俺は魔法薬について語った 『コレがどうした?』
今日は、世界樹の森にあるガリウスの小屋に全員で集まっている。
この小屋自体もそうだが、家具も全て彼の手作りだ。
小屋の中は磨き上げられた床に、シンプルながらもセンスの良い家具。
特訓の後、すぐにくつろげるように玄関から小屋に入ってすぐに広い部屋を用意するという気配り。
──ガリウスよ、良い仕事をし過ぎだ。
今日は、小屋の玄関近くにある広い部屋で魔法薬の講習を行う予定だ。
「今日は、魔法薬を使ってみる」
「魔法薬というのは……ポーションか?」
「そのとおりだ」
ラゼルに返答した俺は、横にあるテーブルに掛けられた布をどけた。
布の下にあった木の箱には透明な液体入りの試験官が入っている。
試験官のような容器は、横に倒した状態で中の液体は緑色だ。
俺は、その容器を右手にとり──。
「こいつがポーションだ」
「?」
ファンタジーでお馴染のポーション。
俺とシルヴィアが回復魔法を使えるため、これまで使う機会はなかった。
そのため、珍しいと感じているのだろうか?
イリア、コーネリア、ラゼル、セレグの4人は、興味深そうに俺が手にした容器を眺めている。
「1人、1本ずつとってくれ」
俺がそう言うと、木箱から1本ずつポーションを取り出した。
「魔法薬の説明だが……」
魔法薬には色々な種類がある。
だが一般的には、魔力を与えた薬に術式を刻み込んだ物を指す。
利点は色々とある。例を挙げるのなら──
──魔法薬を使えば、魔法を使った場合と同等の効果が得られる。
──使用する魔力が、通常の魔法に比べて驚くほど少ない。
──誰でも安定した効果が期待できる。
などが利点として挙げられる。
「ちなみに、コイツはシルヴィアのお手製だ」
ポーションは、一般的な薬草を使って作られる。
だから、今回は材料を俺が集めてシルヴィアが作成した。
俺以外に優しいシルヴィアは、教材であるポーションを無料で作ってくれた。
その優しさを1割でも良いから俺に向けて欲しい。
「じゃあ、魔力を……」
「コレ」
魔法薬の説明を始めようとすると、シルヴィアがナイフを俺に手渡してきた。
ナイフを俺に差し出した意図を尋ねると──。
「コレがどうした?」
「腕をサクッとやるのに必要でしょ」
「……ポーションの効果を見せるために自分の腕を刺せと?」
シルヴィアは黙って頷いた。
「…………」
「…………」
お互いに見つめあった後、俺は静かにナイフを返却した。
「じゃあ、ポーションに魔力を通してくれ」
ナイフを返した俺は講義を再開する。
彼女はブツブツと雑音を発しているが無視しようと思う。
「通す魔力の量を調整して、水のような透明になれば成功だ」
「できました!」
「えっ」
あまりにも早くに聞こえた『出来た』という言葉。
驚いて声の主であるセレグを見ると──ポーションの色が透明になっていた。
「……早いな」
「ええ」
満面の笑みを浮かべているセレグ。
その笑顔はキラキラしていて眩しい程だ。
いずれ、彼の笑顔に血迷う男が出ることだろう。
「どうかしましたか?」
「なんでもない」
俺が想像を膨らませているとセレグは怪訝な表情をした。
想像内容を伝えれば彼が心に傷を負うだろうからごまかしはしたが──
とりあえず、今後の無事を祈っておこうと思う。
この後、ラゼル以外はポーションに魔力を通すことに成功した。
ラゼルは獣人ということもあり、魔力の扱いが苦手なのだろう。
「何度かやれば出来るから気長にやって大丈夫だぞ」
「ああ……」
ラゼルは、ポーションを睨みつけながら答えた。
その表情に萌える女子も多いだろうな。
「このイケメン幼児め!」
「はっ?」
羨ましかったので、とりあえず罵っておいた。




