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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第3章 凄い勇者は美幼女勇者(7歳)をプロデュースする
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俺は美幼女勇者を狼と戦わせた 『頑張ります!』

※2015/04/11加筆修正しました

 俺とイリアは世界樹の森でトレーニング中だ。

 

 精霊の感知はできるようになった。

 だが精霊の力を借りるまでには至っていない。

 

 まあ、気長にやるしかないだろう。

 

「クレス」

「うん?」

「精霊の力はいつ使えるのでしょう?」

「さあな」

「……ヤル気がないですね」

 

 いつもは素直で優しいイリアが不満そうにしている。

 俺は世界樹の枝を削る手を止めて──この暇つぶしが不満を煽っているのか?

 なんとなくバツが悪くなった俺は、使っていた道具をこっそりと隠した。


(機嫌は……治らないか)


 イリアの機嫌が直る兆候は見られない。

 俺が原因ではなく精霊の訓練が進展しないことが原因のようだ。

 そのことが分かったから、ちょっと安心。


 しかし機嫌が悪いままというのは俺のメンタル的にマズイ。

 機嫌が直るかもという淡い期待を持ってフォローをしてみた。


「精霊をイリアぐらいの歳で使いこなせるのは珍しいんだぞ」

「でも私は勇者にならないといけないのです!」

  

 基本ばかりやらせてきたからな。

 自分の実力が分からないわけだから焦りたくもなるか──。

 

「実力テストでもしてみるか」

 

 俺も基本ばかりに気をとられすぎた。

 イリアの実力を測る意味でもテストをするのも良いかもしれない。

 

「使い魔を用意するから、戦って実力診断をしてみよう」

「……はい」

 

 まだ不満そうだな。

 じゃあ──。

 

「じゃあ、勝てたらコイツをやろう」

「うっ」

 

 俺がアイテムBOXから取り出した仮面を見て、イリアは一歩後ろに下がった。

 

「それは、なんなのでしょうか」

「ピエロの仮面だ」

 

 顔を引きつらせながら、イリアは俺が手にした仮面を凝視している。

 

「すごく不気味というか、変な感じがするのですが」

「そうか? 結構いい素材を使っているんだぞ」

 

 前世で地獄の道化師と呼ばれた殺人鬼から強奪した仮面だ。

 アイツは仮面やナイフに拘りがある本格派だったからな。

 仮面も中々の素材でできている。

 

「やはり、ご遠慮させて頂きます!」

「……そうか」

 

 こだわりの一品だったのだが、理解してもらえなくて残念だ。

 仮面を見つめながら俺は寂しい気持ちになった。

 

「じゃあ、まずは使い魔について説明するぞ」

「はい」

 

 気を取り直して、俺は使い魔について説明した。

 

 俺の使い魔は上級者向けのタイプだ。

 まず、魔力を使って疑似的な体を作る。

 次に、その体に召喚した上位の精霊を吹き込んで完成だ。

 

 上位の精霊は、通常の精霊とは違って意思に近い物を持っている。

 だから通常の精霊では不可能な事も行えるんだ。

 

「さっそく始めようか」

「はいッ」

 

 俺は魔力を使い、疑似的な使い魔の体を作った。

 そうやって完成したのは狼の体だ。

 

「次はと……」

 

 次に周囲の精霊を感知して氷の上位精霊を探した。

 

「来い! 氷の精霊」

 

 氷の上位精霊を発見した俺は、精霊に呼び掛ける。

 すると精霊は俺が作った使い魔の体へと入っていった。

 

(なんとか成功したか)

 

 今世では、使い魔作りはやっていなかったからな。

 成功して一安心だ。

 

 チラッとイリアの方を見ると──目をキラキラさせている。

 

 今の俺はドヤ顔をしていると思う。

 イリアに顔を見られないように、彼女の方に背を向けた。


 ドヤ顔を見せたらカッコ悪いと思われるだろうからな。

 俺とて年頃の男のこと言うわけだ。

 

 このあと使い魔の背中に手を置き魔力を流す。

 すると狼の体は目を見開き体を震わせ周囲を見回した後、俺へと視線を向けた。

 

「うまくいったようだな」

「これが精霊を使った魔法」

「コイツは上級者向けの魔法だがな」

 

 イリアは精霊魔法に感動しているようだ。

 その表情に自尊心が刺激されて思わず顔がニヤケそうになる。

 

(まずい、ニヤけるのを誤魔化しきれなくなる)

 

 ここで締りのない表情を見せるのはカッコ悪すぎる。

 ニヤけかけた表情をごまかそうと話を進めた。

 

「じゃあ、始めるぞ」

「ハイッ」

 

 イリアは鋼の剣を使い魔に向けて構えている。

 使い魔もまたイリアと向き合い臨戦態勢をとっていた。

 

 俺はニヤける口元が落ち着くのを待ち──。

 

「開始!」

 

