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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-C 凄い勇者は父の実家に向かった
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俺は感動した 『じゃあ、行くか』

 父さんと母さんが、予想を上回るリアルチートぶりで驚いた翌日。

 

 俺は父さんの故郷に着いた。

 転移方陣を使って一瞬だったため、旅行の醍醐味がなくて残念だった。

 

 しかも、父さんの実家まで徒歩5分の距離。

 やばい、心の準備が出来ていない。

 

「少し落ち着いたら?」

「お、おう」

 

 コーネリアに注意されるも、心の動揺は簡単には治まるはずがない。

 まずは深呼吸だ、いや簡単な運動で、いやとりあえず帰って──。

 

「おい、どこに行く!」

 

 家に帰って出直そうとした所で父さんに止められた。

 冗談だったのだが、馬鹿をやったおかげで普段のリズムを取り戻せた。

 

「待たせているわけでもないからな……少し、周りを見てくるか」

 

 こうして俺たちは簡単な観光をすることになった。

 

 *

 

 さて、俺たちが訪れた父さんの故郷について話そう。

 

 この地域は、スメラギ領という場所だ。

 しかし俺の住んでいる地域からは、少々離れてはいるが同じロザート国にある。

 

 父さんと母さんが、この場所の説明を放棄したのを覚えているだろうか?

 

 実際にここへ来て、何故説明を2人が放棄したのかを理解出来た。

 この辺りは文化が違い過ぎたんだ。

 

 丁度季節が良かったのか、周囲には桜や桃の花が咲き誇っている。

 そして行き交う人々の服装は着物。

 昼食もココで食べたのだが、白米に味噌汁、焼き魚や漬物といった和食!

 

 そう、ここは日本そっくりな文化を持った領土だったんだ。

 

 もちろん偶然、同じような文化が育ったというわけではない。

 

 大昔にこの地域に流れ着いた人間がいたんだ。

 その人間というのが、地球の日本から流れ着いた人間だった。

 

 で、そいつは侍か武士かは忘れたが、刀を使うヤツだった。

 このため、スメラギ領では刀を使った剣術が主流となっている。

 

 なぜ俺が、こんなことを知っているのか?

 

 多少は父さんたちに聞いた部分もある。

 だが一番の理由は、ここがかつての仲間である剣聖シオンの故郷だからだ。

 

 シオンの名字は、スメラギだった。

 だから、この地域の領主と血縁関係ということだな。

 

 それでだ。

 昨日は両親のチートすぎる称号というか職業で残念な思いをした俺だ。

 しかし今日もまた、とても残念なお知らせを頂いた。

 

 残念なお知らせというのは──父さんの旧姓が、スメラギだった。

 

 父さんの名前は、アレイスト・ハーヴェス。

 旧姓がアレイスト・スメラギ。

 

 違和感があるよな。

 でも残念ながら冗談ではなかった。

 

 それはともかく──。

 セレグがかつての仲間であるバスカークの子孫だと考えたことがある。

 その時は、世間というのは狭いと感じたものさ。

 

 しかし、まさか俺自身が、かつての仲間の血縁者となっているとはな。

 シルヴィアに知られたら、からかわれそうで怖い。

 

 *

 

 俺は今、スメラギ領のある店に入っている。

 その店は古い日本の住居という感じで木造だ。

 

「お、おおぉ」

「ちょっと、お兄ちゃん」

 

 俺は、ある店に入って歓喜していた。

 コーネリアが困ったように俺の腕を引っ張っているがそれどころではない。

 この店には、アレがあったんだ。

 

 俺に多くの挫折を味わせ、何度も涙を流すきっかけとなったアレが。

 

 アレの名は──。

 

「そ、蕎麦だ!!」

 

 見せに置かれていたのは蕎麦そば

 妹に毒と言われ、年末には失敗作を無理矢理喰わされた蕎麦だ!

 

 ここで売られている蕎麦は乾燥させた物を神に包んだ状態で売っている。

 

 もちろん俺は速効で買ったさ。

 だが、食べるためではない。

 

 蕎麦があったということは、蕎麦粉か蕎麦の実も買えるということだ。

 だからケット・シーの情報網を使って、蕎麦粉を探すために買った蕎麦を使う。

 

 もちろん個人的に情報網を使わせてもらうんだ。

 それなりの対価を支払う予定ではいる。

 

 転移方陣で移動するのも良いのだがな。

 やはり手軽に買えるようにしたい。


 *

 

 蕎麦への興奮によって俺の緊張は吹き飛んだ。

 

 あの後、妹ににらまれた。

 だが、いつものことだから問題はないだろう。

 

「じゃあ、行くか」

 

 店の外で待っていた父さんの歯がキランと光った気がした。


(そういえば、密かにイケメンだよな)


 父さんは黒髪で瞳も俺と同じ黒。

 歯が光るイメージが似合いうイケメンだ。


 新婚旅行と称して2人で旅行しまくっている両親とは、年の3分の2は会わない。

 だからこそこれまで気付かなかったのだろう。

 俺の親が顔までチートだと。


 まあ、おかげで俺にもイケメンの血が入ったのだから許してやろう。


 このあと俺たちは領主の屋敷へと向かった。

 当然ラスボス──もとい領主と会うためだ。


 だが、もはや領主などどうでもいい。

 俺は早くそばを食いたかった。

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