俺は美幼女な妹に兄としての初仕事をした 『違和感があります』
俺はコーネリアが持つ魔王の素質を鎮静化させた。
これから本人が素質を開放しない限り影響を抑えておけるはずだ。
「コーネリア、気分はどうだ?」
「少し違和感があります」
父さんがコーネリアの体調を気遣っている。俺の体調など気遣ったこともないのに。
俺の親に、他の人間を気遣える心があったとはな。
コーネリアのいう違和感なんだが……
魔王の素質が抑えられたから感じている物だろう。
(俺も馬鹿みたいに開花した勇者の素質を抑えたときに違和感があったしな)
「自分で術を解かない限り素質が表に出ることは無いはずだ」
「そうですか。ありがとうございました」
「ああ」
俺の使った術は周りが解くのは難しい。
だが自分が解こうとするとアッサリと術が解けてしまう。
この点は、しっかりと後で教えておかないとな。
「コーネリアちゃん」
「お姉さま」
コーネリアは目を輝かせている。
母さんとコーネリアの後ろに花が咲き誇りそうな雰囲気だ。
母さんはコーネリアをそっと抱き寄せる。
「お姉さま」
「これで明るい場所に出られるわね」
「はい」
「クレス、ありがとう」
「俺からも礼を言うぜ、ありがとうな」
「ああ」
そういえば親に『ありがとう』と言われたのは始めてかもな。
俺は笑い合う家族を見ながら考える。
魔王の素質開花が彼女に与える悲惨な結果を防ぎたくて術を使った。
だが、もし兄として術を使っていたのなら笑顔にすることを目的にしたと思う。
今回は勇者として術を使ったが兄として一緒に笑いたい。
俺は帰ったら兄らしいことをしようと思いながら帰路に就いた。
………
……
…
翌朝、親は置手紙を残し姿を消す。
置手紙に書かれていたのは予想通り新婚旅行に行く旨だ。
俺は予想していた。だがコーネリアはショックにより2日ほど寝込んだ。
昨日家族になり一晩寝て起きたら置いて行かれていたんだ、気持ちは分かるぞ。
こうして義兄としての初仕事は寝込んだコーネリアの看護となった。




