俺には美幼女な妹がいたらしい 『お前の妹だ』
俺は黒い鎧、ダーク・アーマーを倒した。
そして弁当を食べ終わった両親に連れられダンジョンの奥へと向かっている。
「父さん……」
「なんだ?『モグモグ』」
父さんは、オヤツを食べ始めていた。
「こっちの通路は、どこに繋がっているんだ?」
俺は嫌な予感がして質問した。
「そこは隠し通路で、地上に直通している『モグモグ』」
「…………」
どうやら先程の戦いは、洞窟の奥に行くために必要だったのではなく文字通り修業だったらしい。
「さっきのダークアーマーは修業だったのか?」
「ええ。コッチに来たからついでに修業もしておこうと思って『モグモグ』」
母さんもオヤツを食べている。
どうやら俺は、自殺志願者用のモンスターと『ついで』に戦わされたようだ。
~数十分後~
しばらく俺らが進むと大きな赤い扉が目の前に現れた。
「ここだ」
父さんが、そういうと扉が勝手に開き始める。
扉の先は暗く何も見えない。
だが、扉の先に広がる通路に並んだロウソクが一斉に灯った。
どう見てもゲームでラスト・ダンジョンで魔王と戦う演出だ。
「いくぞ」
父さんは、なんとも思っていないのか普通に歩いて行く。
母さんはというと、手にサンドイッチを持って食べながら歩いている。
なんとも気楽な親だ。
俺達が薄暗い通路を進んでいくと再び赤い扉がある。
当然のごとく扉も自動的に開く。
扉の先を見た俺は、その先の光景に絶句した。
なんというか俺の目に飛び込んできた光景は……ファンシーだった。
目が痛い程のピンク一色の室内。
いくつものヌイグルミが室内のいたるところに置かれている。
そして部屋のあちこちがフリルで飾られている。
そんな少女趣味な室内が広がっていた。
「よう、コーネリア」
「あ、おじさま」
父さんが声をかけたのは部屋にいた少女。
薄い金色の髪に青い瞳で色白。服はネグリジェ?
そんな少女がベッドから立ち上がり父さんへと近づく。
「お久しぶりです。おじさま、お姉さま」
「久しぶりね。コーネリアちゃん」
お姉さまというのは、俺の母さんのことらしい。
たぶん言わせているのだと思う。
「あの、そちらの方は?」
「ああ、息子のクレスだ」
「……息子ということは、お姉さまの子ども……」
「よろし……く?」
俺が挨拶をしようとしたとき少女の目に冷たい物が宿った気がした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
だが次の瞬間には柔らかな笑顔を俺に向けて挨拶をした。
(気のせいか?)
「この子はコーネリアと言って、お前の妹だ」
「はっ?」
俺に妹などいたのか?
間抜けな声を出しながら俺は自分の人生を振り返ってみた。
万年新婚旅行に行っている2人なら出来てもおかしくは無いが……
「養子ではあるがな」
「仲良くするのよ」
養子か。それなら母さんの体格が変わらなかったのも納得だ。
それよりもコーネリアは母さんに抱きしめられて恍惚とした表情なのだが。
……まさかな。
「なんで、こんな場所に閉じ込めているのか聞きたいんだが」
「ああ、この子の素質が周囲に与える影響を抑えるためだ」
「素質?」
俺は勇者の素質を探る要領でコーネリアの素質を探ってみる。
「なっ?」
コーネリアが持っていた素質は勇者の素質ではない。
彼女が持っていた素質は『魔王の素質』だった。
「やはり、わかるか」
「俺が素質を見抜けることを知っていたのか」
「ああ、何年お前の父親をやっていると思っている」
「俺が6歳だから……新婚旅行に行っていた分を引けば3年ぐらいだな」
「すまん」
父さんは俺から目をそむけて謝った。
コーネリアの年齢はクレスと同じ6歳。3ヶ月程、生まれたのはあとですが。