 テスト開始の合図を送った。

 

 最初に仕掛けたのは使い魔だ。

 イリアは一歩遅れて前へと出る。

 

 剣を持ち走るイリア。

 彼女に全速で使い魔は突進した。

 

 剣を盾がわりにするも、それなりの大きさがある使い魔の突進だ。

 イリアは、突進の勢いで背中から倒れ──。

 

「ガッ」

 

 背中を強く打ってしまう。

 そこへ使い魔はさらなる追撃をかけた。

 

 使い魔は、イリアから少し離れた所で周囲に水球を作る。

 宙に浮く水球は10を超え──一斉に放たれた。

 

 倒れるイリアに迫る水球。

 左腕を地につきながら、なんとか上体を起こして彼女は剣で対処した。

 

 剣を振りなんとか3つの水球は防ぐ。

 しかし、それ以上は対処できず正面から受けることとなる。

 

 更にイリアの視界が水球によって隠れたのを見計らったのだろう。

 使い魔は再び突進を仕掛けた。

 

「ウッ」

 

 イリアは再び背中から倒されてしまった。

 だが使い魔の目的は彼女を倒すことではなく──。

 

「ウオォォォォン」

 

 周囲に遠吠えが響き渡ると、使い魔の体が青白く光り出す。

 それは魔法発動の合図であり、使い魔が発動させたのは氷魔法。

 

「なっ」

 

 驚愕の表情を浮かべたイリア。

 先ほど受けて水浸しとなっていた体は瞬時に凍りついた。

 だが、それだけだ。

 

「クゥ~ッ」

 

 イリアはうめき声をあげながらも必死に氷から抜け出そうとしている。

 生身であれば、体を完全に氷で覆われて動けなくなっていたことだろう。

 

 だが、イリアは魔法を学んでいる。

 

 イリアは自らの体に魔力の膜を作り、服が凍りつくだけで防いだ。

 続いて右腕に炎を纏わせることで、氷を溶かせることに成功する。

 

 そして自由になった右腕を使い魔の顔へと向けた。

 

「風よ吹け!」

 

 彼女は風魔法を発動させた。

 詠唱を破棄しての魔法だったため、威力は弱まっている。

 しかし目的は十分に遂げられたはずだ。

 

 顔へと突風を浴びせられた使い魔は、驚いてイリアから離れた。

 

 イリアは、即座に左手と両足に炎を纏わせる。

 正確に言うのなら、彼女が纏っているのは火の魔力だ。

 火の魔力を使い氷の魔力を相殺させて氷を溶かしている。

 

「フゥ」

 

 体の自由を取り戻し、剣を再び構えたイリア。

 手にした剣はわずかに赤く光り輝いているのは、火の魔法剣を発動させた証。

 闘志が消えてはいない証でもある。

 

 だが──終了だ。

 

 イリアはボロボロで、使い魔には傷一つない。

 それぞれが置かれた状況を見れば、勝者と敗者は一目瞭然だ。

 これ以上は必要ないだろう。

 

「そこまでだ」

「……はい」

 

 俺は使い魔から、氷の精霊を解き放つ。

 すると使い魔は魔力に分解され、光の粒子となり消えていった。

 

「イリアどうだった?」

「……強かったです」

「そうか」

 

 口数が少ない。

 そうとう悔しかったんだろうな。

 

「一つ教えておく」

「……はい」

「今戦った使い魔は、魔王と戦ったときに使った奴だ」

「はっ?」

 

 衝撃の事実に驚いている。

 ふむ、まあそうだろうな。

 

「だから弱かったら困る」

「そんな物と戦わせたのですか?」

「うん? 俺の目には十分に戦えていたように見えたが」

「そうでしょうか……」

 

 負けたことを気にしているのだろう。

 一方的な展開にならず、反撃が出来ただけでも十分なのだが。

 

「仮に訓練を始める前だったら、一方的な展開になったと思うぞ」

「そう……かもしれません」

「だが、イリアは魔法を上手く使って反撃に成功した」

「ですが……」

 

 まだ、納得はできないか。

 

「自分の成長を疑おうと、勇者になるのなら今よりも強くならないといけないだろ」

「ええ」

「悔しがるのは、納得できるぐらい強くなってからにしろ。自分を弱いと思うのは、悔しがる時間を強くなるために当てた方がいいんじゃないか?」

「そう……ですね」

「ああ、そうだ」

 

 少しは元気がでたようだ。

 

 このあとイリアは、剣の訓練を行おうとした。

 だが胸元のボタンが偉いことになっていることに気付き悲鳴を上げる。

 

「あっちを見ていて下さい!」

 

 そう言い、俺の顔には平手打ちが入った。

 不意を突いたとはいえ見事な攻撃だったな。

 

 今後の参考にしようと思う。

今戦った使い魔は魔王と戦ったときに使った奴だ

本当ですが使い魔は瞬殺されました。

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