俺は美幼女勇者に入学祝いを贈った 『入学祝いだ』
俺はイリアに手を握られ街中を走った。
久しぶりの再会に想いを抑えられなくなった……のではない。
俺が警護兵に連れて行かれるのを避けたかったからだそうだ。
ドクロの仮面にローブのコラボは街に住む一般人には刺激が強すぎたようだ。
これからは街中での着用を避けようと思う。
「イリア。入学おめでとう」
「えっ?ハ、ハイ……ありがとうございます」
今のイリアは学校の制服姿だ。。
黒いブレザー姿に後ろでた結わえられた白金の髪がよく似合っている。
恥ずかしくて口には出せんが。
──それにしても少し短くないか?(スカートが)
俺はチラチラとスカートを見てしまう。
残念ながら白タイツ着用中だから生足ではない。
「……さっきから見ていますよね」
「すまん」
「……いえ」
「……………」
「……………」
気まずい空気が流れてしまった。
ここは話の流れを変えねば。
「ゴホン」
俺はわざとらしく咳払いをする。
おっさんぽいと思うか?だが俺は前世で92歳まで生きたから問題ない。
「入学祝いだ」
「あ、ありがとうございます」
イリアは頬を赤くして俺の入学祝いを受け取った。
そういえばイリアには親しい友人がいなかった。
友人にプレゼントを貰うという経験に慣れておらず照れたのだろう。
俺は用意したペンダントをケースに入れて渡した。
ケースは俺が用意した物だ。ペンダントを裸のまま渡すほど俺は無粋ではない。
「あけても、よろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
イリアは俺の渡したスケースに結んだリボンを外し開けた。
ケースを開くと出てきたのは白いトップを持つ銀の鎖のペンダント。
白いペンダントトップは円形で不思議な模様が刻まれている。
「……キレイ」
「気に入ってくれたようだな」
「よろしいのですか?」
「ああ、折角用意したんだ。受け取ってもらえないと困る」
「フフ、そうですか。ありがとうございます」
ちゃんとペンダントの効果も教えておかないとな。
こいつは実用的なアイテムだから、もっと喜ぶはずだ。
「コイツは特別なアイテムでな、大精霊から受け取った物だ」
「え゛っっ」
イリアの顔が引きつった。
「だ、大精霊……ですか」
首を横に振り自分の体を抱きしめる格好をしたあと、うずくまってしまった。
「イリア?」
「…………」
イリアは首を横に振るだけだ……この反応どこかで……虚像の大精霊だ!
どうやら俺はイリアのトラウマを抉ってしまったようだな。
「そのペンダントをくれたのはお前の想像しているのと違う大精霊だぞ」
俺はイリアのトラウマを抉るので虚像の大精霊という名は口にしないことにした。
いずれトラウマを乗り越え立派な勇者になってくれるはずだ……きっと。
「本当ですか……」
「ああ、天空の大精霊というヤツから貰ったヤツだ」
「嘘では、ありませんよね」
「ああ、本当に天空の大精霊から貰ったペンダントだ!」
「そうですか……よかった」
涙ぐんでいたイリアは元気を取り戻した。
一時は虚像の大精霊関連のアイテムを渡そうとしたが思い止まって良かった……
「そのペンダントには特別な加護があってな」
「特別な加護ですか?」
イリアの目は、まだ少し赤い。
俺は虚像の大精霊を思い出させないように気を付けて話を進めることにした。
「俺が作り出した狼と戦ったことがあったろ」
「はい」
「精霊を吹き込めば、あの狼を呼び出すことが出来るようにしてある」
「……それって凄いことですよね」
「ああ、使い魔を作るのは高位の術だからな」
「よろしいのですか?ペンダントを貰ってしまって」
イリアはペンダントの性能に少し驚いているようだな。
俺の勇者コレクションの中では比較的おとなしいアイテムなのだが。
「そいつは、お前を守らせるために用意したんだ」
「えっ」
「勇者という仕事は危険に自分から飛び込むから危険だ」
「ええ」
「だから身を守る術は多く持っておかないといけない」
「はい」
「俺の渡したペンダントも、お前が身を守る手段の一つに加えて欲しい」
「そのような意図があったのですか」
「ああ」
「ペンダント、大切にします」
イリアは満面の笑顔でペンダントを受け取ってくれた。
久しぶりに会ったイリアの笑顔には眩しさすら感じられる。
だが俺にとって短いスカートは、笑顔以上に眩しい存在だった。




