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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-B 凄い勇者の騎士学校受験
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俺はヤんだ少女に目をつけられた 『……いいの?』

 王都の周辺地域は、国境などと比べると遥かに安全だとされている。

 この安全性は定期的に行われる国を挙げてのモンスター狩りのおかげだ。

 

 安全の確保は税収の安定につながる。

 現にモンスターが少ないおかげで、住民は産業や農業に安心して従事している。

 

 更にモンスター狩りは、冒険者達と兵士達は一緒に行う。

 このことにより狩りが行われる時期には、王都に冒険者が増える。

 だからお祭り騒ぎとは言わないが、狩りを行うことで経済効果が生まれるんだ。

 

 当然、狩りのおかげで、王都周辺では旅人の死亡率が低い。

 

 日暮れ以降になると、夜行性の危険な魔物が増えはする。

 だが王都周辺であれば宿場にたどり着けずとも即モンスターの被害に!

 なんて言うことは滅多に起こらない。

 

 もちろん、狩りのおかげでモンスターの数そのものが少ないためだ。


 だが戦う術が未熟な者にとっては、王都周辺も危険であることに変わりはない。

 このため試験を受けるための移動はパーティ全員で同時に行われた。

 

 俺達は4人で試験を受けるため、4人+試験官役の冒険者1名の5人での移動だ。

 

 夜の移動を避けたい俺達は、朝早くに王都を出た。

 それから途中の村で宿をとり、2日目で目的地へと辿り着くこととなる。

 

 

 試験の依頼はクベールナという村からの物だった。

 

 クベールナは山が近い村で、ぶっちゃけ田舎だ。

 試験内容はビッグ・ボアという魔物を倒すというもの。

 


 ちなみに今回の依頼をまとめると、こんな感じだ。

 

 試験(依頼)の内容

 ビッグ・ボア5体を退治する

 

 村の名前

 クベールナ


 パーティは、本来6人だがメンバーが集まらず4人となった。

 

 男性のパーティメンバー

 フェルディナンド(愛称フェル)

 

 女性のパーティメンバー

 ブリット

 マルテ (俺を不審者認定中)


 

 次選合格者なのは俺だけ。

 他の3人は冒険者を行う許可を得るためらしい。


 俺が次選合格者だと伝えとき、生温かい目で見られたのは良い思い出だ。



 ~クベールナ村 ある民家~

 

 俺達はクベールナで宿をとり一部屋に集まっている。

 明日のことを話し合うという名目で、お互いを知っておくためだ。


「じゃあ、俺とフェルが前衛で引きつけて、マルテが俺達を魔法で補助……」

「そして私が矢でとどめを!」

「お前は援護だからな」

 

 俺達4人は、円を作る形で床へと座り話し合っている。

 

 弓矢を使って止めを! と、言ったのはブリット。

 彼女は動きやすいように赤い髪を短めに切っている。

 黒くツリ目気味なので気の強そうな印象があるな。

 

 親と共に狩人をしているので、腕には自信があるようだ。

 

 ただ、弓矢というのは地球と比べると威力が弱い。

 

 魔力が込められていない武器は障壁に阻まれてしまうからだ。

 この世界の生物は強弱に違いがあるものの、無意識的に障壁を張っている。

 で、そんな障壁は魔力が一定以上込められた攻撃で破ることが可能。


 剣など直接触れている武器であれば、問題なく魔力を通しつづけられる。

 

 だが弓矢のように体から離す武器の場合は、少し問題がある。

 手から離れた瞬間から、矢の魔力が急速に抜けてしまうんだ。

 

 もっとも魔法を併用すれば威力を上げることは可能だが──。

 

「む~~」

「唸っても、マルテと一緒に援護だという点は変わらないからな」

「…………」

 

 マルテというのは、俺を不審者認定した少女。

 黒い髪を腰辺りまで伸ばして、後ろで結んでいる。

 大きめの黒い瞳なんだが──無言で俺を睨むのはやめて欲しい。

 

 見た目に清楚な印象があるぶん、睨まれると怖いんだ。

 

「そろそろ許してもらえないか?」

「何をです?」

 

 睨みつけるような表情から一転し、満面の笑みで返事がかえってきた。

 

 騙す様な形でパーティに入れたことをまだ根に持っているのだろう。

 彼女には後衛をやってもらう予定だから、後ろから何かされそうで怖い。

 

「回復魔法で何とかなる程度にしてくれよ」

「……いいの?」

「試験が終わってからなら……」

「何の話をしているんだ」

 

 フェルとマルテの間で、何やら不穏な会話がされていた。

 

「お前の命に関わらないように何とかしようとしたのだが」

「そこは攻撃させないように頑張ってほしい」

 

 フェルは、先ほどからマルテに俺が睨まれていたのに気付いていたようだ。

 そこで交渉を──いや、行動を促していたような気も?

 

「あの目は無理だろ」

「……何とかしてくれ」

 

 マルテの目を見ると諦めざる得ない何かを感じる。

 だが、親切なフェルには交渉をがんばってもらいたい。

 

「……4回に分けて」

「何をする気だ!」

 

 小さく何かをつぶやいたマルテ。

 明らかに精神を病んだ者の目なんだが──気のせいだよな?

 

「…………」

「黙って肩を叩くのはやめろ」

 

 俺の肩を黙って叩いたのはブリット。

 『諦めろ、ご愁傷様です』

 彼女の肩を叩く行為からはそんな意味を感じた。

 

「かわいい子に想われて良かったじゃないか」

「命に関わる想われ方は避けたい」

 

 小声で不穏なことを言うフェル。

 マルテの攻撃は、彼に当たるように誘導しようと思う。

 その位は許されてもよいと思うんだ。

 

「…………」

「…………」

 

 マルテに視線を向けるとニコッと笑顔を見せた。

 彼女の過去に何があったのだろう?

 

 目の前の狂人に恐れおののき──と、いうことはない。

 シルヴィアが俺に向ける狂気に慣れているからな。

 

 前世では気にも留めなかったシルヴィアの狂気。

 それを今世では弱体化したせいで身をもって経験している。

 だからマルテ程度の狂気なら大したことはない。

 

 そう思い直し、再びマルテを見る。

 

「…………」

「…………」

 

 思わず目を背けてしまった。

 

 ──やはり怖い。

 

 今気付いたのだが、俺が彼女を恐いと感じるのは生理的な理由からのようだ。


 目の前の病んだ少女が発する雰囲気というか何というか。

 口にするのもはばかれる何というか──とにかく怖い!

 

(合格したら近付かないようにしよう)

 

 幼き狂人から目を背けながら、俺はそう決意した。

 ↓本文中に合った障壁の説明の削った部分

 当然、人間も障壁を無意識的に貼って入る。

 だが石ころや地面にも魔力があるので当たれば痛いし、転べば怪我をする。

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