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第8話「観望と絶望と希望」

朝。

薄暗い宿舎の外に出て、俺はズボンの左ポケットからタバコの箱を取り出す。

ワイルドセブンと書かれた箱には、七人のマッチョがポーズを決めている。

だがポケットに押し潰されて、彼らは悲惨な姿になっていた。


この世界に来た時、スーツのポケットに入っていた二箱のタバコ。

残りはあと二本だ。


俺は一本抜き、口に咥える。

右ポケットからジッポを取り出し、火を点けた。

夜露で湿った空気と煙草の匂いが混じる。


この世界にもタバコはある。

昨日ラゼムとの帰り道、ヤギ亭主の露店で数十本買ってみた。

独特な匂いがして、味は期待していない。


フィルターはないが、巻きたばこがあるだけありがたい。

ワガママは言ってられない。


だからこそ、元の世界のこの最後の一本は大事に残しておきたい。


噛みしめながら煙を吐いていると、背後からユウの声がした。

振り返ると、寝癖のユウと、目をこすりながら歩いてくるカジがいた。


俺はタバコの箱を振る。

「悪いがタバコはもうねぇぞ」


「そもそも吸わない。あの時吸ったのはお前に付き合っただけだぞ」


「それより、お二人は気にならないんすか?」

カジが割り込んでくる。


「ん?何がだ」

俺とユウは同時に返す。


「ざわざわしてて、騒がしくて目が覚めちゃいましたよ」


街の方角を見ると、確かに人だかりができている。


その中にカエルの隊長がいた。

二人の若者を連れて、こちらへ歩いてくる。


「おう人間。生きていたか」


「死ぬような事はしてませんよ。それよりお金、ありがとうございました」


「礼はいい。ラゼムから聞いたぞ。昨日は相手してくれたらしいな」


「いえ、むしろ助かりましたよ。色々知れましたから」

現にこの世界の事を知れて助かったのはこっちだ。

「それで、ここには何か用事で?」


「ああ、ラゼムからこの二人を紹介してほしいと頼まれて連れてきたんだ。」


「えっ」

隣に立っていたユウが驚く声をあげた。


カエルの隊長は後ろに居る二人の男女を紹介する。

「ラゼム隊の副隊長ゴマと、隊長補佐のライコだ。」


「始めまして、ラゼム隊の補佐をしているライコです。」

背が高く、赤い髪に小さな角が生えた若い青年だ。


この子が補佐なら、もう一人の小さい女性が副隊長って事か。

俺はまじまじと副隊長を見る。


「んっ!?」

ユウと同じで俺も思わず声が出てしまった。

副隊長の子、フードを被って顔しか見えないが、この顔にどこかで見覚えがある。

顔立ちに雰囲気が妙に懐かしい。


しかし無言で何も喋らない彼女に青年ライコが変わりに口を開く。

「ごめんなさいウチの副隊長が、名前はゴマっていうのでお見知りおきを」


10代ぐらいだろうか、二人ともかなり若い。


カエル隊長が咳払いをしながら話し出す。

「コホン、自己紹介は済んだな。お前たち今日は王が帰還し、

お前達は王の謁見する時間を設けてある。

だから後で迎え来るまで外出はせず家で待機するように。」


「分かりました、出かけないように家で大人しくしてます。」


「うむ。では二人とも帰るぞ」

カエルの隊長はゴマとライコを連れ帰る。

背の高い赤髪の青年ライコはこっちを見てペコリと頭を下げる。


**********************


帰る三人の後ろ姿を見送りながら、ユウがこちらを見て言った。

「びっくりしたー。イサム、気付いたか」


「え?気付いたって何が?」


ユウは少し声を落とした。

「……麗子ちゃんだよ」


「!!」


その名前を聞いた瞬間、胸が跳ねた。

ユウが驚いていた理由も理解した。


「あのフード被ってたゴマって子、麗子ちゃんにそっくりだった。

いや、そっくりじゃなくて……瓜二つだ」


永瀬麗子。

俺が昔付き合っていた彼女。


突然現れ、恋に落ち、突然消えた。

そして数か月後──ニュースで飛び降り自殺したと知った。

お腹には赤ちゃんがいたらしい。


俺は泣き崩れ、自暴自棄になり、

ユウと、まだ小学生だったショウに慰められた。


「確かに麗子に瓜二つだ。ユウ、よく覚えてたな」


「そりゃお前の唯一の元カノだし。あれだけの美人さんで

それにショウが麗子ちゃんに嫉妬して、何度俺に八つ当たりしてきたか……」

ユウは頭を抱えた。


「麗子ちゃんって噂の失踪した彼女さんっすよね?」


「失踪じゃなくて自殺だ。」


「は?」ユウが驚きながらこっちを見る。


「えっ?」ユウが驚いてる事に俺は驚いた。


「イサム自殺って、いくら何でも言って良い冗談と悪い冗談があるぜ。」


「ユウ、お前何を言ってるんだ?だってお前とショウで泣いてる俺を慰めてくれたろ」


「それは麗子ちゃんと思われる子の靴と身分証が入ったかばんが屋上から見つかっただけだろう」


何かがおかしい。どういう事、麗子は確かに飛び降りて死んだ。

だが──


俺の記憶の中に、もう一つの記憶がある。


廃ビルの屋上で見つかった靴と身分証と出生届。

“失踪”として扱われた記憶。


「……………………!?」


記憶が二つある。


自殺した麗子の記憶と、失踪した麗子の記憶。


記憶障害?

いや、思考は正常だ。


なら、この二つの記憶はどう説明する?


