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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-B 凄い勇者の騎士学校受験
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俺は合格した 『おめでとう』

~自宅にて~


「合格した!!」


俺は合格通知を受け取り思わず叫んでいた。


「うるさい!」


妹に叱られた──。


 *


 スバルに合格通知が届く数日前。

 ある少女のもとに、ある書類が届けられていた。


「結果が出たか」

「はい」


 ここは騎士学校の校長室。

 可憐な姿に似つかわしくない重厚な造りの机で書類に目を通す少女。

 彼女が目を通しているのは、いましがた受け取った書類。


 その書類には、次選合格者の試験結果が書かれている。


「ごくろう、下がって良いぞ」

「はい、失礼します」


 女性は、足音も立てずに校長室を出ていく。


 そして、少女一人のみとなった室内には静寂が訪れる。

 ただ、書類に少女の指が触れる音だけが響いていた。


「…………」


 少女は白金桃色プラチナピンクの髪をツインテールにまとめている。

 外見は12~13歳程だが、書類を見る目は年齢不相応の鋭さ。


 彼女の名はイザベラ。かつてスバルとともに戦場を掛けた魔法使い。


 転生の法と呼ばれる魔法を使い、現在の肉体を得た。

 このため、見た目と精神年齢とが大きく異なる。

 

「ふっ」


 書類をめくる手を止め、先ほどまでの鋭い視線が緩み笑みがこぼれる。

 その笑みも、年齢にそぐわない大人じみたものだった。


「遠回りをしたが、何とか合格できたか」


 彼女が手を止めたのは、クレスの試験結果が書かれた書類。

 イザベラは、しばらく書類を眺め続けたあと、片肘を机につきながら呟いた。


「さて、お主は何者かのう?」


 脳裏に浮かんでいるのは、かつての友。

 そして同時に、天才と呼ばれていた彼女を持ってしても追いつけなかった才能をもった壁。

 

「……」


 しばらくクレスの書類を見続けたあと、彼女は再び手を動かし始めた。


 イザベラ自身が転生の方により新たな肉体を得た。

 このためスバルが転生を行った可能性が十分に高いと考えている。


 だが、断定はしていない。


 向こうから自分の目が届く場所に近づいてきたのだ。

 じっくり観察して、判断はその後で下せば良いと考えている。


 クレスと言う少年が何者なのか?

 それを判断する時間は、これからいくらでもあるのだから──。


「あっ……」


 イザベラは何かを思い出し、手が僅かに止まる。


「まあ、どうでもよいことか」


 そう言うと、何事もなかったかのように再び書類をめくりだした。

 

 彼女が思いだしたのは、魔法ギルドカードで女性登録したこと。


 カリスと同様に、クレスを直接見極めるためにカードの性別をイジる。

 だが、クレスが騎士学校に入学することを知る頃には完全に忘れ去っていた。


 すでに彼女の中ではどうでも良いことになり下がっているのだから──。

 クレス自身もすでに完全に忘れているのだから──。


 少なくともクレスが思いだすまでは、イザベラが何か言うことはないだろう。


  *


「合格したぞ!」


 俺は世界樹の森に集まったメンバーに合格を報告した。


「お兄ちゃん、おめでとう」


 まず、最初におめでとうと言ってくれたのはコーネリアだ。

 さっきはうるさいと怒鳴られたのだが、まあいいだろう。



「おめでとうございます」

「おう!」


 セレグからのお祝いの言葉だ。

 男にしておくのは惜しい程の笑みで祝ってくれた。


「学校に行ったらよろしくな」

「おう、こっちこそよろしくな」


 次にラゼル。

 俺が合格したことで、2人とも騎士学校に行けることになった。

 彼の言うよろしくは、ライバルとしてという意味だろう。


「クレス。おめでとうございます」

「一緒のクラスになれるといいな」

「は、はい。ぜひ一緒のクラスに!」


 今のはイリアだ。

 我がことのように、凄く目を輝かせて喜んでくれている。

 最近はイリアの優しさに癒される日々だ。


 酷い目にばかり会うからな、俺──。


「良かったなクレス。じゃが修練を忘れんようにな」

「ああ」

「入学祝い代わりに、お主専用の訓練メニューも考えておこう」

「あ、ああ……お手柔らかにな」


 ガリウス、俺専用のメニューを考えるつもりか。

 俺が9歳であることを忘れて、とんでもないメニューを考えなければ良いが。


「おめでとう」

「おう」

「じゃあ、お祝いをしないとね」


 シルヴィアがお祝いだと!!

 怖い、怖すぎる。


 いつも俺をイタぶって悦んでいるシルヴィアが俺を祝うだと!


 料理に毒を盛るつもりか?

 それとも全部激辛とか?

 もしやゲテモノ料理?


「もちろんクレス持ちで」


 ──いつも通りだった。

このあと、俺とラゼルの合格を祝って簡単なパーティーをしてくれた。

シルヴィアが、『クレス持ち』というのは冗談だといったのが怖かった。

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