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君の心と廻る廻る形  作者: ほくる
11/26

約束と人形

キャラの大体の身長ですが、アレンは167(成長中)、ヨウは154、マオ161、リク175、カリウ170、今はいないですがトトは183、クラム172。そんな感じです。

船着場にいる品のよさそうな30代半ばの男性に

島の案内が書かれた冊子を渡された。

ここは目的地、ネモン島。

船を降りてまず一番に驚いたのは

入島料を一人ずつ払わされたこと。

島自体がアミューズメントパークだとでも言うのだろうか

「貧乏人が来て治安が悪くなるのを防ぎたいんだよ」

得意げに説明を入れるリクは

どこで調達しきたのか質の良い服に身を包んでいる。

「あんたそんな良さ気な服持ってたんだ」

呆れ声のマオに笑顔で商売道具ですからなどと答えるリク。

アレンは渡された冊子にある地図を開いた。

「博物館ってこれの事かな」

リクに尋ねるとお墨付きをもらえる。

大通りに面した大きな屋敷地帯の一件目

迷うことはなさそうだ。

「じゃあ、僕はお仕事ですので

ここらで別行動させていただきます」

一礼して一行から離れるリクに、

売れたらちゃんと1割払えよと、声かけを忘れないマオ。

「そうしたら帰りも送ってくれるんですよねー」

そう言いながら街の中に消えていくリクを眺めながら

ヨウは肩をすくめた。

「なんかいつの間にお互いやり取り慣れしたね…」

マオも合わせて肩をすくめる



―――10話―――


世界中から集められた珍しいものが展示されている博物館。

どれも非常に良い状態で保存・展示されている。

小さい物は大昔のお金から、大きいものは乗り物らしき塊まで、

その全てに屋敷の主人の丁寧な説明文が添えられている。

そう、ここは屋敷の主人の趣味、コレクションを

来た人に見せびらかしたいだけの建物なのだ。

展示物は年中常設のためか人の姿は殆んど無く

物静かな空間にヨウの声が響く。

「あった!!この博物館を建てた初代ベラルドが

ある女性から預かった人形!」

一行が集まるとそこには

3歳ぐらいに見える少女が横たわっている。

ヨウは引き続き添えられたキャプションを読み上げる。

「女性からの言伝で、ある条件を満たした者には

無償でこの人形をお譲りします。詳しくは当主まで、だって!」

リクの情報通りのことが書かれたキャプションだ。

マオは当主を探してあたりを見回す。

そこに一人のメイドが近づいてくる。

「博物館ではお静かにお願いします。

あまり煩いと退場してもらいますよ」

虫の居所が悪いのか、むっすりとした

そばかす顔のメイドが腕を組み、注意喚起する。

「私たち、この人形のことで御主人に用があるんだけど?」

マオの発言にメイドはやれやれというふうに両手を上げる。

「このキャプションのせいで

週にどれだけの人が主人を訪ねているかお分かりですか?」

「え?知らんけど」

目には目を、無礼には無礼をと言わんばかりに眼をつけるマオ

「私たち、この人形がどうしても必要なんだ」

レアンのためにと交渉に加勢するヨウ。

「必要な人がもらえるってわけじゃないんです!

