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決行の時

 遠くそびえ立つ〈神の城〉と呼ばれる建物を眺めながら、由綺は表情を強張らせていた。

 夜も深い時間になり、街灯一つない静かで閑散とした一本道の奥に、その城は堂々と佇んでいた。それは淡く白い光を放ち、闇の中でもくっきりと浮かび上がっている。その光と月明かりのおかげで、この暗い道も十二分に照らされていた。

 この世のものとは思えない――それが由綺の感想だった。

「何か、すげーな……」

「ああ、そうだな……」

 隣では、朔と奈津雄が放心しながら〈神の城〉を眺めている。

「……やっぱりやめない?」

 由綺が小声で二人に告げる。すると朔が、俺を信じろ!――と自信満々に小声で返してくる。一体どこからそんな自信が湧いてくるのか、由綺にはわからない。

 竜には最初、どうしたって一緒に〈神の城〉に乗り込むことはできないと窘められてしまった。何でも神様対抗組織の立ち上げ人である〈チーム・SEIYA〉のリーダーから、精鋭部隊と同等の力を与えてもらうことになっているらしい。由綺達はまずそんな凄い人がいることに驚いたのだが、それはさて置き。さすがに学生の、しかも戦いにはド素人の由綺達を組織に入れて、力を与えてもらうことは当然、〈神の城〉に乗り込もうものなら『キチガイで恥知らず』という烙印を押され兼ねないと、竜は判断したのだった。

『だいたいお前らが来なくても、組織に任せておけばいいだろ』その竜の言葉に、由綺も同意はしたのだが、朔と奈津雄がこれでもかというほど頑固に否定した。

 結果、由綺達三人はひっそりこっそり〈神の城〉に乗り込むことにしたのだ。〈チーム・RYU〉の中に紛れこませてもらいながら。

 朔と奈津雄、そしてミナの猛攻撃によって、竜は泣く泣くそれを承諾した。由綺はこの時ほど、罪悪感に襲われたことはない。

 そしてその日はすぐにやってきて、現在に至るというわけだ。由綺達三人は組織の集合場所に一足先に辿り着き、その道の脇の草むらに体を小さくして、隠れるように三人で固まっていた。征哉という男が竜達に力を与え、乗り込む時に一緒に突入するという作戦である。

「由綺は理由を知りたくないのか? 何で神様にここまで執拗に苛められるのか」

「それは……そうだけど」

 奈津雄の言葉に、歯切れ悪く返事をする。

 由綺だって、できることなら理由は知りたい。この何年、とても惨めな思いをして生きてきたのだし、理由がわからないまま神様がいなくなってしまったら確かに釈然としないだろう。

 しかしあまりにも無謀な作戦だから、やはり由綺は気乗りがしない。何せ、精鋭部隊に対抗できる力だって与えてもらえないのだから。

「シッ、来たぞ!」

 朔が人差し指を口元に当てながら、慌てて由綺と奈津雄に言った。

 由綺は緊張する。

 草むらからこっそりその様子を覗き見ると、体格のいい男達ばかりがこちらに向かって歩いてきた。年齢は様々で、由綺達くらいの年頃も一人二人見受けられた。

「何だよ、竜の兄貴の奴。俺達のことガキだとか言っときながら……」

 朔もその少年達を見つけたのか、ぶつぶつ文句を垂れている。

「まあ境遇の違いかもな。……五十人弱ってところか」

 奈津雄が目を細めて、組織の面々を注視する。竜の話では、組織は全体で数百人はいるらしい。まだ集合時間には早いから、これからもっと増えるということだ。

「竜の兄貴もまだだな。来たら見失うなよ、二人とも」

 由綺と奈津雄がコクリと頷く。一応、〈チーム・RYU〉のメンバー全員に由綺達の事情は話してある。朔の二度目の名演説に、竜以外のメンバーも泣いて同情してくれたのだ。なんて感受性豊かな人達なんだろうと由綺は嬉しい反面、呆気に取られた。とりあえず彼らに守ってもらいつつ道を進めるつもりではあるのだが、どうも仕事で怪我をしているメンバーが何人かおり、軽傷ではあるのだが若干頼りない気もしていた。

