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作者: 安拓

 実家に帰ると一年前に亡くなったおばあちゃんを思い出す。私はおばあちゃんっ子で、幼い頃からおばあちゃんと私は親友のように仲良しだった。ところが一年前、おばあちゃんは死んでしまった。私の目の前で苦しむおばあちゃんは、私の目の前で息をひきとった。

 現在私は地元の私立大学に通っている。友達にも恵まれ、成績も悪くはない。一見順風満帆な大学生活を送っていると周りからは見えるだろう。しかしおばあちゃんが死んでから、私はどこか変わってしまった。

 授業終わり、いつもの喫茶店でマルボロをふかす。口に苦みとほんのりした甘みが広がる。そしてコーヒーを一口。相性は抜群だ。雑誌をめくりながら外の風景に目を向ける。

「雪か」

 初雪に心躍りながらも、そんな子供じみた自分に少し笑みがこぼれた。目の前の駐車場では子供たちが初雪に大はしゃぎしている。近くでは年老いたおばあちゃんが満面の笑みを浮かべていた。

 私の朝の習慣。タバコを一本、顔を洗い、歯を磨く。そして髪をとき、洋服に着替えて家を出る。朝の支度に十五分もかからない。学校の用意は前日にするし、朝食は食べない。学校までは十分ってところだ。今日の一限は生態学。続いて英語。二限で終わるので少しうれしい。部屋を出ると、朝日が異様に眩しかった。わずかに積もった雪に反射した光は、この世界を美しく照らしていた。小鳥が気持よさそうに鳴いていた。

 教室に着いた私に気付いた親友の理沙が、こっちこっちと手を振っていた。私は笑顔で近づく。

「理沙おはよー」

 理沙の髪型がいつもと違う。どうやらパーマをかけたらしい。すごく似あっていた。

「おはよー美紀。どお・・・?」

 照れくさそうにえくぼをくぼます理沙。このえくぼと八重歯で、男達は皆イチコロである。

「すごく似合ってる。何?好きな人でもできた?」

「ううん、前からかけてみたかったんだ。あーうちも恋したいよ」

 理沙とは学部が同じで、入学当初から気の合う仲だ。私は活発な女の子が苦手で、大人しい子とつるむ傾向にある。この理沙も後者のほうで、気を使わず一緒にいれる。

「そういえば美紀、隆さんとは最近どう?」

「今週の日曜日にご飯食べにいくんだけど、あんまり乗り気じゃないんだよね。理沙も一緒に行こうよ?」

「ごめん、日曜はバイトがある」

 やけににやにやしている。隆さんはバイト先の先輩で、年は私よりニつ上の二十二歳である。私に好意があることは一目瞭然で、さすがに四回目の食事の誘いは断れなかった。でもまあおごってくれるっていうし、悪い人ではないので友人として誘いに乗った。自分で言うのはなんだが、私も理沙と同じでよくモテる。現在私はファーストフード店で平日週二でバイトしているのだが、先週もラブレターをお客さんから頂いた。理沙と私はよく対比され、一言でいうと理沙がキュート、私がクールといったところだ。

 一限目の生態学の授業が終わり、二限目の英語も終わり、二人で学食へ向かった。やはり外は寒い。外へ出ると吐く息が白くなり、二人はうれしそうに自分の息を見せ合った。学食に着き、二人は期間限定のデミグラスオムライスを注文して食べた。室内ではクリスマスソングが流れていた。


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