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君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
8/26

お宝と無賃乗船者

レアンの体を探すため、一行は第三大陸行きを一時中断し

情報を集めることにした。

しかし情報といっても何について訊いて回ればいいのか

状態の良い死体についてか、

カリウの持っていた物より魂を移すのに適した

重厚な造りの容器についてか…

どちらにせよそんなことを聞けば変な顔をされて

追い返されるのがオチだ。

話し合いの結果、トトの任務を果たすため一度、

第一大陸ヴァレーン王国に戻ることにした。



―――8話―――


アレンたちが船に戻るとそこには見慣れぬ客人がいた。

パサついた銀髪を乱暴に後ろでまとめた青年。

頬に傷のある彼は自らをトレジャーハンターだと名乗った。

「怪しい者じゃありません!集めたお宝を売りに

別大陸へ行くのにちょっと船に乗せてもらおうと

思っただけなんです!!」

「十分あやしいわ!この無賃乗船者が!!」

そう言って喚く客人を縛り上げるマオはどこか嬉々としている。

「あぁっ!!そんな名前で呼ばないで!!僕はリク!

リク・ウィノス!!ばれたからには航海中のただ働き、

喜んでさせていただきますから!!」

そんな主張をされても、穏やかな海の旅、

最大乗客数10名というこの船で仕事という仕事など特にない。

マオは少し考えてから、こう提案した。

「あんたが持ってるその宝、どれか一つを

乗船賃として寄こすって言うのはどう?」

珍しいもの好きのマオが、先程からずっと気にしていたのは、

青年の持つサンタのように大きな袋だったのだ。

「ええっ!?困るよ、これは一つ一つ自分の足で見つけた

大切な商品でこれからの活動資金、ただであげるわけには」

「ただじゃない。乗船料だ」

傍で腕を組み、不機嫌そうな表情のトトが発言をするなり

目を輝かせたヨウが袋を取り上げ中身を物色し始める。

「じょ!乗船料を取るなら目的地まで送ってくれなきゃ

フェアじゃないよ!」

「目的地!?図々しいぞ、お前」

早くこの色者集団から離脱したいトトにとって、

ヴィレーンに向かっているこの船の進路を

変えようとする声など聞きたくないのだ。

「安心しな、トトをヴィレーンに送り届けるのがまず最初だ」

マオがそう言うと安心したのか、甲板に出て行くトト。

「で?目的地ってどこ?場合によっては送ってやってもいい」

「くっ…そこまでして俺の商品に手をつけたいわけか!!」

リクは物凄く不満そうだが、

マオにガッチリ縛りあげられ、喚くしか出来ない。

ヨウは話を無視して袋を漁り、

気になったらしいアレンもそれに参加する。

「ああっ!乱暴に扱わないで!!中身はどれも

世界に二つとない貴重品なんだから」

「で?どこに行きたい?」

「ネモン島…」

「ネモン?あの金持ちしか住んでないって噂の?」

「お宝を高く買ってくれるって話だからさ」

世界地図を広げ、確認するマオ。

「幻覚の海…ふふふ、面白そう、いいだろう」

「え!?マジ!?」

あっさりと出たマオの許可にリクは目を輝かせる。

が、忘れていないだろうなと、マオは人差し指を立て言った。

「もちろんだ!ヨウ!その中で一番高そうな奴を選びな!!」

「ええええ!!?ちょっと!!」

止めに入りたくても体の自由が効かないリクは

イモムシのような動きで抗議する。

「これなんてどうかな!!」

ヨウが取り出したのはアンティーク調の人形。

20㎝ほどの背丈に丁寧な着彩、装飾が施されている。

「ほう、なかなか高く売れそうじゃないか」

「やめて!!それ予約済み商品だから!!

