俺は美幼女に勇者装備を与えた 『ほんの少しだけ』
2015年05月01日に修正加筆完了
虚像の大精霊は、湖に映る世界に住んでいる。
少々──いや、かなり変わったヤツだがイリアなら大丈夫なはずだ。
大丈夫過ぎて別の心配はあるが。
「 キレイな湖ですね」
「 ああ、聖なる湖と呼ぶ奴がいる程だからな」
「 聖なる湖ですか……」
俺たちの眼前には大きな湖。
水面には、鏡のように空や雲が映しだされている。
この湖こそが、虚像の大精霊が住む『聖なる湖』だ。
「さてと」
俺はアイテムBOXから、金色のネックレスを取り出して空に掲げた。
これは大精霊のネックレス。
大精霊に俺が来たことを知らせるアイテムだ。
俺は、掲げた大精霊のネックレスに魔力を込めて念じる。
すると湖に変化が現れた。
水面に映っていた世界に神殿が現れる。
その神殿から一人の女性が神殿の外へと出た。
かと思うとコチラに目を向けた。
次の瞬間、湖から光が立ち昇る。
目の眩みそうな激しい光ではあったが、不思議と目に痛みはない。
そのまま数秒のあいだ光が放たれ続けるも、ある瞬間にフっと光が止む。
光が消えたあとの湖は、巨大で白く美しい神殿へと姿を変えていた。
その神殿の前には一人の女性。
緑色の髪に白い肌。
目の色は深い青色。
彼女こそが神殿の主たる虚像の大精霊だ。
「 あなたは……そうですか。勇者スバル様ですね」
「 ああ、久しぶりだ」
「 ずいぶん幼い姿になりましたね」
「 ……まあな」
穏やかな口調で俺へと語りかける大精霊。
前世なら全く問題はなかった。
だが、今の俺はコイツに最大限の警戒をしなければならない。
なぜなら──。
「 す、少しだけ抱いてもよろしいでしょうか」
「 いや、今は無理だな」
子どものような可愛い物が好きなんだ。
好きといっても、変態的な意味での好きだから困る。
その証拠に彼女の目が怖い。
色々と台無しになるほど、目を血走らせているんだ。
「 す、少しだけですから……ほんの少しだけ……ハァハァ」
「 すまないが」
昔、俺と旅した少年がコイツに抱かれて色々と失った。
そう、コイツのいう抱くは『抱きしめる』ではないんだ。
地球では犯罪になる類の抱くと言えば伝わるだろうか?
「 今日はイリアの武器に加護を与えてもらおうと思ってココに来た」
「 イリア?」
「 えっ!!」
突然話を振られたイリアは、変態を前に怯えている。
無理はないと思うが……頑張れ。
「 こちらも中々。ジュルっ」
「 ひっ……ク、クレス」
涙目になりながら、イリアは俺に助けを求めている。
だが大精霊の中では、最も安全に勇者の武器を得られるんだ。
安全の意味は、命の危険はないという意味でしかないのだが……。
「 抱きしめるだけだぞ」
「 えーーーーーー!」
大精霊の試練とは危険な物ばかりだ。
多くは命を危険にさらすような物ばかりで、今のイリアでは荷が重い。
別の意味で危険だが、コイツの試練に耐えてもらうしかない。
「 もう一声」
「 武器に加護を与えるだけでいいから、それ以上はダメだ」
「 …………」
「 …………」
しばらく睨みあうかのように視線を絡ませる。
俺を見ている大精霊が生唾を飲んだのに気づき、俺は思わず視線を逸らした。
(絶対、俺を狙ってやがる)
身の危険を感じた。
俺はまだ清い体でいたいんだ。
この変態から逃げるかどうか、本気で考えた方が良いかもしれない。
そのように考え出した所で──。
「 ……しかたありませんね」
「 ク、クレス」
イリアは涙目になりながら俺を見ている。
なんとも恨みがましい目なのだろう。
俺は彼女にとんでもない試練を与えたのでは?
このように考えて少し罪悪感が芽生えた。
(だが、命を危険にさらすよりもは……)
一線を超えないように見守っていてやろう。
俺に出来るのはその位だ。
「……頑張れ」
「クレ……ス」
捨てられた仔猫のように悲しげな声を出したイリア。
だが、俺に出来るのは見守ることだけだ。
(無力な俺ですまん!)
このあと虚像の大精霊はイリアを抱きしめて堪能する。
その後、武器に加護を与えてくれた。
しばらくイリアは茫然としていたが……
もちろん抱きしめる以上のことをしようとした時には止めた。
だからイリアの貞操を守ることには成功したはずだ。
心には多少の傷を負ったかもしれないが──。
なにはともあれ、加護付きの武器を手に入れることには成功した。
失った物は予想よりも少なかった。
よかったなイリア!