少しは何度も呼び出される主人の身になってください!」

どうやらこのキャプションが原因で

度々屋敷の主人が客に呼び出されることが

このメイドの不機嫌の根源らしい。

不機嫌で対抗し合う女性陣に加わらず

静かに人形を眺めていたアレンが眉間に皺を寄せながら言う。

「でもさ…この人形で本当にいいのか?」

人形はリクに話を聞いて想像したよりはるかに小さい。

女の子というより幼児に見えるそれにアレンは引け腰になる。

「まったく問題ないでしょう。

リクさんが持っていた古物人形より遥かに適しています」

カリウの言葉が聞こえたのか、ヨウはより力をこめて

主人に会わせてくれと頼み込む。

騒ぎを聞きつけたのか、奥から壮年の男性が近づいてくる。

「何の御用ですかな?」

「あっ!ご主人様!!またこの人形のことで、

お客様がご主人様を…」

メイドが駆け寄って事情を説明しようとすると、

その男性はこちらを見、笑顔を見せた。

「私に用ですか、それはちょうどいい。

お話聞かせていただきましょう。

ここは博物館ですし、別室にて」

「そんな!ご主人様ぁ!!」

うろたえるメイドを気に留めず、

ついて来るように促す主人にマオは安堵のため息を漏らす。

「なんか、話ができそうな人でよかったな」

「うん」



――――――


応接室らしい部屋に通され、一行にはお茶が振舞われた。

客人が来る度に仕事が増えるのはメイドもなのだ。

彼女が一行を追い返そうとした気持ちも分かる。

しかしそんな心持ではメイド失格ではないのかという

突っ込みは他所に置き、

アレンたちは人形の使用目的を

出来る限り詳しく話して聞かせた。


「なんと!あなたはその術が使えるのか!

是非見せていただきたい!!」

主人が食いついたのは他でもない

カリウが使えるという魂継ぎの術だった。

「簡易容器に移した時とは勝手が違うので

一人で集中したいのですが…」

乗り出す主人に引き気味になるカリウ。

その肩をガッシリ掴んだマオが勝手に返答する。

「もちろん!お見せいたしましょう!」

「…」

何を勝手なことをと言いたげなカリウの耳元でマオは囁く

「我慢して、それで人形を譲ってくれるなら安いもんでしょ」

人の術を交渉の道具にしようというのか、

術能力と無縁な人間は身勝手だなと思っても口には出さず

ため息だけに止めるカリウ。

交渉は成立したと見て主人は手を打ち鳴らす。

「早速持って来させましょう。リリ!人形をここへ」

「しっ!!しかし!!」

「これはあの方との約束なのだ。

事実であれば渡すしかあるまい。さあ、持ってきなさい!」

「…はい」

メイドが渋々部屋を出ると主人は顔の前で手を組み、

アレンを見据える。

「あなた方の話通り、彼の術によって人形が動き出すなら、

私は喜んで人形をお譲りしよう。

動かなければあなた方には手を引いてもらう。よろしいかな?」

「はい」

順調に進みすぎる話に疑問の声を上げるマオ。

「結局、人形を譲る条件と言うのは…」

主人はにこやかに答えた。

「魂継ぎの術を使える術師がこの人形に女性の魂を移すこと。

それが条件だよ」

「それ…まるで私たちが来るのを知ってて付けたような条件だな」

「女性から人形を預かったのはこの屋敷の初代、

私は5代目で、もう何百年も前の話だから真相はわからんよ」

思い出話でもするかのように顎に手をやり、続ける。

「しかし、条件を公開すれば世界中の自称術師が集まり、

毎度儀式をするはめになるだろうと思ってな」

「それであんな書き方なんだ…」

極端に情報が足りていなかったキャプションに納得するヨウ。

しかしマオはまだ引っかかるという表情で小言をこぼす。

「でも、あの人形はこの博物館でも目玉展示でしょ?

