助け舟
逃げ出したい衝動に駆られるが 動けない
脚が竦んでいやがるんだ どうしようもない
仕様がないか どうせ逃げれない
その時一つの足音が割り込んできた
「何かお悩み? 相談のろうか? それともお邪魔かい?」
知ったことじゃない 分かるわけない さっさと失せろ
「威勢がいいな それでも声が震えてるぞ?」
アンタには関係ない 偽善をばら撒くアンタには
「偽善も貫きゃ善になる しっかりこっちを見ろよ」
やはりアンタは偽善面 もうほっといてくれ
「オマエの瞳は悲しい色だ」
そんなの見えない だから関係ない
「あっそ せっかくの助け舟 蹴るんだな?」
助け舟? 泥船にも見えはしない
「お酷い言葉有り難う じゃあさっさと消えてやる」
そうしてくれ そうしてくれたら 助かる
沈黙する空間 小汚い雑音 一つ前の口論
「おい!」 返事はない 「居るんだろう?」 気配もない
でも信じたくて 声が嗄れるまで叫び続けた
呼び続けた 泥船を 助け舟を
返事の代わりに孤独が近寄る 何故だ? どうしてだ? 今まで一人だったのに
何だ? これは? 知るか! 捨てたモノだ!
孤独 それは追い出した 孤高 そう思い込んだ
刻まれた傷に後悔が沁みる 黒い黒い傷だ 明かりを入れたかった
もう機会はない 逃した 拒否した もう黒いままだ
変わらない 逃げれない 濃さが増す
暗い夜道 囲むは空白 砂利が脚を飲み込む
重い 痛い 暗い 待っても 待っても
光は見えてこない アイツが戻って来なければ
そうか 本当にそうか? そうなのか? 待つだけか?
そうじゃない! それでは太陽は出てきやしない
埋まった脚外に出し 叫んだ
「助け舟! 追いついてやる!」
歩き始めた 泥船に 助け船に