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孤高の塵人  作者: dy冷凍
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第二十九章

「これで終わりっと」



 ビクビクと尻尾を震わせているヘルスコーピオンの頭を剣で突き刺し、尻尾を切り取って剣に付いた緑色の体液を払い落とす。戦いが終わる度に剣が愚痴を零してくるのが若干鬱陶しいくらいで、依頼は思いのほか順調に進んでいる。


 ただ朝四時にギルドに飛び込んで討伐依頼を複数受注した時、受付娘に「命は投げ捨てる物ではありません」って真顔で言われた時は苦笑いしか浮かばなかったが。まぁそのおかげでサクッと依頼達成して驚かしてやるぜー、なんて下らないこと考えてるんですけどねー。


 今受注している依頼はヘルスコーピオンの尻尾納品とエレキスコーピオンとやらの電気袋納品、それとアクアスコーピオンの貯水袋の納品。この三つだ。塔に近づいた方がスコーピオン系が出やすいので今はそこを探検している。


 ぶっちゃけアクアスコーピオンの依頼が達成出来るかは運任せだ。普通スコーピオン系は巣を作ってほとんど団体行動してるんだが、アクアスコーピオンだけ単体で行動して巣も一日に一回は変えるんだそうだ。だから滅多に見つからない。


 その代わりに素材の希少性が高くてかなり高額で売れるから、出来れば見つけたいもんだ。戦闘も悪あがきのゲロに気をつければヘルスコーピオンより楽だし、見た目も青い甲殻で特徴的だから見つけやすいし今やラッキーモンスターみたいなものだ。


 その分エレキスコーピオンは神本での知識しかないから少し慎重に戦わなければいけない。塔の方角に生息する魔物で、怒ると体に電気を纏わせるらしい。それと剣で戦ったら感電するから接近されたら厄介とのこと。


 何て考えながら砂漠を歩いていたら前に黄色い甲殻のさそりが団体で移動しているところを発見。初見だから数の少ない団体を探そうと思ったが、接近させなきゃ大丈夫だろうと考えを纏めて魔法の創造に移る。



「炎球、行けっ」



 着弾したら爆発するように創造した炎球。最近習得したお気に入りを蠍に向かって投げ飛ばす。生身で炎球持ったら手が燃えるのでしっかり土壁ソルトで保護はしている。それでも結構熱いけどねー。


 炎球は放物線を描きながら真ん中の蠍に着弾し、爆発。結構爆発の威力が高かったから砂煙で前が見えないが、蠍が不気味な悲鳴を上げているからまだ生き残りはいるんだろう。警戒しながらも炎球を右手に出しながら少し後ずさり。


 砂煙が晴れると六匹ほどの蠍が威嚇するような声を上げながら二つのはさみを振り上げ、黄色い甲殻に電気らしきものをほとばしらせていた。……確かに接近されたらキツそうだな。剣で受け止めたら感電しちゃうだろうし。


 まぁ俺は魔法使えるから近づかないですけどねー。逃げながら炎球投げまくりますけどねー。



(……男らしく正々堂々と戦ったらどうなんだっ)

(知ったことか)



 剣に一言返せるくらい余裕な戦闘だった。カサカサと近づいてくる蠍にバックステップで距離を離しながら炎球を投げ続ける。多少狙いがズレても地面に当たったらその衝撃で爆発するので、爆風で蠍はほぼ瀕死状態。弱いなオイ。移動速度も大して速くないから追いつかれることはないだろうし、いいカモだ。


 そのまま距離を離し続け炎球を打ち込み続けていたら、生き残った二匹は背を向けて逃亡し始めた。追撃してやろうと思ったが面倒だったので止めた。まぁ魔法使うか遠距離武器使えば雑魚同然だし、こんなもんか。


 右手に持っていた炎球を左手に創造した水球で鎮火して、手を軽く振って焦げ付いた土壁を振り払う。炎球で倒した蠍の様子を見てきたら……うん。足やら肉やらが飛び散ってるだけで電気袋なんて見つかりませんでした。


 やっぱり炎球で甲殻もろとも吹き飛ばしたら電気袋は剥ぎとれないだろう。次は他の球を使ってみるか。大きめの水球作って窒息死とかがいいかもしれないな。



(あの時みたいに囲まれちゃえ。そして僕に助けを乞えばいいんだ)

(余計なこと言うなよ剣!? 本当に起こったらどうすんだ!)