話しているうちに、自殺の記憶が遠ざかっていく。


「……ム」


「…………サムッ」


「おいっ……イサムッ!」


ドンッ。


肩を押され、俺は現実に引き戻された。


「悪い……そうだ。麗子は急に失踪して、それ以来見つかっていなかったんだ」


「こっちこそ悪かった。嫌なこと思い出させたか?」

ユウは肩に手を回してくる。


「イサムさん、これ」

カジがコーヒーの入ったコップを差し出した。


一度コーヒーを飲んで冷静になろう。

「すまん……ありがとう」

俺はコーヒーを一口飲みながらリラックスしながら残りのタバコを吸い終え、目をつぶる。


数時間後


**********************


「イサム」


その声で俺は目を覚ました。


どうやらあの後、寝ていたようだ。体も頭もスッキリしている。

「俺はどれくらい寝てたんだ?」


椅子に座ったまま器用に眠っていたらしい。

刑事時代もよくこうやって仮眠を取っていた。


「二時間くらいじゃないか?それより、こっち見てみろよ」

ユウはドアの外を見ながら言った。


俺は体を起こし、ヤギの亭主から買ったタバコを取り出す。

この世界のタバコは紙ではなく、葉をそのまま巻いたものだ。


外に出て、ユウが見ている大通りの方角を見る。


「なんだあの人だかり?」

大通りに人が集まっている。


「あのカエルが帰ってきたんだろ」

ユウが呆れた顔で言う。


「王様な。ユウ、俺達の前ではいいが、人前では絶対言うなよ」


俺はタバコを咥え、火を点ける。

……思っていたより普通に吸える味だ。

見た目の割に中身は優しいが、フィルターがないから喉が痛くなりそうなのが難点だ。


「この感じだと、そろそろ迎えが来そうだ。準備するか」

ユウはそう言って部屋に戻った。


俺はタバコを吸いながら体を伸ばす。

空を見上げ、これから王と会った時の会話を何パターンかに分けて、頭の中でシミュレートした。


色々考えタバコを吸い終え、家に戻る。

そして身支度をしていると、ドアが豪快にノックされた。


カジが開けると、ラゼムが立っていた。

どこか表情が硬い。


「昨日はご馳走様でした」

俺が頭を下げると、ラゼムはニヤッと笑った。


「いいってことよ。俺も楽しかったからな。

それより……外、騒がしいだろ」


「ええ。王が帰還するって分かりました」


「察しがいいな。宰相殿から、お前たちを連れてこいと言われてる」


「え?ラゼム旦那が案内してくれるの?」

ユウが驚く。


「ああ。俺の隊はほとんど警備に回ってて、空いてるのが俺だけなんだわ」

ラゼムは豪快に笑った。


「今から王が帰還される。良かったら見に行くか?」


「おっ!楽しそうだし行こうぜ!」

ユウとカジは先に外へ出る。


俺はブーツの紐を締め、忘れ物を確認してから外へ出た。


大通りへ近づくほど人だかりが増える。

入口には兵士が整列していた。


「へぇ……綺麗に統率が取れてるんだな」

思わず本音が漏れる。


「あれは宰相殿の隊だな」

ラゼムが感心したように言う。


「一人一人の意識が高いですね。訓練してるんでしょう」


「練習はしてたな。まぁ俺の隊じゃああは綺麗にならん」

ラゼムは豪快に笑う。


「気になったんですが、ラゼムさんと宰相殿はどっちが偉いんです?」


「どっちが上とかはないぞ。古さで言えば俺の方が古い。

それに俺と宰相殿はやってることが反対だ。宰相殿は国の頭脳、俺は国の武だ」


「バランスが取れてるんですね」


「まぁ、そうやって今日までやってきた」


その時、遠くから蹄の音が響いた。

重厚な馬車が現れる。俺の知っている馬より一回り大きい。


馬車の中には豪華な椅子。

そこにシュラ王が座っていた。


金色の眼が爛々と光り、歪んだ口元が不気味に笑う。

馬車全体から“威圧”が漂っていた。


「二人とも、あれ見てください」

カジが馬車の後ろを指さす。


「なんだあれ……」

ユウが声を漏らす。


俺は目を疑った。


