表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-C 凄い勇者は父の実家に向かった
136/207

俺は血筋と向き合った 『どういう所なんだ?』

 一つのテーブルを隔て俺たちは座っている。

 

 俺と妹vs父と母

 

 このような形で向かい合っている状況だ。

 vsと書いたが決して対立しているわけではない。

 なんとなく、そう表したくなっただけだ。

 

「実家に帰るぞ」

「ケンカでもしたのか?」

「いつかやると……」

 

 父さんの言葉に俺が返すとコーネリアが続いた。

 ”いつかやると”──って何をやると思っていたんだ妹よ。

 

「俺が浮気なんてするはずないだろ」

「そうなんだ」

 

 ”そうなんだ”と言い、手にした紅茶を飲む妹。

 なんで、”いつかやると”の一言で浮気のことだと父さんは分かったのだろう?

 俺を置いてけぼりにして、親子の絆が深まっているとしか思えないのだが。

 

「フフ、浮気なんてするハズないわよね」

 

 母さんは笑顔だ。凄く良い笑顔だ。眩しい程の笑顔だ。

 でも何故か寒気がする。

 

「俺の実家が少し訳ありでな。お前が学校に行く前に挨拶をしておきたいんだ」

 

 父さんも笑顔だ。

 しかし声が上ずっており、何かを我慢しているのが分かる。

 

(腹でもつねられているのだろうか?)

 

 たぶん、昔を思い出した母さんが父さんをお仕置き中なんだと思う。

 子どもは知らない方が良いことなのだろう──きっと。

 

 夫婦の問題に干渉する気はない。

 そのように決めた俺は、テーブルの上に置かれた紅茶を口にした。

 

(こっちを見ないでくれ)

 

 父さんを見ると目で俺に何かを訴えていた。

 だが、俺にはどうしようもないことだ──父の威厳でなんとかしてくれ。

 

「私も行っていいのでしょうか?」

「コーネリアのことも紹介したいからな」

 

 そう言えば、父さんの実家にコーネリアは行ったことがなかったよな。

 あそこは緑豊かで──。

 

「クレスも行ったことがなかったわよね」

 

 記憶を捏造ねつぞうしかけたが、俺も行ったことがなかったな。

 

「どういう所なんだ?」

「そうだな……この辺りとは色々と違うな」

 

 さっぱり分からん。

 

「母さんは行ったことがあるのか?」

「あるわよ」

「どういう所なんだ?」

「そうね……行ってみればわかるわ」

 

 面倒で説明を放棄したな。

 

「コーネリ……」

「…………」

 

 自分が分かるはずないでしょ!

 と、主張する視線を、妹は俺に向けてきた。

 

 さっきは、コーネリアと父さんの絆が深まったことを感じて少し寂しかった。

 だが、この数年で俺と妹の絆も深まっているんだ。

 

 目を見ただけで、妹が何を言いたいのかが分かるんだぞ──すごいだろ!

 ※怒りの言葉限定だがな。


 俺とコーネリアの絆も深まったものだな。

 今の関係を思い返したら涙がこぼれそうになった。

 涙の理由は、あえて何も言わないが。

 

「明日、向こうに行くんだが……転移魔法で移動するから特に準備は必要ないぞ」

「そうね、正式な形にしたくないから、むしろ普段着の方がいいかもね」

 

(ん……正式?)

 

 正式と非公式があるということだろうか。

 もしあるのなら相手は権力者ということでは──?

 

 知りたくない、でも知らなければまずい気がする。

 

 伝説の魔物から剥ぎ取った素材を、家の奥に溜めこんでいる両親だ。

 只者ではないというのは分かっていた。

 

 恐らくは、ガリウスと同じリアルチートなのだろう。

 

 そこまでは、いいだろう。

 いや、良くはないのだが良しとしておこう。

 話がややこしくなるからな。

 

 だが、もし権力を2人が持っていたら?

 もしくは、とんでもない名声を持っていたら?

 

 間違いなく俺の夢である平穏な生活が遠のく。

 

 今も魔人や悪魔や魔王と戦うという、非日常生活をまっしぐらだ。

 だがそれは、イリア達の成長や勇者ギルドの稼働までの話だと思っていた。

 

「……1つ聞いていいか?」

「なに?」

 

 母さんは笑顔だ。

 先ほどまで、父さんをお仕置きしていた時の威圧感は消えている。

 

「2人はどんな仕事をしているんだ?」

 

 これまで避けていた質問を口にしてしまった。

 もう後には退けない。

 

「なんだ知らなかったのか」

「あ、ああ」

 

 父さんはあっさりとした反応だったのだが、俺は緊張し放題だ。

 

「あえて言えば、モンスター退治だな」

 

 普通だ。

 地球で言えば頭がおかしいと思われる職業だ。

 だが、この世界では普通だ。

 

 いや、俺が知りたいのはそこではない。

 俺はもう一度勇気を振り絞った。

 

「2人は……」

「剣聖と大魔導士よ」

 

 勇気をふり絞ってしようとした質問はコーネリアに遮られた。

 いや、俺の思考を呼んで答えてくれたというべきか。

 

 まあ、なんにせよ──平穏の遠ざかる足音が聞こえたのは確かだ。

剣聖=剣士の頂点

大魔導士=魔導士の頂点

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