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君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
12/26

決意と置いてきぼり

術を終わらせるなり倒れこんだというカリウを探しに

屋敷内を走るアレンは突然大きく開かれたドアにぶつかった。

「な!!何をなさっているのですか!?」

アレンが思いっきりぶつけた頭を抱えて声の方を見ると、

水桶を持ったメイドが怒ったような、

申し訳ないような表情をして立っている。

「い…痛いけど、意識が飛ばない…」

「何をわけのわからないこと言って…

とにかく!廊下は走らないでください!!」

「ごめん…けどカリウは…?」

「お連れ様ならこの部屋です。

長旅の疲れもあるでしょうから今夜は泊って行けと

ご主人様からのお達しです。

そのままこの部屋を使ってください」

「あ…ありがとう」

「…ところで…あなたが出てきたということは、お人形さんは」

「あぁ、向こうで元気に動いてるよ」

「うごっ…何なんですかそれは!!」

廊下を走るなと自分で言っておきながら

慌てて掛けて行くメイドを尻目に、寝室に入る。

先ほどまでメイドが座っていたのであろう

ベッド横に配置された椅子に腰かけると、

アレンは眠るカリウを眺めた。

二重人格を治せるどころか人形に魂を入れてしまうとは、

外の世界には凄い奴がいるのだなと改めて感心する。

カリウは自身を記憶喪失だと言っていたが何者なのだろう?

通りすがりにアレンたちを助け、シャーマン、いや、

エルフの術を使う目の前の人物…

ふとクラムを思い出し、カリウの耳を見ようとすると、

手をはねのけられる。

「…なんだ、あなたでしたか」

一瞬、鋭く睨むような表情を見せたが、

すぐにそれは力のない笑顔に変わる。

「なんでこんな所にいるんですか?

