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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第6章-A 凄い勇者と美少女冒険者クレアちゃん(仮)
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俺はお約束を喰らった 『スバル殺しのアルカディア』

 クレスの戦闘力 魔人シーマとの戦い 

 チート:一部を使用

 勇者の素質:封印中

 シルヴィアが戦いたいそうなので、チートを全開にはしない。

 シルヴィアの持つ銃は、魔法を弾丸として撃ちだす魔銃だ。

 元々は俺が、この世界に持ちこんだものだが扱いづらいので放置していた。

 

 しかしシルヴィアが興味を持ち、しつこく強請ねだられた。

 だから、俺が帰るまでという期間付きで貸したんだ。


 最初は全く魔銃を使えなかった。

 しかし訓練を積み、独自の使い方を編み出すまでになる。


 彼女独自の魔銃の使い方についてだが──。

 

 魔法とは、『魔力を練る』、『術式を刻む』、『発動させる』。

 この3つの要素を満たすことで初めて使える。

 

 しかし彼女は、魔銃を使うときに1回多く『術式を魔力に刻む』。

 

 よってシルヴィアが魔銃を使う時は──

 『魔力を練る』、『術式を刻む』、『発動させる』、『術式を刻む』

 このような順番で行うわけだ。

 

 術式を刻む回数を増やしたことで、特別な魔法を使えるようになったらしい。

 

 

 そんなたゆまぬ努力の結果、シルヴィアは魔銃を使いこなせるようになった。

 

 彼女の魔銃は大きな戦力となって通り名が付く。

 通り名は『スバル殺しのアルカディア』

 

 当時、この通り名を知った仲間からは大笑いされた。

 その後、彼らが酒を飲むたびに笑いの種にされたのを覚えている。

 

 

 ちなみにアルカディアというのは、シルヴィアが使っていた偽名だ。

 有名になり過ぎると困りそうだからという理由で偽名を使っていた。

 

 『スバル殺しのアルカディア』

 

 通り名が示すように、俺はヤツからフレンドリーファイアを喰らいまくった。

 不思議なことに他のヤツらは、全くシルヴィアに撃たれたことがない。

 

 よって『スバル殺し』と俺限定の通り名が付けられたわけだ。


 

 なぜ俺は撃たれるのに他のヤツは被害を受けないのか尋ねると──。

 

 『そこに撃ちやすい背中があるからよ』

 

 なにやら名言っぽい答えが飛び出たのは良い思い出だ。

 後になって、わざと狙っているからこそ出た言葉だと気付いたが諦めた。


 当時は、勇者の素質が使えたから俺の今以上にチートも凄かった。

 だから時々しか痛い思いはしなかったんだ。


 それに、俺以外には絶対に当てなかったせいか誰も問題にしなかった。


 アイツを戦力として見ると俺への被害を考えても差し引きで大きなプラスだ。

 よってリストラ対象にならならかった。


 

 で、なぜ魔銃をなぜ回収しなかったのかというと──。

 

 本来なら帰る直前に魔銃を回収するつもりだった。

 しかし魔銃を回収する前に、俺は元の世界に戻されてしまったんだ。

 

 当時は、二度と会うことはないだろうからプレゼントしたと思うことにした。

 

 そう、二度と会うハズは無かったのだが──

 生まれ変わってからツケを支払うはめになってしまった。

 

 

「俺を狙うなよ」

「…………」

「答えろよ!」

「ごめん」

「謝る前に、俺を撃たない努力をしろ!」

 

 俺は、突如として新たな敵が現れた気分だった。

 

 いや、敵ではなくコイツは味方だ。

 味方を攻撃するわけにはいかないので敵よりもタチが悪いかもしれない。

 

「そんなに睨まないでよ」

「照れたみたいに言っても騙されないからな」

 

 シーマを警戒しながら会話をしたのだが、これ以上の会話は無理そうだ。

 どうやら俺に当たらないように注意をする気は全くないみたいだからな。

 

 これ以上の会話は無意味だと判断し、戦いに戻ることにした。

 

「待たせたな」

「お喋りはおしまい?」

「ええ」

「フフ、じゃあ、続きを始めましょうか」

 

 シーマよ、笑っていられるのも今のうちだ。

 なにせお前は、魔銃を持ったシルヴィアの恐ろしさを知らないのだからな。

 

「行くぞ」

「どうぞ」

 

 俺達の間で交わされた短い言葉。

 この言葉を皮きりに戦闘は開始される。

 

 しかし、戦闘が再開されてもシルヴィアは撃たない。

 俺というまとが前に出るのを待っているのだろうか?

