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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-F 凄い勇者の年越し
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俺はお年玉をせがんだ 『金』

 シルヴィアが借りている王都の家へと俺はやってきた。

 子どもらしいことをするためだ。

 

「お年玉をくれ」

 

 俺は、シルヴィアに手を向けせがんでみた。

 

「お年玉ってなによ」

かね

「…………」

 

 ペシッと手をはたかれた。

 やっぱりこういう反応をしたか。

  

 お年玉を子どもに渡す風習など、この世界にはない。

 シルヴィアの反応を見たくてためしたのだが予想通り過ぎる反応だった。

 

 ワンパターンなヤツめ。

 

「で、本当は何をしに来たの?」

「少し、手を借りようと思ってな」

 

 俺は、これから大人の手が必要な事をしようとしている。

 ちょっとした冒険が必要になるため冒険者であるシルヴィアがベストだ。

 

「私の手……と、いうことは厄介事っていうことね」

「ああ、魔石を手に入れたい」

 

 魔王と2回戦って負けた。

 まあ、それは実力差があったというだけであり仕方のないことだ。

 

 問題なのは対処をどうするかという点だ。

 

「魔石なら普通に売っているじゃない」

「お前に屋台料理を貢いだせいで金は無い」

「うっ……」

 

 シルヴィアにも罪悪感があったのだろう。

 目が泳いでいる。

 

「だから自分で採掘しに行こうと思ってな」

「あなたなら大丈夫でしょうけどね……」

 

 魔石は鉱山で採れる。

 だが多くの鉱山は誰かに所有されている。


 このため勝手に魔石をとるわけにはいかない。

 

 よって、無料で魔石を採りたければ危険を冒す必要が出てくる。

 例えば、モンスターが多い鉱山での採掘なんかをするんだ。

 

「私が持っているのを上げるわよ」

「本物か?」

「要らないの?」

「すまん」


 俺が謝ると、彼女は家の奥へと行こうとした。 

 だが、普段と違って怒らないシルヴィアが怖い。

 

「なに?」

「いや、今日は優しいな~と思ってな」

 

 俺は、そう言った後、己の失言に気付いた。

 『じゃあ、普段は優しくないわけ?』

 

 そう、優しくない目で俺を脅されると警戒したのだが──。

 

「昨日は、その、悪かったかなって……」

「なっ」

「……我慢にも限度があるんだけど」

「すまん」

 

 彼女にの中に人の心など(俺に対しては)存在しないのだと思っていた。

 そんなシルヴィアが口にした反省しているような態度に驚愕してしまった。

 

「今、あなたが何を考えたかは、推測しないでおいて上げる」

「助かる」

 

 顔に出ていたんだな。多分。

 

 ………

 ……

 …

 

 しばらく待つと奥の部屋からシルヴィアが戻ってきた。

 手には何も持っていなかったが、自分のアイテムBOXから魔石を取り出す。


 どうやらアイテムBOXに詰め込んで運んだようだ。

 

「はい、これ」

「本当にい良いのか?」

「そこまで怯えないで欲しいんだけど」

 

 雑に扱われ続けたせいか、俺は人の優しさを警戒するようになっているようだ。

 無意識のうちに、彼女の好意に裏がないか勘繰かんぐっている自分がいる。

 

 それに、いつの間にか握りしめた左手には汗が──。

 

「どこまで私を怖がっているのよ」

「俺への行いを思い出してみろ」

「……優しいお姉さん「誰がだ!」」

 

 コイツ──悪かったな~とか言ったそばから記憶を捏造ねつぞうしようしやがった。

 

「俺以外には優しいのにな」

「クレスちゃんって呼んであげようか?」

「怖いからやめてくれ」

 

 俺はシルヴィアが持って来た魔石を整理している。

 テーブルの上に置かれた魔石は紫色に輝いており少し不気味さを感じる。

 

「多いな」

「質が高いと加工できる人は限られるから、余りやすいのよ」

 

 魔石は質が高いほど加工が難しくなる。

 だが、研究機関に売れば金になるハズだが──。

 

「売らないのか?」

「お金に困っていないから」

「……そうか」

 

 少しイラッとした。

 俺から金を巻き上げたくせに。

 

「なに怒っているのよ」

「金があるのなら、子どもから巻き上げるなよ」

 

 少し怒りを伝えてみた。

 ──これぐらいなら怒られないよな。


 チラッと彼女の方を見ながら警戒してみた。

 

「私以上にお金を持っているじゃない」

「あれは勇者を育てるための金だ」

 

 アイテムBOX内に入っている『スバルの遺産』。

 コイツの資産評価額は俺ですら分からない程だ。


「でも、他にもお金を稼ぐ手段はあるでしょ」

「……まあな」

 

 俺なら金を稼ぐだけなら簡単だ。

 例えば、シルヴィアがくれるっていう魔石を加工しするだけでも一財産を作れる。

 

 だが──。

 

「今は、普通でいたいんだよ」

「そう」

 

 そんな会話をしながら、俺はテーブルの上に置かれた魔石の選別を開始した。

 魔導具に加工したいので、魔法のプロフェッショナルである彼女の意見が欲しかったからだ。

 

 うん?

 

 俺が魔石を整理していると、他の物と少し違う魔石があった。

 その魔石を手に持って観察してみると、その正体に気付いた俺は声を張り上げそうになる。

 

 なんと、最上級の魔石だった。

 

 (これだけで、貢いだ金の数百倍あるぞ)

 

 こっそり持って帰ろうとしたが、それは人間としてダメな気がした。

 だが、この事実を伝えたら手にした魔石を取り上げられるんじゃないか?

 

 そんな事を思い悩みながら、魔石とシルヴィアの顔を交互に見比べた。

 

「なに?」

「…………」

 

 言うべきか、言わざるべきか?

 悩んだ末、伝えてみることにした。

 

「シ、シルヴィアお姉さま。これも頂いてよろしいのでしょうか?」

「……わかりやすい反応をするわね」

 

 お姉さまは、少し引き気味だ。

 俺なりに精一杯に愛想を振りまいたつもりだったが、やりすぎたかもしれない。

 

「昔なら、こっそり懐にしまったのにね」

 

 俺の反応が望んでいた物とは違ったのだろう。

 シルヴィアの目に憂いがうかんでいる。

 

 薄々は感じていた。

 コイツはスバルとして俺に接している。

 

 だから、こっそり懐にしまわなかったのが悲しかったのだろ──?

 

「こっそり懐にしまった覚えなんかないぞ!」

「あれ?」

 

 とぼけやがった。それとも素なのか!

 ひょっとしたら、バカに関しては俺を上回っているんじゃないだろうか?

 

 だが、魔石をくれると言ってくれているのだから、これ以上刺激したくはない。

 やっぱりダメとか言われそうだからな。

 

「とにかく、貰っていいんだな」

「使い道は……あるけど、持って行っていいわよ」

 

 俺は彼女の気が変わらないうちに魔石を持って帰ることにした。

 

 ………

 ……

 …

 

 その日の夜、俺は悪夢にうなされた。

 優しくされることがストレスになることもあるんだな。

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