序章
私は神でした。
人間達からは〈神様〉と呼ばれ、崇められています。いつから存在しているのか、自分でもわかりません。
けれど私はずっと長い間、人間達を見守り続けてきたのです。
たくさんの〈天使〉の目を通して。
彼ら〈天使〉は私と違って人間達の言語を理解することはできても、人間達に意思を伝えることはできません。また世界のあらゆる場所に存在しているのですが、人間達に姿を見られることもありません。彼らには実体がないのです。一つ一つ、色とりどりの光を放ち、一対の真っ白い翼を携えています。大きさは人間の手のひらに収まってしまうくらいしかないのです。
私はそんな彼ら〈天使〉の目を通して人間達を見守り、時には会話をして人間達と交流を深めてきたのです。
私にできることと言ったら、そのくらいなのです。人間達の悩みを聞くことはできても、願いを叶えることなど到底できない名ばかりの神なのです。
だけれども、そんな私でも人間達は慕ってくれていたのです。だから私は、いつの頃からか〈美しい女の姿〉をすることにしました。
私に本当の姿というのは存在しません。どんな姿になることも思いのままなのです。
何故私が〈美しい女の姿〉を選んだかと言えば、人間達の誰もが愛してくれることを望んだからに他なりません。
光り輝く金色の髪。長いそれは少し波打ち、触れたくなるような繊細な質感。また、エメラルドに光る大きな瞳に、薄い紅の色に染まった小さな唇。少し幼さを残した、けれども大人を感じさせる雰囲気の女性。
誰もが私を愛してくれました。受け入れてくれました。
――〈由綺〉という少年に、出会うまでは。