 すると突如、組織の人間達がざわめき出した。

「皆さん、お集まりいただいて恐縮です」

 見ればいつの間にか用意されていた演壇に人が立っていた。物腰の柔らかそうな長髪の男が一人、爽やかな笑顔を振りまいている。

 壮一だ――周りの男達が口々にそう言い放つ。

「もう皆さん聞いているとは思いますが、私が全体の指揮を取らせていただきます。うちのリーダーが来るまで、今しばらくお待ち下さい」

 壮一という男は、丁寧にお辞儀をして演壇から降り立った。

「〈チーム・SEIYA〉のメンバーらしいぜ」

 朔が耳打ちする。それを聞いて、組織というイメージからかけ離れた人だなと由綺は思った。

 その間にも、組織の人数が徐々に増えていく。

 間もなく集合時間になる。

 さすがに何百人もの人数が集まると、まるで何かのお祭りのようだった。

「いた! 竜の兄貴だ!」

 朔が指差し、前屈みになる。

 瞬間、由綺は竜と目が合った。彼は、こちらに見えやすい位置にゆっくりと移動してきてくれる。

「三、二、一……時間だな」

 奈津雄が自分の腕時計を見ながら言った。

 それと同時に、またもや周りがざわつき始め、男達は背後を振り向いて道を譲るように動き出す。

 その開かれた道の先頭には、濃いブラウンの髪をした真面目そうな青年が背筋をピシッと伸ばして演壇へと向かって行く。そしてその後ろには――

「こ、子供……」

 由綺は茫然と呟いた。朔と奈津雄もポカンとしている。

「すっげーキレイ可愛い」

「お前、今度はショタコンの道に走り出すのか」

「っていうか、朔の驚きはそこっ?」

 小声で突っ込む由綺。

 確かに朔の言う通り、金色の髪に大きな瞳をした非常に愛らしい少年だった。無邪気な笑顔で青年の後ろをついて行く。

 何故か朔は聞き耳を立てるように耳に手を当てる。そして、なるほど――と言って真剣な眼差しを由綺達に向けた。

「周りの声を確認したところ、あの子は〈美影〉という名前らしい」

「何を真剣に聞いてるかと思えば。アホか」

 ベシリと朔の頭を叩く奈津雄。

「もう、朔ってばっ。真面目にしてよっ」

 由綺も小声で怒る。

「あれ、ヤキモチ? 大丈夫、俺は由綺一筋だから!」

「でも目移りはするけどな」

「その前にヤキモチじゃないから!」

 はあ、と由綺が溜息を吐くと、今度は一際大きなざわめき声が上がる。

 三人は一斉にそのざわめきのもとへと目を向けた。

 そこには由綺と同じ黒髪の背の高い男が、堂々とした様子で歩いてくるのが見えた。

 何故だか由綺はどきりとする。

 何だろう、この感覚は――

「うわ、あの人もすげー美男子」

 朔の言葉を耳にしながら、由綺もその男の顔を覗き込む。

 切れ長の瞳に端正な顔立ち。何が面白いのか、口の端を歪めて妖艶な笑みを湛えていた。

「ん? どうした由綺」

 奈津雄の声に、はっと我に返って首を横に振る。

「あ、いや……何でもないよ」

 あの男から、どうしてか目が離せなかったのだ。

 男は演壇に登り、

「よし、お前ら! 今からオレの力をくれてやる!」

 高らかにそう言い放つ。恐らく彼が征哉なのだろうと由綺は思った。

 男――征哉が右手を掲げると、一気に眩しいくらいの白い光が放たれ、組織の面々を呑み込んだ。

 由綺は目を瞑るが、すぐに光は消え去った。

「――これで終わりだ」

 征哉がニヤリと微笑みそう言うと、組織の男達は疑いの眼差しで彼を見ては、口々に何かを呟いている。

「皆さん、静かに! 信じる信じないはあなた方の勝手です。ですが、我々は心の底から〈神〉を打ち滅ぼしたいと願っています。それには、一人としてあなた方の協力を欠かしたくはないのです」