もう売る相手決まってるから!!」

「うーんじゃぁ…」

残念そうに袋に戻そうとするヨウに、

一人紅茶を楽しんでいたカリウが口を挟む。

「それだけ精巧な作りの人形であれば

レアンさんの魂の容れ物として使えそうですね」

「えっ」

ヨウは人形を袋に戻そうとしていた手を止め、

再びまじまじと観察を始める。

「何したいのか知らんけどその人形だけは勘弁してくれ!!」

「無賃乗船者がいちいち喚くな」

「やだっやだーっ!!」

一緒に人形を眺めていたアレンがふと疑問を口にする。

「もしかして、この人形に魂入れたら…動き出したりする?」

「可能でしょう」

こともなげに答えるカリウ。

アレンは一人それを想像して「こわっ」と一言。

ヨウが人形を持ってカリウのそばに移動すると、

加えて質問する。

「…しゃべるのは?」

「口が開く作りではないので無理ですね」

「そっか…」

「だから怖いって!!」

一向に人形を離してくれないヨウに

リクは一際声を上げて抗議する。

「人形がいいならもっといいやつ紹介するから!!

それは契約済みなの!!返してよ!!」

「もっと良いやつって?」

その話に食いついたのはマオだった。

「僕が行きたいっ言ってるネモン島に博物館があるんだ!

そこにもっと大きい、本物の女の子が寝てるんじゃないか

ってぐらい精巧な作りの人形がいるんだよ!!」

「博物館じゃ手に入れられないだろうが」

ため息をつくマオを遮るようにしてリクは続ける。

「いや!!それが驚き、博物館はその人形を

条件を満たした人に無償で譲るって説明してるらしいんだ!!」

「条件?」

ヨウもリクの話に興味を示し始める。

「僕たちトレジャーハンターの間では噂になってるんだ

条件が全然わからないって!!」

「全然使えない奴だな…」

聞いて損したと言わんばかりのマオ。

「でも、行ってみる価値はあるんじゃない?」

ヨウとしては何でも片っ端から試したい気分なのだろう。

アレンはどんなを想像したのか「人形はちょっと…」と溢す。

「死体とどっちがいい?」

「……人形でお願いします」

ヨウとアレンの間でも結論が出たらしい。

「しゃあない、そこに行くか」

マオも承諾するとリクが身を乗り出す。

「じゃあ乗船料はいまの情報でチャラってことに」

「なりません」

すっぱりと切られて、そんなぁ、と肩を落とすリク。

「予約商品じゃないのにしてあげるから」

そう言われて納得できるものでも無いらしい。

乗る船を間違えたと言いたげに落ち込むリクを無視して

船は第一大陸に向け出航した。



――――――


ヴァレーン城下町西の港

トトと初めに出会った国有の港に船をつけ、

一行は彼を見送ることにした。

「では、私も何か有益な情報が入ったら伝えよう」

「よろしく頼むよ」

国に戻ればトトはそれなりに地位のある騎士。

上流階級だけに流れる噂も集められるだろう。

なかなか頼もしいことだ。

「その密航者はどうする?」

もしよければ国で捕らえておこうかと提案するトトに

マオは首を横に振った。

「ああ、こいつは宝の売上1割を払ってくれる約束だから、

もううちのお客様ってことで、ネモンまで送り届けるよ」

ぐいっと肩を組んでみせる

「うぅ…なんでこんな…」

そういうことならとトトはリクから視線を外す。

「だがここからネモンへの直線上には

船乗りたちが恐れているらしい幻覚の霧地帯らしい

やはり迂回した方が…」

「心配してくれるのかい?うれしいなぁ」

「…」

「行ってみなきゃ分からない!!

冒険には多少の危険は付き物!だろ?」

レアンの魂の消耗を考えれば

最短ルートで行きたい気持ちも分かるが、

マオの好奇心に満ちた瞳は、自己満足のためだと主張している。

トトは一つため息をつくとヴァレーン式の敬礼をした。

「では。私はここで失礼する。」

「ああ!王様への報告頑張って―な!」

歩き出すトトに手を振るマオ。

それに続くようにアレンやヨウも口々に言葉を投げる。

「じゃあなーまた色々話聞かせてくれよなー」

「次会うまでには目ぐらい合わせられるようにしとくよー」

トトは一つ笑うと踵を返し城の方へと向かう。

マオは振っていた手を下ろすとアレンたちの方へ向き直った。


「では、出発いたしますか!幻覚の霧へ!!」


「ネモン島へ、な?」



船は一行を乗せ、東に進路を取った。

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