見せしめの檻。

その中に人間の赤ん坊。

まだ一歳にも満たない子供が声を出して泣いている。


「おいおい……なんだあれ。人間の赤ちゃんだぞ……」


「なんで檻に赤ん坊が……?」

ユウも顔をしかめる。


「ラゼムさん、あれは一体……」


ラゼムは答えず、吐き捨てるように言った。


「……またか。これが聖王国に知れたら戦になるぞ」


ラゼムの目は怒りに染まっていた。


整列していた兵士の反応も半々だ。

ラゼムと同じく嫌悪を示す者。

そして赤ん坊を価値あるものとして見ている者。


周囲の人々がひそひそ声で囁く。


「あれ、人間の子供だな……」

「まさか王様の食事か?」

「本当に食うのか……?」


ラゼムが俺の肩を掴む。


「すまん。このまま王城へ向かう。ついて来い」


俺達はラゼムの後について王城へ向かった。


**********************


王城の前へ着く。以前来た時は夜だったから、印象がだいぶ違う。


王城は街の外の簡素な木の柵とは違い、丈夫な石壁で守られている。

外からモンスターが攻めてきても、ここだけは突破に時間がかかるだろう。


……ますます嫌気がさす国だ。


大きな扉が開き、王城の中が見える。

ラゼムの後ろをついて歩く。


大広間には兵士が並び、中央に王が座していた。


「おお!久しいな、人間ども」


俺達は頭を下げ膝を着く。


「うむ、今日はどんな用で来たのだ」


ラゼムが王の隣に立つフードのカエル男を見る。

宰相だ。


宰相は王の耳元で何かを告げる。


「そうだった。お前たちに仕事を振らねばならん」


王が指を鳴らすと、宰相が兵士に告げる。

「アクア殿を連れて参れ」


宰相は思ったより高い声だった。


奥の部屋からアクアが出てくる。

目が合うと、アクアはウィンクした。


「王よ、お呼びでしょうか」


「ホヒッ、アクア殿。こいつらの鑑定結果を教えてくれ」


アクアは王の耳元で話す。


話が終わると、王は面白そうに俺達を眺めた。


「アクア殿から報告は受けたぞ。

まずそこのハゲと長髪の二人は能力者らしいな」


ユウとカジが答えかけた瞬間、ラゼムが鋭い目で制した。


王は笑う。


「よし、ハゲと長髪は奴隷区の監視にでも使え。道具としてちょうど良い」


「王よ、もし許されるなら、私の隊に加えてもよろしいでしょうか」

ラゼムが進言する。


「珍しいなラゼム。何故人間など欲しがる?」


「先日の遠征で兵が負傷しまして。補充が必要です」


王は顎を撫で、笑った。

「よかろう。お前の隊で使え」


王は次に俺を見てニヤリと笑う。


「で、お前は?口が達者な人間よ。覚えておるぞ」


「はっ。名はイサムと申します」


「アクア殿が言うには、無能力らしいな」


「……ええ、無能力です」


「クククッ!人間のくせに無能力とは珍しい。

しかし無能力は無価値。口だけ達者は無駄な存在だ」


俺が口を開こうとした瞬間、ラゼムが手で制し、即座に口を挟む。


「王よ、提案があります」


「まさかこの無能力者も欲しいと言うのではあるまい?」


「いえ、東のアジトの警護にどうでしょうか。

魔物の被害で兵が負傷しているので、この人間を代わりに送るのが良いかと」


「確かに人手不足だ。人間なら東側の盾くらいにはなるだろう」


「人間なら交渉も自然ですし、武力行使になっても私の隊から部下をつけます」


「よかろう。諸々の手配はラゼムに任す」


「王っ」

宰相が不満げに近づく。


「宰相よ、ワシの意見に文句でもあるのか?」


「いえ……」

宰相は鋭い目でこちらを見た。


王は立ち上がり、手をパンパンと叩く。

「さて、仕事は終わりじゃ。デザートを持って来い」


俺達は帰ろうと立ち上がる。


奥から檻を抱えた兵士が進み出る。

中にはさっき見た赤ん坊。


泣き声が広間に響く。


喉が詰まり、俺は思わず一歩踏み出した。

「やめっ……!」


「動くな」

宰相の冷たい声が響いた瞬間、体が動かなくなった。


