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君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
20/26

魂継ぎと脱走

「2重人格になるだけでは済まされないでしょう、奴らはミゼル様の中に居る人間の魂を心底憎んでいる」

「分離させた後あなたもろとも人間側を処分する気でいますよ」

「分離は私の願いでもありますが、あなたを殺されるのには反対です。術後ここを脱出する協力は致しましょう」

アレンがカリウの言葉を頭の中で反復させながら一つ目玉のロボットに連行され、部屋に入る。

そこにはカリウと、横たわる壮年のエルフがいる。

「来ましたか、では、ここへ」

エルフの横たわっている台座に似た、もう一つの空の台座へ誘導される。

その間のカリウはいつにもまして表情に乏しく、考えが読めない。

「カリウ、これが終わったら、本当に…」

言い終わる前に、一つ目玉のロボットに後ろから何かを押しあてられ、首元に痺れを感じて言葉を失う

「っ…」

「あなたには少しの間眠っていただきます。その間、色々な夢を見るかも知れませんが、安心してください。それらすべて。あなたの本当の記憶ですから」

「何いって…2重人…格に…な…るん…じゃ…」

意識が遠のき、あたりが真っ白になる。

そう言えば前に聞いた時、カリウが話してくれた。

魂継ぎを施した際、その対象と術者に共通の記憶があれば、無条件にそれが引き出されると。

この場合、自分と、今から自分の中に入ってくる魂の記憶だろうか、

それともミゼルという人物の…


ふと目の前に人影が見える。

酷く懐かしい気がするが、誰かはわからない。

髪が長くて、耳もすうっと伸びていて、ああ、そうだ、エルフだ。自分とは違う…

でも、それを差し置いても、変なやつだ。

いや、あいつにとってみれば変なのは俺の方なのかも知れない。

もっと知りたい…

始めて自分から興味を持ったもののことを…


―――15話―――


幼い子供が草むらの中を駆けて行く。

その先に佇む長髪の、エルフの青年がそれに気づき、振り返る。

「やぁ、また来たのかい」

「ここが一番落ち着ける場所だからね」

笑う青年の横に幼年は寝転ぶ。

青年が空を眺めながら風の流れを感じて目を細めていると

少しの間寝息を立てていた少年が起き上がり、服を払う。

「もう帰っちゃうのかい?」

「もうって、2時間も昼寝したら充分だろ?」

「そう…じゃあまたね」

小さく手を振る青年に、踵を返す少年。

走り出したのか、体は揺れ、気付くと目の前の灰色の壁が一方向に流れていくのが見える。

どうやら自分の体は一つ目玉のロボットにどこかへ運ばれているようだ。

揺れが酷く定まらない視線を何とか先導して走る人影に向ける。

「カっ…カリウっ!!」

「!やっと気がつきましたか!!しかしもうしばらく運ばれていてください」

「さっき見た夢は…!?本当の記憶って!?いろいろ聞きたいことが…!!」

「聞きたい事なら私も沢山あります。が、今は逃げることが先決です」

そう言ったカリウの息は大分上がっている。こんな風に走って大分経つのか、それとも…

「おまえ…術のあとで疲れてるんじゃ」

「そんなことを言っている場合では!!」

突如、通路進行方向に壁が現れ、塞がれてしまう。

同時に枝分かれになっていた横の道にも壁が出現する。

「カリウ、大人しくそいつを引き渡して、戻っておいでよ」

「だっ!!誰だ!!どこから…!?」

見えない声の主を探してあたりを見渡すアレン。

「ミゼル様に仕え続けることが君の願いじゃなかったのかい?」

「確かに、ミゼル様は何も知らない私に全てを与えてくれた。あの方のためなら何だってしよう。だがお前の言う事は聞かない!!」

「カリウ…!?」

カリウは声の主と面識があるのだろうか、

珍しく強い口調で言い切るその表情は嫌悪の色に染まっている。

「聞き分けのない奴だ、しょうがない。僕の試作品の遊び相手になってもらうよ」

進行方向を塞いでいた道が開いたかと思うと目の前に男女二人の人間が立っている。

両の耳あたりに尖った機械が付いていて、シルエット的にはエルフに見えなくもない。

「ベースは人間だから色々と脆いけど、結構弄ってあるから身体能力的には大分満足な作品なんだ」

そう姿を見せぬ声が言い切るのと同時に、目の前に立ちはだかる男は片手を上げる。

と、轟音と共に地面から無数の槍がカリウめがけて突き出てくる。

術だ!カリウはそれをかわしながらアレンに応戦するよう声をかける。

「えっ!!?ええ!?」