 男達は壮一の言葉に聞き入っている。

「それでも協力できないと言う者がいたならば、今この場で去りなさい!」

 壮一の一喝に、誰一人として動く者はいない。異様な静けさだった。

 由綺達三人も、黙って事の成り行きを見守っている。

「いい覚悟だ、てめえら」

 その静寂を打ち破るように征哉は男達を眺め回し、切れ長の目を光らせる。

 そして吠えるように告げた。

「一発、派手にブチかますぞ!!」

 それを皮切りに数百人の男達が、オー!!――と咆哮を上げながら、それぞれ〈神の城〉へと走り出す。地鳴りが響き渡っていた。

「行くぞ、お前ら!」

 竜が由綺達を振り向き、声を掛ける。怪しまれないよう、由綺達は素早く〈チーム・RYU〉の後を追う。

「よっしゃ、行くぜ!」

「ほ、本当に大丈夫かな……」

 気合の入った朔に、由綺は不安になりながらも走り出す。

「いい加減、腹を決めろって」

 奈津雄が気合を入れるように、由綺の背中を叩く。

 確かにここまで来ておいてこんなことを言っても、朔や奈津雄にも悪いし、協力してくれている竜達にも悪い。

「……そうだね。皆、ありがとう!」

 由綺の言葉に、朔や奈津雄、〈チーム・RYU〉の面々が笑顔でこちらを振り向いた。

「気にすんなって!」

「竜さんは人情の厚い人なんだよ!」

「俺達がしっかりサポートしてやる!」

 口々に由綺に声を掛ける男達。本当に何ていい人達なんだろうかと、心が温かくなった。

「お前ら、無駄口叩いてないで行くぞ!」

 竜の呼び掛けに〈チーム・RYU〉のメンバーは、はい!――と嬉しそうに返事をする。

 その様子を見て、竜さんって人望あるんだな――と感心する。

 そして、由綺も覚悟を決めて〈神の城〉へと臨んだ。

 が、しかし。

 気付けば〈チーム・RYU〉は最後尾。遠くに見える先頭はすでに門前に辿り着いているようだった。

「門番二人、組織の人達とやり合ってる! おお、互角に渡り合ってる感じだ!」

 朔がジャンプしながら、その様子を実況している。

「ったく、この人数じゃ中に入るのに時間が掛かるぜ!」

 拳を握りしめ、唾を吐き捨てる竜。

 彼の言う通り、いくら城と名のつく大きさを誇っている建物でも、さすがにこの人数が一気に入るのは無理だろう。

 その時、歓声が響き渡った。どうやら門番二人を倒したらしい。彼らは本当に力を手に入れたんだと思う反面、征哉とは一体何者なんだろうと疑問が浮かぶ。

 巨大な門が大きな音を立てて、ゆっくりと押し開いていく。

 突入だー!――という一人の男の声に合わせ、全員咆哮を上げて中へと駆け込んだ。

 が、やはり由綺達は前になかなか進めない。

「人間の渋滞だな、これは」

 奈津雄が呆れたように呟いた。

「中にも精鋭部隊が当然いるだろうからな。さすがに異変に気付いて俺達をやっつけようと向かってるはずだ。先頭のほうでそれに構ってたら、全然先に進まないだろうよ」

「えー、せっかく気合入れたのに……」

 竜の言葉に、朔が肩を落として落ち込んだ。

 とにかく今は待つしかないだろう。徐々にではあるが、前進はできているのだ。

 しかしこれでは緊張感に欠けるな、と由綺は思った。