レアンさんは?話はまだ済んでいないでしょう」

「…まぁそうなんだけど」

申し訳なさそうに目を泳がせるアレンに

カリウは一つ息をついて話す。

「私の心配なら要りません。魔力の消耗が過ぎただけですから」

「なんか、ありがとう。何かお礼とか、出来ることないか?」

アレンの申し出にきょとんとしながらも言葉を返す。

「あなたからそう申し出ていただけるのは大変ありがたいですが、話を逸らさないでください。」

この場所にアレン一人で来たということは

魂継ぎの術を済ませたばかりのレアンに碌な説明もせず

置いてきてしまったのだろう。

咎めるような目線を向られてアレンはうつむく。

「…無理なんだ」

「?」

「こう、別の体を持った状態で向き合って

改めて感じたんだ。俺とレアンは…今まで一度も面識が無い

赤の他人だって……」

それはしょうがないと、同情するかのような表情で

カリウは上半身を起こした。

「赤のってことは無いでしょう。

共通の知り合いはいるわけですし」

「確かに…訂正しよう。面識のない友達の友達だ」

ヨウやマオのように、自分が気絶している間だけでも

交流を持てていれば、もう少し伝えやすかっただろうか。

「だとしても…あんな小さい子供みたいな相手に、

伝えるのには気が引けるって言うか、その、

上手く言葉にできる自信が無いんだ」

「女々しいですね」

「何とでも言ってくれ」

子供相手では気が引けるといえば

レアンを気遣っての言葉に聞こえるが、

正確に言えば子供との接し方が分からないのだ。

村で一番子供だったのが自分なだけに

どうしていいかまったく分からず戸惑っている。

「言葉にするのが難しいなら、

自身の目で確認させればいいでしょう」

「え?」

「私が勝手にレアンさんの魂を瓶詰めにしたりしなければ、

あなた方は今頃第三大陸に居たのでしょう?」

それこそ気が引けるというものだ、

いきなり現実を叩きつけるのもそうだが、

第三大陸への山道の険しさといったら…

なんてそれも自分への逃げ口上なのだろうか

「随分浮かない顔ですね」

「そりゃ、何か恐ろしいことがあったって言う

漠然とした記憶と、…前も言ったとおり、

クラムが本当に考えてたこととか全然分からなくて」

口から出たのはレアンの事ではなく、アレン自身の悩み

情けない思いになりながらも言い切る。

「戻るのが…怖いんだ」

そんなアレンの様子に呆れるというよりは、

まるで関心でもしているかのような声色でカリウは答える。

「よくわからないものに対して悪い方へ予想を立て、

勝手に恐怖しているわけですか」

「…ごめん」

「別にいいでしょう、本当にそこに戻らなくても

道中で上手い言葉が見つかれば目的は果たせるわけですし」

「…」

目的、そう言われてアレンは考えた。

この道はヨウたちがレアンのために考えたものだ。

自分自身の目的はどこにあるのだろう?

そもそも村を出るきっかけがあんな事態でなければ、

当初の疑問だった、自分だけ速く流れる時間や

二重人格に説明がつき、そのうえ目の前の人物によって

普通の人間になれたのだ。

百点満点でもって目的達成されていると言って良い状態だ。

あくまで、きっかけがあんな事態でなければ…


その時、部屋の扉が開かれ、ヨウが入ってくる。

「アレン!カリウは?」

「カリウくん、大丈夫でしょうか」

ヨウの後ろからレアンも顔をのぞかせている。

「お気遣いありがとうございます。

そちらこそ、体の調子はいかがですか?」

「おかげさまで、とても良い感じです。」

くるりと回って微笑んでみせるレアン

「まあ、カリウも目覚めたわけだけど、

ここの御主人が今晩は泊めてくれるっていうし、

ゆっくりしましょ!タダ宿!!」

そういって豪快に笑うマオの横に立つメイドは

大層不満げな顔をしている。

「私は嫌なんですけどね…ご主人様の言う事は絶対ですから…

明日にはどこへなりとも行ってください!!」

「明日かー」

ヨウは軽く首を傾げながら聞いた。

「どうする?アレン」

言われてアレンは頷いた。

多少の気遅れはまだあるが、心は決まった。

「…村に…第三大陸に行こうと思う」

それを聞いてカリウは静かに目を伏せた。

「そうこなくっちゃ!!夢の新大陸!

バッチリ案内してもらうからね!!」

マオは再び好奇心に目を輝かせる。


「クラムくん…心配してるよね」

レアンのつぶやきにヨウが何か言いたげな顔をしたが、

アレンが遮った。

「…行けば分かるよ」

「うん」


――――――


翌日、船着き場まで屋敷の主人とメイドは見送りに来てくれた。

「ベラルドさん、本当にありがとうございます」

「何度も言うが、私は約束を果たしただけだよ」

アレンと主人が固く手を取り合う横で、レアンも頭を下げる。

「でも、ありがとうございます」

「いいんだよーレアンちゃん、目的が果たせたら

また遊びにおいでー、そして是非うちの娘に!!」

さっきの頼もしい表情とは打って変わって、

緩んだ顔でレアンと握手をする主人。

一行が船に乗り始めるとメイドは吐き捨てるように言った。

「私は反対ですからね、元家宝の人形とはいえ

中身はどこの馬の骨とも知らぬ…」

「おじさん!絶対待ってるからねー!!」

メイドの言葉を遮るように館の主が大きく手を振ると、

船が出港し始める。

「ありがとうございまーす!!考えておきまーす!!」

「ありがとうございましたー」

船の上からの声も半分に、メイドはため息をついた。

「はぁ、やっと騒がしいのが去ったわ」

「そういうな、たとえ家に娘が出来たとしても、

リリは私の大事なメイドだよ」

「…はいはい」


だんだん遠くなる船に向って全速力で駆けてくる青年がいる。

が、そのまま走って海に落ちてしまう。

「な、何を…」

その一連の動きを見てしまったメイドは驚きの声を上げた。

水面がら勢いよく顔を出し半ベソをかきながら叫ぶ青年。

「置いて行かれたー!!酷いよ!!あんまりだ!!」

リクだった。

島に着くなり別行動を取った彼は忘れられているのだろうか。

船はどんどん遠ざかって行き、見えなくなった。


続きは明日6時予定。若干ペースを落とします。

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