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君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
13/26

星空と二人の見方

「お父様の意地悪!!」

「落ち着けレアン、一生だとは言ってないだろう、今だけ、今」

「バカ!バカ!」

レアンと呼ばれたその少女は

感情に任せて色々なものを投げる。

と、そのうちの一つが相手に当たってしまう。

「痛っ」

額を抑えてふらつく相手に少女はうろたえた。

「あっ、ごめんなさい、そんな、私お父様に当てるつもりは…」

「…人に当てるつもりが無いなら

そもそも物を投げちゃいけないよ、レアン」

「…アゼット…?」

少女は父と呼んだはずの人物の急な雰囲気の変貌に

戸惑いながらもなんとか順応しようとする。

「ラグリアに会いたがってくれるのはとても嬉しい。

でも今は村の外で愚かな人間たちが喧嘩をしていて

すごく危険なんだ。」

「でも…」

アゼットと呼んだ人物の、まっすぐな視線に、

少女は瞳を泳がせる。

「お父さんはその喧嘩にエルフの皆が巻き込まれないよう

頑張っているだろ?レアンちゃんも、協力してあげないと…」

「ラグリアには、いつ会えるの?」

不安げな少女を安心させるように、髪をなでながら男は言う。

「喧嘩が終われば…いつでも会えるようになる」

「…」

喧嘩は少女にとって、すぐに終わるものなのかも知れない。

でも、あの子にとっては…?


―――13話―――


「レアン」

「…?」

名前を呼ばれて目を開けるとそこは船の一室。

マオがレアンにと一部屋与えてくれたのだ。

「寝てたのか、ごめん」

扉を開けたものの入るべきか悩む青年の姿を確認しながら

レアンは先程まで見ていた夢を思い返しつつ訊ねる。

「どうしたの?アレンくん…」

「いや、少し、話をしようと思って…」

やや言い辛そうに語尾を濁すアレン。

「クラムくんのこと?」

「…あぁ」

言われてレアンは小さく頷くとベッドを降り、

歩き出すアレンに続いた。


若干肌寒い夜の甲板。空には一面、星が広がっている。

二人は適当な所に腰を下ろし、ポツリポツリと話をした。

「クラムくん本当に物知りで、

季節と星の位置とかいろいろ教えてくれたっけ」

村での思い出を笑いながら話すレアン。

潮風に揺れるその髪は長く、あの時ヨウが言っていた通り

展示されていた時の人形の姿より幾分か成長して見える。

見た目に反して喋る口取りがしっかりしているから

そう感じるのかもしれないと、

アレンは一人納得して空に視線をやった。

「ここからだと、大分星が遠く見えるな…」

そのかわり上方を阻む木々はなく

一面を空として見渡すことができる。

「うん。イメリナ村がなつかしいね…」

村を出てどれくらい経つのだろう。

毎日を退屈に感じていたあの頃が随分昔に感じる。

「レアン…村のことなんだけど…」

どう伝えていいものか、悩みながらも切り出すと、

レアンは寂しそうに笑って頷いた。

「もう…無くなっちゃったんでしょ?」

「え…?」

一体いつから知っていたのだろう、

どう伝えるべきか散々悩んだ自分は

何だったのかと眉をしかめるアレンに、

レアンは申し訳なさそうに続けた。

「ヨウちゃんの反応、分かりやすいからね。

なんとなくだけど…戻ってもそこは

私の知ってる村じゃないんだろうなってことは、分かる…」

それでもはっきりと伝えられたわけじゃないから、

事実を知るために戻りたい

その気持ちは今も変わらないと付け足しながら。

「アレンくんが戻るのに乗り気じゃないのは

クラムくんのこと、怖くなっちゃったからだってことも…」

そう言ってレアンに見つめられたアレンは

どこか居心地が悪そうな顔をして答えた。

「…何で、そんなこと」

その通りだけど、と殊更言葉を濁らせて言うアレンに、

レアンは思い返すように再び空を見、言った。

「私は…時々怖いなって思っていたから」

「なんでレアンが?」

言葉通りの疑問だった。

クラムはいつもレアンのことを気にかけ

アレンに小言を言っていた。

それは最後の時も同じだった。

村から出ないのはレアンの要望だと…

何故?何のために?

