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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-B 凄い勇者の騎士学校受験
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俺は解体をする 『残念ですね』

 今日一日で、俺たちは4匹のビッグボアを崖の下に突き落とした。

 日もまだ傾いていないし順調と言えるだろう──が、ここでタイムアップだ。

 

 試験の合格には魔核石という物が必要となる。

 魔核石はビッグボアの体内にあるので、解体して取り出す必要がある。

 今から解体を行えば、何とか日が暮れるまでには村に帰られるだろう。

 

 魔核石というのは、魔物の核と呼べる黒い石みたいなヤツだ。

 コイツには魔物の生体情報なんかが詰まっている。


 だから冒険者ギルドでも、モンスターを討伐した証として扱うことが多い。

 そのせいか、俺達の試験も同様の仕組みを採用しているんだ。

 

 俺らと一緒に、この村に来た試験官。

 彼にビッグボアの魔石を5つ渡すことで試験合格となる。

 

 魔核石を渡すまでが試験だというわけだな。

 

 

 ~惨劇により赤く染まった崖の下にて~

 

 ビッグボアの中身が散らばる崖の下に俺たちは降りた。

 

 モンスターは体には、魔素という物が多く含まれている。

 魔素という物は魔力が集まってできた成分だと思ってもらえば大丈夫だ。

 

 この魔素には生物が死ぬと魔力に還るという性質がある。

 だからモンスターが死ぬと、魔素が魔力に変わるので肉がボロボロになる。

 モンスターを仕留めてすぐに加工すれば肉の品質は維持できるのだが──。

 

 予想通り肉は使いものにならなかった。

 

「派手なことになってるわね」

「残念です」

「なぜ俺を見ながら残念がるんだ」

 

 ブリッドがビッグボアの惨劇現場の感想を言うとマルテも感想を言った。

 なぜか俺を見ながら心底残念そうにしている。

 

「はぁ~(あそこから本気で俺を突き落としたかったのだろうか?)」

 

 溜息をついた俺は、絶壁の上にある崖を見上げた。


 マルテが俺を病んだ目で見るのは何が原因なのだろう?

 無理矢理パーティに組ませただけではない気がする。

 

(ふっ だが、あの程度の高さなら骨折程度で俺なら済ませられるぞ)

 

 心の中でマルテに勝ち誇る。

 この気持ちを言葉で表わしたら何かされそうだから気を付けよう。

 そう思っていたのだが──。


「その顔は腹が立つので首から取り外して下さい」

「無茶を言うな」

「お使い下さい」

 

 そういうとマルテは一本のナイフを俺に差し出した。

 コイツで首を取り外せるようにしろと言いたいのだろうか?

 

「…………」

 

 俺をいじめるのが、マルテのナチュラルな行動になりつつある気がする。

 合格後の学校生活が少し心配になってきた。

 

「フェル、始めるわよ」

 

 俺の不安を余所よそに、ブリッドはフェルに作業の開始を促した。

 対してフェルは、少し離れた場所でコチラに背を向けて手だけを振っている。

 

(あの手は、無理だという合図だな)

 

 弱々しい少年の背中からは哀愁が漂っていた。

 惨劇の現場は彼にとって刺激が強すぎたようだ。

 少女二人が平然としているのにな。

 

 マルテ辺りが涙目になれば、需要はありそうなのに。

 彼女はワイルドボアの惨劇現場を平然と直視している。

 

「…………」

 

 何かに気付いたのか俺の方を見た。

 惨劇の被害者になりそうだから、これ以上は考えるのをやめておこう。

 

「早く全部吐き出しちゃってよ! そうすれば作業中に吐き出さずに済むでしょ」

 

 今の言葉でパーティの関係が理解出来た。

 俺に対してマルテが厳しく、フェルに対してはブリッドが厳しい。

 まとめると男に厳しいパーティということだ。

 

(……解体を始めるか)

 

 これ以上考えるのを俺はやめた。

 シルヴィアや妹を相手にしている俺に女尊男卑の環境は慣れて──。

 

(いや、ラゼルやセレグは普通に扱われている気が……)

 

 なんか、ますます惨めになってきたな。

 俺は気付いた真実を脳内の奥深くに封印して解体作業を開始した。

 

「早く全部吐いちゃいなさいよ!」

 

 フェル──彼とは仲良くできそうだ。

 俺は学校に入る前に、無二の友を得られたのかもしれない。

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