 前方にある盛り上がった巣に炎球をぶち込みながらそう返す。いや、マジで御免だぞそんなこと。押すなよ!絶対押すなよ!? みたいなフリじゃないからな?




 ――▽▽――



 まぁ、最初に言いたいことがある。剣の馬鹿野郎。それだけだ。


 炎球をぶち込み砂煙が舞う中巣から出てきたのは、一匹の白くてやたら口が大きい蠍だった。体の半分が口で出来ている奇形の蠍。


 うろ覚えだがクイーンスコーピオンの近くに住み着いていると記されていた蠍……クライスコーピオン、だったかな? 待て、確か別名……。



「ギギャアァァアァアァアァァアァァァー!!」



 別名は緊急警報機エマージェンシーシグナル。クイーンスコーピオンがピンチの時に使う緊急の警報機、だったかな? 役目は人の鼓膜が破れるくらいの叫び声を上げて仲間を呼びつける。その叫び声はここから遠い塔までは届かなかったものの、ここら周辺の蠍を俺の前に集結させようとしていた。


 音が聞こえない世界で気持ち悪い警報機を潰した頃には、遠目に見える様々な蠍の群れ。俺の知っている蠍は勿論、今まで見たこともない蠍達が俺を中心に集まってきているようだ。……俺は蠍座の女じゃないぞ。


 全方向から蠍の進撃。このままじゃ街も危ないんじゃないかと神本を出して調べてみたが、あの声は緊急なだけあり蠍にとって何よりも優先するべき声らしいので、通りすがりにそのまま街を襲撃なんてことは無さそうだ。つーか、何でそんな奴がここにいるんだよ。十中八九じっちゅうはっく神の運んできた不幸トラブルに違いない。


 とりあえず街に被害が出ないことに安堵しながらも、剣を腰に括りつけて迎撃の準備をする。一回深呼吸、そして近くにきていた赤い甲殻の蠍向かって炎球を投げ飛ばす。着弾と同時にボウリングのピンみたいに弾け飛ぶ蠍達。



(随分と落ち着いてるんだね。前の五十匹前後の比じゃないよ? 蠍の大群が責めてくるよ。シュウトは蠍に貪りられて食べられちゃうんだ。もっと焦りなよ)

(お前はいつから俺の敵になったんだ!? 何その焦りを煽るような台詞!? っていうか後半直球すぎるだろ!)

(……つまらないなぁ。この前まで泣きべそかいてたのに)

(ったく。まだ放置したこと怒ってるのか剣は)



 そう言葉を返しながらも左手を地面に当ててダークネスを自分を中心に広がるように地面へ侵食させ、右手で近づいてくる蠍に炎球を放つ。


 大丈夫。まだそんなに蠍は近づいてきていない。確かに蠍の大群が四方八方から行進してくるのは非常に厄介だが、まずは落ち着いてみよう。相手は知能の低い蠍だし、行進速度もそれほど早くはない。暗殺者みたいに見えない速さで近づいてくるわけでもないし、荒瀬さんみたいにチートでもない。


 それに比べて俺は無尽蔵とも言える魔力を持っていて、創造した魔法を打ち出せる。って言っても初級魔法程度の威力なわけだが、それでも蠍を殺せるくらいの威力はあるし量なら負ける気がしないわけで。