一体二人はどういう関係だったのだろう

考えれば考えるほど疑問は湧いて出た。

「だってクラムくん、アレンくんの話したがらなくて、

私達が同じ体使ってるの、無理やり割りきろうとしてる

ずっと気を使わせてるみたいで…いつも…

居心地悪く感じてたから…」

アレンが思う以上にレアンも二重人格で悩んでいたと知り

慌てて繕う言葉を探すアレン。

「俺は逆に、そんなことするとレアンが~って

よく説教されたから、クラムはレアンの事

すごく大事にしてるんだって、その…

クラムも怖いなんて思われるのは心外なんじゃないか?」

「そうなの!?むうぅ…そういうこと全然分かんないよ

隠し事ばっかりでさ」

クラムは大事な事は何も言わず、ただ平穏を与え続けた。

そんなクラムに対して多くの疑問を抱いているのは

アレンだけではなかったらしい。


「…俺は村から出るまで、

クラムが隠し事してるなんて考えもしなかったな…」

「出るまで?」

レアンはきょとんとしている。

確かに、あれから沸いて出た沢山の疑問は今さらなものだ。

クラム本人が居なくてどう答を見つけろと言うのか

「村を出るとき言われたんだ……お前に選択権はないって。

…最初は何言われたのかよくわかんなかったけど、

しばらくして、あいつにとって大事なのはレアンで、

今まで一緒にいた俺は…俺の事はどういうつもりで…

それから全然、クラムのこと、分かんなくなって…」

「アレンくん…」

心配そうに手を伸ばすレアン。

「一番近くにいて…一番わかりあえる相手だと思ってたのに」

それを払いのけるようにアレンは声を強めた。


「レアンって一体クラムの何なんだよ!?」


それが全てだった。

このところずっと、心の内のもやもやを作っているすべて


「…分からない」

差し伸べかけた手をゆっくりと戻しながら、

レアンは震えるように言った。

「私はただ、アレンくんの体を借りてる居候の身で…

クラムくんの気遣いが…無理してるのが…辛くて…ずっと」

「・・・?」

「ずっと、自分が消えちゃえばいいって思ってたのにっ」

そこまで言ってレアンは下唇を噛むようにして言葉を止め

立ち上がった。

次に何を言い出すのかと身構えるアレンを置いて

レアンは船室へ戻っていってしまう。

アレンはもちろんレアンも知らないのだ。

何故アレンの体に寄生するように生かされていたのか、

なぜクラムはレアンを気遣うのか、

その不明瞭さは居心地の悪さへと繋がり、

少女は今まで思いつめていた。


何故か可笑しくなって、アレンは肩を震わせた。

さっきの発言はまるで自分のことしか考えてない

八つ当たりだった。

見た目だけとはいえ、あんな小さい子供相手に…

いつぞや感じた年下慣れしていないという焦りからだろうか

それは違う。

あんな言い方をしても

レアン相手なら許される気がしたのだ…


気付くとアレンの後ろに誰かが立っていて、

片足で不機嫌を現すリズムをわざとらしく打ち鳴らしている。

「なんだよ」

「なんだよじゃない!」

ヨウだ。

振り返らずとも、声色からものすごく怒っているのが分かる。

「二人きりの大事な話だと思って聞かないようにしてたが、何だあの言い草は!!」

「きっ!?聞いてたのか!!?」

慌てて振り返るアレンに同じく

慌てて目を逸らすヨウ。

「いっ・・・一部だけ」

「なっ!!」

赤面しだすアレンに、

恥ずかしがってる場合じゃないだろと

突っ込みを入れるヨウ。

「今すぐレアンに謝って来い!!」

「はっ?」

何で謝らなくちゃいけないんだと言い出すより先に、

ヨウはアレンの腕を掴み、引っ張り上げた。

「男の嫉妬はみっともないぞ!

これから行く場所がどういう所か冷静に考えたら

不仲になってる場合じゃない事ぐらい分かるだろ!」

言いながらヨウはズイズイとアレンの背を押していく。

確かに。この先で待っている山道は危険そのものだし、

二人が何を思おうと村が惨劇に見舞われた事実はかわらない。


アレンはそのままレアンの部屋に押し込められ

扉が閉められてしまう。

レアンと目が合い、流れる沈黙。

気まずい空気。


「私たち…話してもクラムくんのこと

余計分からなくなるだけだったね」

先に口を開いたのはレアンだった。

「私が大事とか、全然…分からないよ…」

そういって瞳を伏せるレアンに

アレンは思い出したように言った。

「あの時、クラムに…伝言頼まれてたんだ」

「?」

「君の甘い賭けは当然のように外れたよって…」

「…」

「それ、どういう意味なんだ?」

レアンは今にも泣き出しそうな顔で首を横に振った。

「全然・・・やっぱり全然分からないよ!」

アレンが膝を折り、目線の高さを合わせると、

レアンはぽろぽろ瞳から水滴を溢れさせた。

「ごめん…本当、分からない事だらけだよな」

そう言ってゆっくり頭をなでる。

小さい頃、転んで怪我をして大泣きした時、

クラムにしてもらったように。

手の下の小さな頭から伝わる熱が、

先程地面に落ちた水滴が、

目の前にいるのは人形ではなく

人間だと伝えるようで…

本当に、分からない事だらけだった。


「クラムくんが悪いんだよ」

少し落ち着いたのか、レアンが拗ねるような口調で言う。

「こんなにわけ分からなくなってるのは、

クラムくんが色んなこと秘密にするからだもん…」

「本当にな…どんな意地悪だって思うよ…」

二人が目を見合わせると笑みがこぼれる。

「もう村がどうなってるとか、知らない!

戻ったら!真っ先に文句言ってやる!!」

頬を膨らめて言ってみせる強がり。

「あぁ、そうしよう。文句言いに、戻ろう」

アレンも大きく頷きながら合わせる。


今まで一番近くに居たにもかかわらず面識の無かった二人が、

今、ようやく知り合えた気がした。



マオ目線でアレンは少年だけど、現段階のレアン目線ではアレンは青年。文章にする時ちょっとだけ悩みます。

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