 それから待つこと数分。


 由綺達はようやく門前へと辿り着いた。中に入ると、ひんやりとした空気に包まれる。

 石でできた冷たい建物だった。外側で放たれる不思議な白い光に対して中は薄暗く、ところどころに謎の淡い光の球が浮いていた。

 竜は、何じゃこりゃ――とその球を怪訝な顔で凝視していた。

 由綺は一瞬、天使かと思ったが、羽もないし動きもしないので、本当にただの光る物体なのだろうと判断する。

 城の中では、甲高い金属音や気合の入った人々の声が騒がしく響いていた。今のところ目に届く範囲に人はいない。

「とりあえず、神様と言えばやっぱ頂上にいそうだよな」

 朔の言葉に、〈チーム・RYU〉の全員が頷いた。

 安直ではあるが、普通に考えたらそうなのかもしれない。

「よし、とにかく上に行くぞ!」

 竜の掛け声に、由綺達は階段を目指して走り出す。途中、精鋭部隊と戦っている組織の人達が目に入った。

 白い鎧に身を包んだ精鋭部隊。神様への供物を収集しに来る時以外は、滅多に見ることのない連中である。

「階段だ!」

 奈津雄が叫ぶ。

 全員、その階段を駆け上る。しかしその途中、精鋭部隊が目の前に立ちはだかった。人数は二人。

「どりゃあ!」

 先頭の竜がそのまま精鋭部隊に突っ走り、タックルを掛けに行く。

 ガチャンと鎧の音を大きく響かせながら、一人が階段に倒れ込んだ。

 竜は思いきり蹴飛ばして、階段から転げ落とす。

 そして〈チーム・RYU〉のメンバーの二人が、もう一人の精鋭部隊の男へと駆け寄って行き、両側から腕を掴む。

『せーの!』

 二人で息を合わせて、精鋭部隊の頭を鎧ごと壁にぶち当てる。

 鎧と壁がぶつかり合う激しい音を立てて、その精鋭部隊の男は倒れ伏す。

「本当にこいつらと同等の力を手に入れたんだな……!」

 竜達組織の面々は、興奮したように喜び合った。

 行くぜ!――調子に乗ったように、竜は階段を駆け上っていき、由綺達もそれに続いた。

 幾度目かの階段を上りきると、大きな広間に出た。そこでは、大量の精鋭部隊と組織の人間が戦いを繰り広げていた。

 竜達の目の前にも精鋭部隊が数人立ちはだかり、竜は舌打ちしながら、やるぞ!――と声を掛け、精鋭部隊に挑んでいく。

 由綺と朔と奈津雄の三人は、ただ彼らを見守ることしかできない。

「まずいな、ここに精鋭部隊がどんどん集まってくる」

「げげっ、どうすんだよ!」

 奈津雄の言葉に、朔が慌て出す。見れば広間の左右には廊下が繋がっており、そこから続々と精鋭部隊が溢れ出すように湧いていた。

 その時、高い電子音が鳴り響く。竜のポケットからだった。

 竜は精鋭部隊の一人を拳で殴りつけてメンバーに相手を引き継ぐと、一歩下がってお尻のポケットから何かを取り出す仕草をした。

 無線機だ。

『こちら、指揮官の壮一です』

「用は何だ?」

 無線機から発せられる声に、竜は静かに対応する。

『そちらの状況をお聞かせ願えますか』

「状況? ……今、五階あたりの広間で精鋭部隊とやり合ってるとこだ。先に進むにはこの道を突破しなくちゃいけないようだが、奴らがうじゃうじゃ湧いてくるせいで、切りがねえ」

