表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
14/26

瓦礫と第三大陸

ヨウの気功による治療術はアレンとレアンには効きません。今後作中でそれを明確に示す説明は出て来ないのでここにチラッと書いときます。

第三大陸へ続く山道。

天候は前訪れた時ほどではないが

防寒着が必要な程度には肌寒い。

「ここに来ると酷い怪我したの思い出しちゃうよ…」

そう言って震えるレアンの手を引きながらマオが説明を入れる。

「この地帯は野生生物の凶暴さが異常だからね…」

少し前を歩くヨウは「今度はうまくやるぞ」と

気合を入れてから二人を振り返る。

「安心して!レアンは私が守るから!!」

「う…うん」

そんなやりとりを呑気にやっていられるのも

先導するアレンとカリウが襲い来る魔物を

片づけてくれているからだ。

「にしても、カリウは憲兵で生計を立ててたんだっけ?

あんだけ強けりゃ引く手数多だろうな」

派手な術、その見事な威力に感心するようにマオは唸る。

「大したことはありません。何でも屋みたいなものでしたし」

そう言って返すカリウに、隙は見受けられない。

「でも、稼ぎ良かったんだろう?

悪いねぇ何か知らんけど付き合ってもらっちゃって」

「いえ、先に接触したのは私の方ですから。

こちらこそ貴女方が難なく受け入れてくれたお陰で

色々貴重な経験ができました」

「そうぉ?嬉しい事言ってくれるじゃないのー」

そう言うマオの後ろから今にも襲いかからん勢いで魔物が

大きく腕を振り上げる。

ヨウが対応しようと身構えるよりも早くアレンが回りこみ

無言のうちに魔物をなぎ倒す。

アレンが剣に付いた血を一振りして落とすのを

レアンが気まずそうな顔で見守っているのに気付く。

「大丈夫…?」

「えっ…あ、うん。アレンくんも強いんだなって…思って…」

そう言ってマオの影に隠れるレアン。

「そ、そうかな…」

感心されたと言うよりは、怯えられた気がしないでもない。

「わー、アレンが幼女に褒められて鼻の下伸ばしてる―」

「誰がっ!!」

ヨウにつつかれ、アレンが顔を赤くしながら反論するが

再び現れた魔物の群れにやり取りは中断される

「先程より数が多いです!」

緊張感のあるカリウの声が響き、ヨウの顔が若干こわばる。

敵の攻撃をかわしつつレアンの前に移動し

防御の体制を取るヨウ。

すかさず剣を振り、応戦するアレン。

全員一歩引くよう、カリウから声が掛かる。

「えっ!?」

次の瞬間周囲を取り囲んでいた魔物の群れが激しい炎に変わる。

燃え盛る魔物の群れを間近に見たアレンが

光と煙にやられた目をこすりながら言う

「…すごい」

「ここまで接近を許してしまったのでは全然ですよ」

カリウが首を横に振った。

それを見るレアンの顔はやはりどこか気まずそうだ。

カリウはレアンの様子など気にも留めずに先を促す。

「ここからは傾斜がきつく道も狭い。

それぞれ距離をあまり開けずに進みましょう」

「はーい」

ヨウは間延びした返事をしながらレアンの前に屈む

「そう言うわけだから、遠慮なく乗っかっちゃいな」

おんぶの申し出だろう。

後でばてても知らないぞと、マオは肩をすくめた。



―――14話―――


小さい崖を助けあいながら登り、敵を倒し、休憩を挟み、

気付けば一行の進む足元の雪が殆んど見えなくなっていた。

「第3大陸に近づいてるのに

さっきより暖かい気がする…不思議だな」

標高は高くなっているはずだが、

向かう方角の先は温暖な第一大陸だからかなと首をひねるヨウ。

「でもこんだけ道中険しけりゃ未だ未踏の地なのも頷けるよ…」

野宿ももう何日目になるだろう

戦闘能力のないマオはそのほとんどの荷物を任され

ほとほと疲れ果てていた。

もっとも、夜もろくろく寝ずに安全を確保している3人と役目を交代したいとは思わないが…

「…ここは…知ってる…」

森の中、ちらちらと地面に花が見え始めたあたりでレアンが呟いた。

「帰ってきた!」

そういって一人走り出すレアンをヨウは慌てて追いかける。

「まっ!待ってよ!!」

それを見たマオはことさら疲れを感じた。あれが若さだというのか…と。


走るレアンの息が上がる。

ふと森の切れ目が見えた。

村だ!

