表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

階段から転校生突き落とした犯人にされかけましたが……

作者: 七壱ハチ

さらっと書いたので暇つぶしにさらっと読んで下さい。

私は今、あらぬ罪を着せられて、五人の男に囲まれていた。

「階段から突き落とすというのはやりすぎだろう」

「まったく、あなたは何をやっているんですか」

「ちょーっとオイタが過ぎたよね」

「暴力、よくない」

「お前が何か起こすと俺の査定に響くんだぞ」

上から

俺様生徒会長、一之瀬(いちのせ)(たまき)

敬語腹黒副会長、二井見(にいみ)(りょう)

チャラ男会計、三橋(みはし)(ゆう)

寡黙書記、四谷(よつや)(しん)

ホスト教師、百瀬(ももせ)(あきら)の言葉である。

て、おい最後。担任よ、お前だけ言ってること違うぞ。

せめて、教師らしく私を諌める言葉とか被害者(仮)を慰める言葉とかあるだろ。


「何度も言うように、私には覚えがありません。どなたかと勘違いなさっているのでは?」

まあ、私はやってないからどんな言葉を言われても心に響かないけどね。


私こと七宮(ななみや)薫子(かおるこ)は、昼休みにちょっと顔のかわいい勘違いぶりっこ女千崎(せんざき)美姫(みき)を階段から突き落としたらしい。

確かに私はぶりっこ女が嫌いだ。

だが、校内女子のほとんどが彼女のことが嫌いである。

なぜなら、この学院に約一ヶ月前転校してきて、初日から生徒会役員に付きまとっていたからだ。

休み時間や放課後に学院の人気者である男五人に言い寄る女なんて嫌われて当然だろう。

しかも、私の場合は婚約者が付きまとわれていたのだ。

気に入らないに決まってる。

でも、私は階段から突き落とすなんてしてない。

お友達とご飯食べたりおしゃべりしたりしていただけなのでまったく関係がないのだ。

それなのに、何故か五限と六限の間の短い休み時間に瞬く間に噂が広がり生徒会室に呼び出しを受けてしまった。


友達とずっといましたよと言っても、トイレに行くといって少しの時間一人になったのは分かっている。その時にやったんだろうと言われ、

私がそんな簡単に足の付きそうな頭の悪いことするわけないと言ってみても、少し考えてくれたものの、衝動的犯行や私らしくないやり方で犯人だと思われないようにしようとしたことも考えられると反論された。


もうどうしようかなと頭を回転させていると、今まで怯えるふりやら泣いたふりに忙しそうだったぶりっこ女が口を開いた。

きっと自分が話の中心じゃなくなって、焦ったんだろうけど焦ると事はうまく運ばないよね。

「七宮先輩はぁ、環先輩が好きでぇ環先輩の近くに居てぇ仲良くしてる私がぁ邪魔だって押してきたんですぅ。本当はぁ階段から突き落とすつもりなんてなかったはずだからぁあんまりぃ責めないであげてくださぁい」


一瞬にして静寂が訪れた。


「すまない、勘違いしていたようだ」

いち早く、理解したのは一之瀬先輩。さすが生徒会長。その次に続いたのは二井見先輩。

「申し訳ありません、調査不足ですね」

本当に、もうちょっとちゃんと調べてくれたらよかったですよね。

「七宮ちゃんごめんねぇ」

貸しにしといてあげるわよ、三橋。

「ごめん、薫子」

分かってくれたら、それで良いの。

「まあ、こういうのは日ごろの行いが物を言うからな。ドンマイ七宮」

何がドンマイだ。謝れよ百瀬。

他の人には気にしてませんからと言う顔で返事をしたが、担任だけはキッと睨んでおいた。

ふふんって馬鹿にした笑顔返された。イラッとする。

後で変な趣味捏造してクラスの皆に広めてやるからね。


「百瀬先生の言うとおり、七宮さんは日頃から真に近づく女性に牽制してましたからね。今回もそうと思ってしまいました」

二井見先輩が百瀬に同意しただと!?

「牽制と言うような生易しいものだったか?」

「二人くらい再起不能だな」

「七宮ちゃん、四谷が絡むと過激だからねー」

一之瀬先輩、百瀬先生、三橋もかぶせて私のことを批判してくるけど、あれは相手のほうが悪くて私は正当な制裁をしただけですから。


「え? えぇ? どういうこと?」


ぶりっこ女が事態を理解できずに、みんなの様子を見て目を丸くしていた。

ああ、まだ居たわね。そういえば。

「どうしてそう思ったのか知りませんけど、私は一之瀬先輩なんて好きではありません。俺様とかないわぁ」

「おい、好きではないのは知ってるし俺もお前など好きではないが、言い方をどうにかできないのか。後半悪口だろ」

一之瀬が文句を言ってくるけど、他にどんな言い方が?