『成程……。そちらに今、征哉君達が向かっているので、何とか持ち堪えておいて下さい』

「来ればどうにかなんのかよ」

『なるでしょう』

 あっさり告げる壮一に、竜は訝しげな表情になる。

「……わかったよ。じゃあ切るぜ」

 竜は溜息を吐きながら無線機を切って、再びお尻のポケットへと仕舞った。

「何々、征哉って人が来るの?」

 朔が竜に駆け寄って行く。らしいな――と面白くなさそうに竜が呟き、

「とにかくお前らは下がってろ!」

 由綺達にそう言ってナイフを取り出し、精鋭部隊に切り掛かっていく。

 その様子を由綺達は、ぼけっとまた眺めるのみ。

「……なあ」

「え?」

 奈津雄の小さな呟きに由綺は振り向く。

「今のところ、神様に一番近いのは〈征哉〉って人なんだよな」

「近い……って?」

「〈神様を殺せる人〉ってこと」

 由綺は言葉に詰まる。

 確かに〈チーム・SEIYA〉以外の組織は全員、精鋭部隊との戦いを任せられているのだと竜から聞いているから、大本の神様のところには〈チーム・SEIYA〉が向かうのだろう。その証拠に、この〈神の城〉への突入時、征哉達は動かなかった。そして彼らは組織が精鋭部隊と戦っている隙をついて神様のもとへと向かうため、今ここに向かっているのだ。

 果たして征哉という男が〈人〉ではない神様を殺すことができるのか、由綺にはわからないのだが。

「ここにその征哉が来るっていうなら、竜の兄さんについて行くより、その人について行ったほうが効率的だと僕は思うね」

 奈津雄はそう言って、朔にも視線を送る。朔は顎に手を当て、ううんと唸り出す。

「……そうだな。ここに乗り込むには竜の兄貴達に紛れ込む必要があったけど、奈津雄の言う通り神様に会いに行くなら、その人について行ったほうがいいかもな」

 今さら計画を変更し出す彼らに、本当に無計画だなとしみじみ思う。

 すると二人が同時に視線を送ってきたので、由綺は了承の意味を示すためにコクリと頷いた。由綺が反対したところで、二人の意見はどうせ変わらないのだから。

 しかしその時、ゾクリと背筋が凍えた。

 それは由綺だけでなく、朔に奈津雄、竜達組織や精鋭部隊までもが感じたようで、皆一斉にその元凶へと振り向いた。

「ふん……いい感じに殺り合ってんじゃねえか」

 切れ長の瞳で睨み据えるように、彼が言う。

 征哉だった。

 彼の後ろには、〈チーム・SEIYA〉のメンバーである真面目そうな青年と、美影も控えている。

「邪魔して悪いが、通らせてもらうぜ」

 言いながら征哉は、妖艶な笑みを浮かべてゆっくり昂然と歩き出す。

 誰一人、動かなかった。由綺の額から一筋の汗が流れる。

 動悸が激しい――これは由綺だけのことなのか、他の人もそうなのか判断がつかない。

 征哉から目が離せない。由綺は瞬きすることも忘れ、征哉に見入っていた。

 すると、思いのほか由綺の近くを彼が歩いてくる。鼓動が一層激しく鳴り出し、

「……っ!」

 瞬間、征哉の鋭い瞳が由綺を捉える。ニヤリと微笑まれた気がした。

 しかしそれはほんの一瞬の出来事で、彼は由綺の目の前を颯爽と通り過ぎて行く。

 由綺は自分の感情に戸惑った。嬉しいような悲しいような、何だか酷く焦れったい気分だった。

 征哉達三人が広間の奥へと進み、姿が見えなくなると、誰からともなく深い溜息が口から吐き出される。

「………………って、おい! 精鋭部隊一人もやっつけてねえじゃねえか!」

 竜が声を荒げるが、当然のことながらそれに答えられる人間は一人もいない。

 代わりに口火を切るように再び戦闘が始まる。鳴り響く金属音に男達の怒号や罵声。

 それに気付いたように、朔も大声を上げた。

「俺達も行くぞ!」

 奈津雄が頷き、未だぼうっとしていた由綺は二人に背中を押されつつ、征哉達の後を追うため走り出す。

「おい、朔! どこに行くんだ!?」

「悪い、竜の兄貴! 俺達、先に行くから!」

 朔はそう告げて、背中を向けて去って行く。

 竜は呆れたようにそれを眺めて、

「ったく! 何かあったら、ミナの奴に怒られるのは俺じゃねえか!」

 と愚痴を零しつつ、精鋭部隊に突っ込んで行くのだった。

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