俺は美幼女勇者に武器を与えたい 『魔王の剣って』
※2015/04/12加筆修正しました
イリアの勇者としての素質が開花しつつある。
だが、現状は卵で言えば殻にヒビが入った程度だ。
このため素質が開花したと言いきるには微妙だな。
それでも勇者の卵達が通う騎士学校では十分な開花具合だろう。
イリアの卵についたヒビは、他の生徒よりも1~2本多い程度だがな。
現状でも勇者候補として学校に入れるハズだ。
しかし、イリアには最高の勇者になってもらわないと困る。
「イリア」
「はい」
「勇者の素質が少し開花してきているぞ」
「本当ですか!」
満面の笑みで喜ぶイリア。
そんな笑顔を見せられたら、つい言いたくなってしまう。
だが他のヤツと比べて、素質の開花が早いことは伝えられない。
イリアなら大丈夫だと思うが、慢心する場合もあるからな。
(ここは我慢だ!)
俺はイリアが喜ぶ顔をもっと見たいという衝動にかられる。
だが自分に我慢を言い聞かせて耐え抜いた。
「クレス?」
イリアに声をかけられた。
必死に衝動を押さえこんでいる俺に何かを感じたのだろう。
彼女の方を見ると、不思議な物を見るような目で俺を見ていた。
「……今後の方針を話そう」
「はい」
ごまかせただろうか? それとも気を使わせただけなのだろうか?
俺は話を切り替えられたと信じて、今後の訓練方針を伝えた。
「精霊の方は探知ができるんだ。ゆっくりとやっていこう」
「はい」
イリアは精霊の探知は簡単にできるようになった。
しかし精霊の力を借りる段階には至っていない。
まあ、この齢で精霊の力を借りられるヤツは滅多にいない。
だから問題はないハズだ。
「それで訓練の方針なんだけどな」
「はい」
「とりあえず、勇者の武器を手に入れたいと思う」
「えっ もうですか?」
やはり、まだ先だと思っていたな。
勇者みんなの憧れ、勇者の武器取得を。
「早めに手に入れて、扱いに慣れておきたいからな」
「扱いが難しいのですか?」
「なんていうか、クセがあるんだ」
「クセ?」
勇者の武器というのは一言でいえば個性がある。
使うだけなら普通の武器と変わらないのだがな。
性能を引き出すには、魔力のクセなんかを理解しないとならない。
「使うのが大変そうですね」
「だが、使いこなせれば役に立つからな。早めに武器を手に入れたい」
些細な違いで生と死を分けることもあるんだ。
そのことを考えれば、早めに手に入れておいた方が良いだろう。
「どうすれば手に入りますか?」
「俺の勇者コレクションをやってもいいんだがな」
「勇者コレクション?」
勇者コレクションは凄いぞ。
大概のヤツが凄すぎて顔を引きつらせる程だ。
「俺が前世で集めた異世界のアイテム一式だ」
「そんな物があるのですか?」
「神剣から魔王の剣まで色々とある」
「魔王の剣って……」
「気にするな」
「気にしますよ!」
こんなやり取りをしながら、俺は勇者の武器を手に入れる方法を教えた。
勇者の武器を手に入れる方法にはいくつかある。
今回イリアにやってもらうのは大精霊に認めてもらうこと。
「大精霊ですか」
「ああ、知り合いにいてな」
「はあ……」
「驚かないのか?」
「相手がクレスですから」
「なんか残念だ」
俺に何故、大精霊の知り合いがいるのか?
それは、この世界が昴だった頃に救った世界の一つだからだ。
時間は救った頃から、かなり流れたようだがな。
「イリアを泉の精霊に会わせようと思う」
「泉の精霊というのは?」
「泉に映る風景の中に住む大精霊で、虚像の大精霊と呼ばれている」
「よくわかりませんが」
「大精霊というのは分からない物だ。だから気にしなくていい」
「そういうものですか?」
「そういうものだ。行くぞ」
「はい」
「俺の手をとれ」
「えっ はい」
イリアは顔を紅くしながら俺の手をとった。
未だ俺に触れることに慣れないようだな。
「イリア。力を抜いて目を瞑っておけ」
「はい」
イリアは目を瞑る。
目を瞑った顔を見ると、やっぱり美幼女だな。
なにかイタズラをしたくなるが我慢しよう……
嫌われたくないからな。
俺は転移魔法を発動させる。
「我は天の門を開きて彼の地への道を求める」
──俺たちの足元に白く温かい光が広がる。
「我の名はクレスト。大地を歩きし人の子にして天の道を歩む資格を有す者」
──足元に広がる光が俺達を包み込む。
「彼の地の名は『泉の森 フォーレンエスタ』天の門よ開きて我に道を示せ」
──俺とシリアを包んだ光は球体となり弾けるように消えた。
転移魔法によって生じた光の球体。
それはフォーレンエスタという森に俺たちを運んだ。
俺達を包んでいた光の球体が弾けるように消え、周囲の風景が目に入ってきた。
「ここは……」
イリアは周囲を見回しており何かを感じたようだ。
見た感じは先ほどまでいた森と似ている。
だが、少し違うことに気付いたのだろう。
「雰囲気が違うだろ」
「ええ」
世界樹の森も神聖さのある場所だ。
だが大精霊のいる場所には、少し違った感じの神聖さが存在する。
「とりあえず、奥に行こう」
この森の名は『泉の森 フォーレンエスタ』
虚像の精霊が住む湖がある神聖なる森。
セクハラネタ……ネタ切れっす