もしかして、本音漏れてたかな。

「俺様ないわぁって会長にそんなこと言える女子七宮ちゃんくらいだよねぇ」

三橋の言葉にばっちり本音が漏れていたことを知る。

いけない、気をつけなきゃ。

「環、いちいち突っかかっていたら話が進みませんよ」

「そうだな……おい、転校生」

「はぁい」

ここに来てもまだ媚びたような態度と話し方が崩れない。

ある意味すごいわね。

「七宮が俺を好きと言うのは絶対にありえない。なぜなら、四谷と婚約しているからな」

「環先輩の婚約者なんじゃ」

「違う、僕の」

「きゃーー、真君すてきー」

「七宮黙れ」

一之瀬先輩が睨んできたけど、しょうがないじゃない。

真君は一言一言発する言葉が輝くように素敵なんだから。

しかも、私のことを、僕のって、僕のって言ってくれた。

これが叫ばずにいられようか。否に決まってる。

「もう格好良すぎて、黙るとか無理です!」

「真、静かにさせて下さい」

「薫子しー」

人差し指唇に当ててる。かわいい。真君かわいい。

つられて私も同じように人差し指を唇に当てて頷いた。

真君がそういうなら黙ってますよ。


「しかし不思議ですね。千崎さんは環にも真にもつきまとっていたでしょう? 気がつかなかったんですか?」

こういう人は自分の都合の良い事しか目に入らないからなぁ。

「そうだよねぇ。七宮ちゃんと真は毎日いちゃいちゃしてたから、間違いようがないと思うけど」

きっと、思い込みだよね。怖いよね、思い込み。

「どちらにしろ、都合が良いことになった。七宮が千崎突き落としたなら問題だが、千崎が嘘をついて七宮を嵌めようとしていたなら、千崎を退学させれば良いだけだからな」

一之瀬先輩の目がきらりと光った気がした。

ぶりっこ女に付きまとわれて最近疲れてたからな。やっと片付くと思って生き生きしてる。

「どうして退学なんですかぁ? 確かに美姫はちょっと聞き間違いしちゃいましたけどぉ、七宮先輩にぃ階段から突き落とされたんですぅ」

「往生際が悪い。この状況で七宮がお前を突き落としたと思う奴はいないだろう」

「私を信じて下さい、環せんぱぁい」

「俺を名前で呼ぶな。前から注意しているが、いつになったら覚えられるんだ。まあ、もう会うこともないから関係ないがな」

「涼せんぱ」

「私のことも名前で呼ばないでいただけますか。誰かに親しいと勘違いされたらたまりません。あと、口を開くのも必要最低限にして頂きたい。あなたの声を聞いていると気分が悪くなるので」

ばっさりいったな二井見先輩、グッジョブ。さすが鬼畜眼鏡。

「優先輩助けてぇ」

「は? 無理。俺、君のこと嫌いだから。君が生徒会メンバーに付きまとってきて、他の人に言ってない自分しか知らないことを知ってるような口ぶりだから、何を考えてるのか探るために相手してあげただけだし。仲良いとか勘違いしないでくんない?」

三橋は一之瀬より疲れてたからね。この件が片付いたらゆっくり休んだら良いよ。

ぶりっこ女は真君のほうにも視線を寄越したが、隣にいる私の眼力に恐れをなしたのかすぐに目を逸らし、担任のほうにいった。

「晶せんせぇ、皆が美姫に酷いこと言うんですぅ」

「こんだけ近くにいるんだから、どんなこと話してたかは聞こえてる。生徒会の連中は酷いことを言ってないし、七宮も今回は悪くない。千崎が悪い。お前は退学。以上」


百瀬の言葉を聞くとぶりっこ女の様子が、おかしくなった。

いや、最初からおかしい奴だったけど雰囲気ががらりと変わった。

「ははは。あはははははははは」

え、笑った。気持ちわるっ

「何よこれ、バグなの?」

「何を可笑しなことを言っている」

「可笑しいのはあなた達でしょ。ヒロインである私を何で愛さないのよ! 何でちやほやしないのよ! あんた達攻略対象でしょ! 美姫の王子様なのに美姫のこと大事にしないなんて可笑しいわよ!!」

「攻略対象とはどういう意味ですか?」

「恋愛ゲームの中のプレイヤーが落すことの出来るキャラクターのことですね」

「七宮ちゃん、副会長はそういうことを聞いてるんじゃないと思うよ」

「そこ! 何話してるのよ! 美姫の話を聞きなさいよ! 美姫の王子様のクセにライバルキャラと楽しそうにしてるんじゃないわよ!」

「千崎、頭大丈夫か?」

担任の言葉にそれだ! と思い話をあわせる。

「まあ、もしかして頭の病気なの?」

「いえ、精神病かもしれません」

「療養に専念するべきだな」

二井見先輩も、一之瀬先輩ものった!

「病気だったの? 病院いったほうが良い」

真君は本気でぶりっこ女の事心配してる。優しい。素敵。

「俺、医務室の先生呼んできまーす」

三橋が走っていく姿を見て思った。

ああ、終わった。

癒し系保険医に見せかけた八十島(やそじま)先生は二井見先輩の親戚だけあって結構なドSである。普段はうまく隠しているけれど、敵を追い詰める時の容赦のなさは一級品。二井見先輩が手放しで褒めるほど素晴らしい。

学校では話題になっていなかったけど、八十島先生もぶりっこ女に付きまとわれてたからね。

鬱憤を溜め込んでいるので嬉々として、良い病院を選んでくれるだろう。一生出てこれないような良いところを、ね。


さあ、話も終わったことだし、クラスの子たちに先生の噂でも流しておこうか。

問題は、B専、デブ専、SM趣味どれを流すかと言うことね。

いっそ全部流してみようか。


「そうだ、七宮」

呼び止められて振り返ってみるとやたら迫力のある笑顔をした担任がいた。

「変なことすんなよ」

先生の後ろに般若が見える気がする。

あの、先生、もしかして心が読めたりします?

イラッとしたからって余計なことをするのはやめておこう。


引きつった笑顔ではいと返して失礼しますと即効帰った。

担任こわー。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