側の詮索はほとんどない。
成績が優秀なら学校側から実家の方に連絡が入ることもない。
よってイリアは問題なく俺の下でトレーニング可能というわけだ。
~~
現在、俺達は毎度おなじみの世界樹がある森でトレーニング中だ。
イリアとコーネリアが対決をしている。
俺をとり合ってと、いうわけではない
イリアは精霊の加護を受けた木剣で魔法を斬る。
コーネリアはイリアに魔法を放ち魔法の訓練をする。
……という形の模擬戦だ。
俺の回復魔法があるから実践形式で行っているため2人とも目が本気だ。
-俺が少し怖いと思っているのは秘密だ。
「ファイアボール!」
コーネリアが放ったドッジボール大の火球を放った。
「はっ」
イリアは走りながら火球を斬り魔法を無効化する。
そして木剣をいつでも振れるようにしながらコーネリアに詰め寄っていく。
「(障壁)」
しかしコーネリアは障壁を使い目の前に半透明で薄い壁を作る。
次いで風魔法を使い後方へ大きく跳んで下がった。
一方、イリアは木剣で障壁を斬り前進して行く。
コーネリアが魔法を放とうと杖を構えたとき……イリアは姿を消した。
いや、イリアは魔法を使い急加速をしたため俺が動きを見落としただけだ。
イリアは既にコーネリアの喉元に木剣を突き付けていた。
「それまで!」
俺は模擬戦の終了を告げる。
すると先程までの緊張感が消え2人に笑顔が戻った。
「さすがですね、イリア」
「コーネリアこそ」
お互いの健闘を称え合う2人。
俺は話に入りそびれボッチな気分を味わっている。
「最後の加速は反応できませんでした」
「ですが、次は対処をするのではないのですか?」
「フフ もちろんです」
「では、私も頑張らないといけませんね」
2人は汗を拭きながら花の背景が出来そうな雰囲気を作り出している。
とてもではないが俺の入る余地は無い。
「それにしても魔法の扱いはコーネリアに敵いませんね」
「私は昔から魔法を学んでいたので」
「羨ましいですね。私はクレスに初めて教えて頂きました」
「そうだったのですか!?」
「ええ、『ゴブリンでも分かる魔法の本』を渡されて」
「ゴ、ゴブリンですか……」
「ええ、ゴブリン」
「なんというか、クレスらしいというか」
「内容は分かりやすかったのですが」
「女の子へのプレゼントとしてはどうかと思いますが、興味ありますね」
「ゴブリンにですか?」
「ええ、ゴブリンの……クレス?」
コーネリアがボッチとなっている俺に気づいてくれた。
そういえば前世でも女性が2人いると必ずボッチになっていたな……
「2人とも見事だったぞ」
「……寂しかったのですか?」
「そんなわけないだろ」
「足元を見て下さい」
「うん?」
コーネリアの指摘で俺が足元を見ると落書きがある。
これは俺が棒きれで書いた落書きだ。
1人でいるのは居心地が悪くて先程まで落書きをして気持ちを誤魔化していた。
「さあ、なんだろうな?」
「コーネリア」
「はい?」
イリアはコーネリアを呼び2人はヒソヒソ話を始めた……またボッチか。
「クレス。次のトレーニングをお願いします」
「是非、お願いします」
気を使われてしまった。
さっきのヒソヒソ話は俺に優しくする相談だったのか……
「…………」
「クレス?」
「…………」
「…………」
「じゃあ、精霊感知を行ってくれ」
「「はい」」
2人は精霊を感知するため意識を集中させた。
精霊感知のトレーニングは意識を集中させるので目を瞑る。
だから俺の情けない顔を見られずに済む。
今の俺は泣きそうな顔をしていると思う……
2人は優しさが人を傷つけることがあると知るには若すぎる。
涙ぐんだ俺は空を眺めて気持ちを誤魔化すことにした。
(…………)
(…………)
(うん?)
(あの雲は、犬に似ているな)
(あっちは魚に)
(あれはウサギか)
なんか楽しくなってきた。