そう思って一息に走り抜けると、目の前に広がるのは焼き崩れた家の跡。


「…これが…アレンの言ってた…」

ついてきたヨウはその光景を見、立ち尽くした。

「…クラムくんっ!!」

再び駆け出そうとしたレアンの足が廃材に取られ、転ぶ。

「…ぅっ」

話に聞いてなんとなく想像するのと、実際に見るのとでは違う。

分かっていたはずなのに心が追い付かない…

後から着たアレンが手を差し伸べる。

「立てそう?」

「うん…」

手を取り、レアンが立ちあがるとアレンは全員の方に振り返り、言った。

「皆、ここがイメリナ村だよ。特に見るところもないけど、自由行動にしよう」

場違いな気がする言葉に、ヨウは思わず声を上げる。

「は…!?何言って」

「二人だけにしろってことだよ、察しな!!」

「お、おう」

マオにたしなめられてヨウが引っ込むと、カリウがふらりと歩き出しながら言った。

「では、見学させていただきましょうか」

マオも頷いてわざと明く声を作り、ヨウの手を引く。

「第3大陸人の私生活のヒント見つかると良いなー、ヨウ、ついて来な!」

荒れた広場にそれぞれが散らばるとアレンは視線を落とした。

「…じゃあ、行こうか」

「…うん」



最後にクラムと別れた場所、村の外れには、

あのとき空から降ってきた謎の塊が無数に残骸となって転がっていた。

「どうして…こんなことに」

「理由は分からない、突然こいつらが沢山降りて来て、家を荒らしたり、火をつけたり…」

足元に散らばる機械の塊を眺めながら言う。

「クラムは何も教えてくれなかった…ただ、逃げろ、としか」

比較的原形をとどめている塊も、今はぴくりとも動く気配はない。

少し歩いた先に、その残骸が集まって山のようになっている場所があった。

傍らにはクラムが使っていたと思われる剣が突き刺さっている。

「…この剣…使ってるの見たのは…最初で最後だった…」

アレンが引き抜くと、機械油に汚れてはいるが、ところどころ、まだ白く、まばゆい煌めきを保っている

「稽古の相手をしてくれるのはいつもデルクで、クラムは俺が剣遊びに夢中になるの、むしろ嫌そうにしてたな…」

レアンがアレンの持つ剣に手を伸ばすので、アレンは柄の方を差し出す。

レアンは受け取ったように見えたが、とり落してしまう。

「っ…!!」

「…大丈夫か?」

落とした剣を拾い上げ、レアンの顔を覗き込もうとすると、レアンは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

剣がぼんやりと光を発する。

カリウの、魂継ぎの術で見たものとよく似た光。

「君は信じてるなんて言って、本当は事実を受け止めるのが怖いだけなんだろう!?」

「僕のやり方を否定しながら、本当のことを知れば僕と同じ事をしてしまう。それを認めたくないだけなんだ」

レアンの頭の中でクラムの声が響く

「レアン!?」

「ぁっアレンくん、助けっ」

頭を抱えていたレアンの手は首へ、胸へと向かい掻き毟るような仕草をする。

時折咳込みながら荒い息をつくレアンにアレンは戸惑う事しかできない。

そこで気付いた。レアンの体が大きくなっているのだ。

手足は伸び、髪もうねるように長く、長くなってゆく。

まるで10年分の成長を10秒で行っているかのように…

「なるほど、レアンさんの体はただ精巧に作られた人形ではなく、旧時代の技術の集大成。アンドロイドだったわけですか…」

いつからそこに居たのだろう、カリウは関心を示すように顎に手をやり、立っている。

「カリウ!!わけわからないこと言ってないで助けてくれ!レアンが!!」

アレンが声の方に顔を上げると、そこにはカリウの他に、見覚えのある一つ目玉の塊が数体。

それは周りに転がっているもの言わぬ塊とは違う。

数体の目玉がそれぞれにギロギロとあたりを見回している。

「どうしたんです?そんな青い顔をして」

「後ろ…」

「ああ、これですか、私のことを信用していない奴らがつけた監視ですよ。本当、迷惑しているんです」

「信用?監視?」

「けほっくるしっ…」

気付けばレアンは隣で震えている。いや、レアンなのか、一瞬戸惑う程にその姿は変わってしまった。

「それより!レアンが!!」

「しょうがないですね…」

カリウが何やら呪文を唱えるとレアンの周りで風が巻き起こる。

「きゃぁぁっ」

レアンの服がずたずたになり、さっきまで青い顔をしていたレアンがみるみる赤面する。

「情けない声を出さないでください。あなたの体が服に合わないぐらい大きくなったんですよ、新しい服でも見繕ってもらえばいい」

あまりのことに唖然と仕掛けたが、何とか非難の声を上げるアレン。

「おまえ、もう少しやり方ってのが!!」

「わかりませんね、こちらはもう待ちくたびれて気が立っているみたいなので、アレン、あなたに早急に決断していただきたいのです」

レアンのことはどうでもいい、とでも言いたげに、後ろの機械を指しながら話を進めるカリウ。

「決断?」

「以前私に何かお礼出来ることはないかと言っていたでしょう?それだと思って、あなた一人、私につて来てほしいのです」

「俺一人…なんで?」

「質問が多いですね…いやだと言っても、これらが少々強硬な手段を用いてあなたを連れて行くと思いますが」

自分を連れて行くと言ったのか、行き先など到底見当もつかないが、分かったことが一つある。

あの時、空から降ってきた一つ目玉も目的は同じ…自分自身だという事…

「私は穏便に済ませたい」

そのカリウの言葉に、アレンは頷かざるおえなかった。

「アレンくん…!?」

体を覆うには心もとない布きれをレアンは必死に抑えながら呼びとめる。

「レアン、ヨウ達には俺とカリウが少しの間別行動を取るって伝えておいてくれ」

「でもっ!!アレンくん!!」

レアンの呼び声に振り返らず、アレンがカリウの元に歩み寄ると、

一つ目玉の塊と共に光の粒子に包まれ、消えてしまった。


静けさを取り戻した森に風が吹き抜け、レアンはその冷たさに震えた。

騒ぎを聞きつけたのか、遠くからヨウが駆けてくる。

「何があった!!…って、レアン!?」

姿を認めるなり驚きの声を上げるヨウ。

慌てて自分の羽織っているものを一枚渡すと、レアンはそれを着るよりも先に訴えた。

「ヨウちゃん!大変なの!アレンくんが!!」


――――――


薄暗い部屋、椅子に凭れかかるやつれた長髪の男性に向ってカリウが語りかける

「ミゼル様、只今戻りました」

その声は、その表情は、アレンたちに今まで一度も見せたことが無いぐらい澄んでいて、まっすぐだった。


ここまでで全体の約半分ぐらいです。ありがとうございます。 

しかしR15の境界線がまるで分かりません、この先じわじわと表現がアレになって行く気がするので何か問題がありましたら教えてください。 

続きは明日10時予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