突然のことに戸惑うアレンを尻目に、カリウがロッドから電気の帯のようなものを出現させ、

突き出る槍にそれを被せて踏み台にし、真っ直ぐ術を使った男の方に跳ぶ。

それと同時に立ちはだかったもう一人の人間、剣を持った女がアレンめがけて駆け、振りかぶる。

慌てたアレンは一つ目玉のロボットから滑り落ち難を逃れたが、

金属のぶつかり合う音の後ロボットは煙を上げ、動かなくなった。

一方、勢いをつけて跳んだカリウが電撃を帯びたロッドで男の耳のあたりに付いた機械を破壊すると、

男はひどく狼狽し、声を上げる。

「なっ何だ!?やめろっ離せっうわぁぁぁっそんなことっ俺は!!俺ぁぁっ」

アレンが男の奇声に気を取られている後ろで、体勢を立て直した女が再び振りかぶる。

「アレン!!」

「はっ!!」

呼びかけの意味に気づき素早く身をかわす

「逃げますよ!!」

そう言って走り出したカリウに続く様にして、アレンは訊ねる。

「今のは何だ!?」

「あの二人もあなたの村を襲ったモノ達のように遠くからの命令で動いています。御装置を壊したので術を使ってくる方はもう戦えないでしょう」

その説明に姿の見えない声はため息を吐く。

「ああ、まったく、弱点が分かってる相手だとやっぱり駄目だなぁ…」

女は二人を追おうとするが、その足に錯乱した男がすがりつき、喚く。

「マリっここはどこだ!!どうなってるんだよ!!」

振り払おうとしても手を離さない男を見かねて指示を出していた声は新たな指令を出す。

「それは使い物にならない。始末しな」

声を聞いて女は男の真上から剣を突き立てた。

逃げながらも状況を把握したアレンが叫ぶ

「こんな所!早く出たいよ!!」

「まったく同感です」

別室で二人の様子を画面越しに観察していた声の主が席から立ち上がる

「はぁ、ホントに逃げられると思ってるのか、しょうがない…」


走っても走っても進んだ気がしない、繰り返される灰色、似たような道を、

迷うことなく先導していたカリウの体力の限界が来たのか、走る速度が落ちたてきた

と思った次の瞬間廊下に倒れこんでしまう

「カリウ!!」

「はぁっ…はっ…すみま…せん」

大分苦しそうな様子で、倒れこんだときの姿勢を直そうともせず、荒い息のまま話し始めるカリウ。

「こまで…くれば…つきあたり、右…二本十字路を過ぎたら左の部屋にある…」

「何説明始めてるんだよ!俺一人じゃ何も分からないんだって!!」

カリウを背負い言われた方向に再び走り出すアレン。

その背にゆられながら、息を整えるように言う。

「申…し訳…ありま…せん」

「謝るなよ、ここがやばいところだって分かった以上、カリウ一人置いていけないからな」

先程目の前に立ちはだかった二人組は、相手が使い物にならないと知るや、

何のためらいもなくその命を奪った。

「でも、どうして俺を逃がそうとしたんだ、それもミゼルって人の命令なのか?」

ミゼルのためなら何でもすると言ったカリウは、魂継ぎの術が済むなり、

その彼の元を離れてこうして逃亡の手助けをしてくれている。

そういう命令を受けたのだと納得するのが手っ取り早かった。

「ミゼル様は…もう一人の、人間の…魂との同居期間が長く、同化しかけていました…」

「同化?どっちかが消滅するんじゃないのか」

「普通ならそうなるんでしょうが…同化はむしろ、古来からある魂継ぎの…いえ、ですから、私に沢山のことを教えてくれたのは、ミゼル様であり、もう一人の、人間でもあるのです」

「よく分からないけど、命令じゃないんだな」

「はい…」

結局のところ、カリウはアレンのためなどではなく、

今体内に入っているらしいもう一つの魂のためにこうして動いているのだが、

誰かの命令に、全くわけのわからぬまま巻き込まれているよりは気分がましだった。

「この部屋か」

案内された部屋に入ると、中には沢山の使い方の分からない機械が並べられていた。

その中の一つに、随分と前に見た覚えのあるような光が渦を巻き、立ち上っている装置がある。

「ここで、行き先を、設定して…」

案内されるまま、カリウを光の渦の元に下ろし、指示に従って機械を操作していく。

光が強まり、渦の周りが早くなる

「どこに…設定したんですか」

そうカリウが聞くのは、アレンが指示とは違う操作を施したのを見止めたからだ。

「分からない…ただ、手が勝手に…」

光が二人を包み込むと部屋は無人になる。そこに現れた声の主は機械を一つ操作すると溜息を吐く

「なんでまたそんなところに…」


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