 行進してくる蠍の体力を地面に広げたダークネスで吸い取って自分の後ろに巨大な光の盾を何重にも設置して、前から行進してくる蠍を魔法でひたすら撃墜すればいい。他にも手はある。光の柱を作ってその上に立ってひたすら炎球を下に落とすか、いくらでも思いつく。


 炎の効かない蠍がいるなら他の球をぶつければいい。簡単だ。ただひたすらに魔法で蹂躙してくれる。何が緊急警報機だ。知能の低い魔物相手なら俺でも充分に戦える。


 そう考えながらダークネスをひたすら地面に広げ続けた。俺を中心に五十メートルくらい広がったところで止めて次は自分の後ろを守る光の結界作りに移る。


 自分のすぐ後ろ辺りから百八十度囲うように、巨大なドーム狀の光の障壁を張り続ける。二重、十重、とひたすら障壁を張り続けて、横と上も結界を追加して伸ばしていく。これで光の結界は終わり。


 次は炎の渦巻く火の結界。次は鎌鼬かまいたちが渦巻く風の結界。次に炎で自分が焼かれないように水の結界。二十五メートル辺りにこの巨大ドームみたいな結界達を……まぁ四重くらい張れば大丈夫だろう。


 障壁を張る前に侵入してきた赤い蠍ご団体には風の刃を創造してプレゼントしてやった。色で大体属性の見分けがつくから楽でいいや。


 何重にも張った結界に満足しながら剣にも協力してもらうことにした。何か仕事与えれば文句も言わなくなるだろうしな。



(剣。もし後ろの光の結界が危なそうだったら伝えてくれないか?)

(……何で僕がそんなことを)

(頼れるのは剣だけなんだよ。頼むよ。なっ?)



 そう言いながら右前方の真っ黒な蠍に炎球を投げつけて近づく前に蹴散らす。左にいる緑色の蠍には氷の槍を地面から生やして串刺しにする。前方に見えるお馴染みのヘルスコーピオンには光球で作ったボウリング球を手に創造し、それを投げ飛ばす。


 砲弾のように飛んでいった光球は先頭のヘルスコーピオンの顔を潰し、後ろにいる蠍を吹き飛ばしながら後ろに飛んでいった。ストライクーってか? 悪趣味なピンだなオイ。


 俺は前に群がる蠍に向けてありったけの魔法を飛ばし続けた。シューティングゲーム感覚で蠍を潰していき、やっと前方から蠍は来なくなったので一息つく。


 後ろを向いて結界を見たら凄いことになっていた。まずは第一陣の炎の結界。ほとんどの蠍がおぞましい悲鳴を上げて焼却され、赤い蠍とその他多数の蠍が結界を踏み越えた瞬間にサイコロみたいにバラバラに解体されていく。それを乗り越えてきた蠍はほぼ居なかった。


 五十匹ほど光の結界の前で立ち往生しているが、時間が経てば闇に体力を吸い取られて動けなくなるだろう。あー疲れた。一体いくつの蠍を殺しただろうか。罪悪感は……あ、アクアスコーピオンが少し遠くに見える。ダークネスの効果で弱ったら殺しにいこう。


 前の蠍が倒れ伏したのを見計らって結界を全て解き、剣で止めをさしていく。所々に零れた蠍がいたがほぼ残滅したようだった。結界があったところはとんでもないことになっているが、大丈夫だろうか? 


 とりあえず原型を残している蠍は素材を剥ぎ取って、バラバラの死体は使えそうな物だけ拾っておく。炭になってる死体はどうにも出来ない。


 ありったけの魔法は使ったが倦怠感は無い。一体どれだけの魔力があるんだろうなと不思議に思いながらも街に帰った。貯水袋二個、電気袋十二個、尻尾四百五十個と大量だった。うめぇ。

編集するだけだし一日三話余裕かなーなんて時期が僕にもありました……。

一日一話ペースが限界でした。時間空けて自分の文章見ると死にたくなるなこれは……。毎日更新辛いYO()とか酔ってたのか俺は……。

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