 

 横目で彼女を見ると、俺の方を見て何かを期待していた。

 

 その目に見覚えがある。

 ラゼルの勇者の素質を開花させるために手を握っていたときのキラキラだ!

 

 嫌な予感しかしない目をしていたが──。

 

(覚悟を決めるしかないか!)

 

 俺はフレンドリーファイアにさらされることを覚悟して大地を蹴った。

 

 マスター ウインドによる風魔法を使い追い風を生じさせる。

 直線での動きだけなら、今のままでもシーマと対等に戦り合えるハズ。

 

 手には、先ほどヒビを入れられた短剣に変わり、新たな短剣を握っている。

 当然、魔力を纏わせて緑色の刃を作った状態だ。

 

「はあぁぁぁぁぁ」

「フッ」

 

 再び剣を交える俺とシーマ。

 と、同時に響き渡る甲高かんだかい金属音。

 

 だが、先ほどまでとは違う物がある──それは。

 

「あああぁぁぁぁぁ」

 

 俺は全力で剣を振り抜いた。

 横一線に振った俺の剣は、シーマが後ろへとステップを踏むことで逸される。

 

 目標を失い、俺の体は剣の遠心力に振り回されて体勢を崩してしまう。

 

 その結果として出来る大きな隙。

 

 当然、その隙をシーマハ狙うわけだが問題はない。

 俺の背中を撃つのを得意とするバカがいるのだから。

 

 彼女は、俺の背中があった場所を狙って引き金を引けば良い。

 

 彼女が引き金を引くと放たれた魔法の弾丸。

 それは見事に命中した──俺に!

 

「ぐおっ」

 

 後頭部に衝撃が走り、直後には目の前が白くなる。

 

(よりにもよって、頭を撃ちやがった)

 

 剣を振り抜いたことで体勢を崩していたため踏ん張りは効かない。

 

 足は地面から離れ、体が宙を舞う。

 衝撃に流されるかのようにシーマの脇を通り過ぎ──一瞬、意識が飛んだ。

 

 幸い意識が飛んだのは一瞬だった。


 地面が近づいてくる時には意識が戻る。

 このことにより転がることで衝撃を逃がすことに成功した。

 

 衝撃を受け流せた俺は、すぐさま立ち上がりシーマを見る。

 

「あら」

 

 突然のことにシーマが目を白黒させている。

 

(どうだ、シルヴィアの恐ろしさが分かったか?)

 

 これで彼女も理解したことだろう。

 真の敵は味方の内にいるということを。

 

 

 ちなみにシルヴィアはというと──

 『あれ?』と不思議そうな表情をしていたのを俺は見逃さなかった。

 

 手を滑らせて俺に一撃を加えたことを不思議がっているのだろうか?

 昔のように、俺が平然としていないことを不思議がっているのだろうか?


(……両方だな)


 今回のは事故だと思う。


  前世の俺スバルに対して攻撃を加えた場面は限られている。

 それは敵が多くて一掃するのに必要だった時だ。


 わざと俺の背中を狙う時もあったが命が関わる場面では撃たれなかった。

 だから、今の攻撃はワザとではない──ハズ。


 

 それにしても、ヤツの手で酷い目に会わせられるたびに思う。

 

 『シルヴィアよ──俺は前世むかしよりも弱体化しているんだ。

 いい加減、 前世の俺スバルとして扱うのをやめてくれないと、本当にマズイことになるぞ』

──と。

 

 ………

 ……

 …

 

 

 体勢を整えて俺は再び短剣を構える。

 意図せぬ形ではあるが、シーマを俺とシルヴィアとで挟む形となった。

 

「俺の犠牲も無駄ではなかったようだな」

 

 これで2人で同時に仕掛ければシーマは攻撃をさばくのに苦労するはずだ。

 

 シルヴィアも状況を理解したのだろう。

 2本のレイブンソードを取り出し左右に浮かべている。

 

(大詰めだ)

 

 正真正銘、シーマとの最終ラウンドが始まろうとしていた。

 

 追い詰められた状態のシーマ。

 先程まで余裕のあった彼女の表情も先程までとは違う。

 

 彼女も理解しているのだろう。

 戦いが終わりに近づいていることを──。

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