そんなにあっさり渡す気になれる?ふつう」

「初代は女性から人形を任される代わりに

他にも様々な金品を譲り受けたんだ。

それのおかげで今の私の生活がある。

約束を守らなければ罰が当たるだろう?」

「罰ったって、その女の人はもう生きてないだろうに…

おじさんの代で該当者が現れて、損な気分じゃない?」

そうでもないといたずらっぽく笑う主人。

「私としては伝説の魂継ぎの儀が見られるというだけで、

もう興奮いっぱいだよ!」

魂継ぎの術を間近で見る気満々の主人と、

同じような顔をしてカリウの肩をたたくマオ。

「だってよ、頑張れ!」

「…貴方は部屋から出てもらいますけどね」

カリウは再びため息をついた。


――――――


「では、始めさせていただきます」

照明を落とした部屋の中

アレンとカリウが人形を挟んで立ち、

主人はやや離れた所で熱い視線を送っている。

部屋の外ではヨウ達が聞き耳でも立てているのだろうか、

そわそわとした雰囲気が壁越しに伝わって心地悪い。

アレンが瓶についたチェーンを人形の首に掛ける。

ぼんやりと輝く小瓶はカリウがロッドを振り上げると

呼応するように輝きを増す。

周囲に大仰な紋章が現れ、

浮かぶ文字のいくつかを指先で叩くようにして操るカリウ。

ふと、周囲がまばゆい光に包まれ、

どこからともなく声が聞こえる

『ラグリア、あなたラグリアなのね!?』

『ごめんなさい、こんなことになってしまって…』

『大変だ!施設が何者かに襲われて…』

『レアン……やっと見つけた…』

光が収まると同時に話し声も消える。

ロッド掲げたまま顔をしかめて制止しているカリウ

「大丈夫か?」

アレンが心配そうに声をかける。

「ええ」

一つ頷いて術を続けるカリウ。

光の文字が少女の体へと吸い込まれていき、

レアンの魂が入っていた容器がひび割れ輝きをなくすと

カリウは手を下ろすとアレンの呼びかけに振り返ること無く

無言のまま部屋を出て行った。

ワクワク顔の主人と二人、

部屋に取り残されたアレンは人形の方に向き直る。

横たわっていたそれが身じろぎして目を覚ます。

「ここは…?」

言葉は間違いなく人形から発せられた。

「おお!術は成功したのか!?」

部屋の隅にいた主人が駆け寄ってくる。

人形はアレンと目が合うとぎこちない動きで手を伸ばす。

「そこにいるのは…私?」

「レアン…」

名前を呼んでやると人形は納得したように数度瞬きをした。

「そっか、アレン…くん…私たち…こうして話ができるんだね…」

「俺は…レアンに言わなきゃいけないことが…」

ためらいがちに言葉を紡ぐアレンに、

続きを促すように小さく頷くレアン

「す、素晴らしい!本物の人間みたいだ!!是非うちの娘に!!」

空気を読まずに割って入る館の主に

レアンは驚いたように再び辺りを見渡す。

「…この人、誰?」

「ええっと…」



――――――


アレンが部屋から出ると待合室に居たヨウが駆け寄ってきた。

「アレン!!レアンは!?もう大丈夫なの!?」

「あ、あぁ、」

言うとアレンの後ろからレアンがひょっこり顔を出す。

「ええっ!?大きい!!」

「いや、小さいの間違えじゃ無いのか?」

ヨウの上げた驚きの声にアレンが突っ込みを入れると

ヨウは首を横に振った。

「確かに、想像してたレアンよりかなり小さいけど、

そうじゃなくて、なんか最初に博物館で見た時より

その体、大きくない?」

言われてみればと言いながら髭を弄る主人の言葉も

ふざけているとしか思えない。

人形が成長したとでも言うのか、

「俺は別に変わって見えないけど・・・」

そういってアレンが足元を見ると

レアンはヨウをじっと見つめている。

「ヨウちゃんはもっと小さいと思ってたのに、

なんか随分と大きく見えるね」

レアンの第一声を聞いてヨウはアレンに眼を飛ばす。

何で俺が睨まれなきゃならないんだ?と肩をすくめるアレン。

妹とアレンの見慣れたやり取りにマオは安堵しながら言った。

「成功したならよかったよ、

カリウが一人で出てきた時はしくじったのかと思って

冷や冷やしてたんだから」

「そういえば、カリウは?」

待合室に姿は見えず、周囲を見回しながらアレンは訊ねた。

「ああ、出てくるなり倒れ込むもんだから、

メイドさんが別室に寝かせに行ったよ」

「ええ!?」


アレンはマオが指差した方向に慌てて走って行った。

残されたレアンに館の主人は娘になるよう口説きはじめる。

ヨウはその間に割って入って今まで話せなかった分を

取り戻すかのように近況報告を始める。

周りの勝手な行動にマオは大きく溜息をついた。


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