金縛りだ。

意識はハッキリしているのに、指一本動かない。


兵達が檻のドアを開ける。


次の瞬間


王の舌が音を立てて伸び、赤ん坊を絡め取った。


一瞬の静寂。

一瞬の出来事。


子供の悲鳴が途切れる。


口も動かせない。

心の中で外道と叫ぶ。


足が床に貼りつき、心臓が耳の奥で鳴る。

怒りと吐き気が混じり合い、胃がひっくり返る。


王は上機嫌で言った。

「ホヒッ……この赤子、ワシの腹の中でまだ踊りよるわい……ゲップ」


広間に重苦しい沈黙が落ちる。


金縛りが少しずつ和らぐ。

拳が震え、唇を噛み切りそうになる。


「よし、ワシは気分がいい。今日はもう解散じゃ」


王は立ち上がり、奥の部屋に入って行った。


**********************


城を出た俺達は、ラゼムと並んで歩く。


「なんだよあれ……マジで地獄だ……」

ユウが吐き捨てる。


「ええ……流石にアレは笑えないっすよ……」

カジが唇を噛む。


「色々思い当たる部分はあるが、王様は俺達を駒としか見てないだろうな」


ラゼムは俺を見て言った。

「駒でいられるうちは幸運だ。駒ですらなくなる者もいる」


拳が自然と握りしめられる。

……そうだ。俺達はこの国へ亡命してきた身だ。扱いとしては間違っていない。


少し歩いたところでラゼムが言う。

「でも悪いな、三人一緒にしてやれなくて」


「いえ、それは良いんです。

むしろラゼムさんがアジトの警護と言ってくれたお陰で助かりました」


「まぁ俺が信用できる部下を付けるから、安心していい」


「安心も何も、俺はラゼムさんの事、最初から信用してますよ」


ラゼムの表情が、きょとんとした目から笑顔に変わる。

「そうか。なら二人の事は俺に任せておけ」


「もしかして……もうこのままお別れですか?」


ラゼムは静かに頷いた。

「ユウとカジはこのまま俺について来い。隊の宿舎に案内する」


「そんな……」

カジは寂しそうに言う。


ユウが肩を叩く。

「お前、死ぬなよ。ショウと式を挙げるまでは必ず生きろ」


苦笑いが漏れた。

「……バカ言え」


カジも小さく言う。

「離れたくないっす……」


「大丈夫だ。ラゼムさんが部下をつけてくれる。そう簡単に死なねぇよ」


ラゼムが俺を見る。

「イサム、お前は自分の宿舎に戻れ。私の部下を二人迎えに行かせる」


「何から何まで、本当にありがとうございます」


「いいさ。俺はお前が気に入った。

だから一番頼れる二人をつける。死にたくなければ、そいつらの言う事を聞け」


俺はうなずき、ここで皆と別れた。


ラゼム達はそのまま違う方向へ歩いていく。


俺はしばらくその背中を見つめてから、静かに家へ戻った。


**********************


家に着くと、外はすっかり夕方になっていた。

部屋には誰もいなく、静かだ。


胸ポケットからタバコを取り出し、火をつける。

机のロウソクにも火を灯す。


ぼんやりした明かりの中、椅子に座り天井を見上げた。

煙がゆらりと揺れる。


脳裏に赤ん坊の泣き声が蘇り、胸が締め付けられた。


ゴトン、と床に何かが落ちる音。

見ると警棒だった。


拾い上げ、伸ばしてじっと見つめる。


「そういえばこの警棒……」

真っ直ぐ構える。


「これ、ショウが誕生日にくれたやつだよな。

刑事の安月給で、よくこんな高いのを……」


警棒を見つめながら、タバコを咥えたまま考え込む。


少し時間が経ち、コンコン、とノック音。


ユウかカジが忘れ物かと思い、席を立つ。

ドアを開けると──昼間のフードの女が立っていた。

少し離れた後ろには赤髪の青年が歩いてくる。


二人とも夜はフードを深く被っている。


目の前の女性は無言で立っていた。

「えっと……君は副隊長の人だよな」

見れば見るほど麗子に似ている。


女性は睨むように言った。

「……ゴマだ」


赤髪の青年が遅れて来て、ニヤニヤしながらフードを外す。

小さなツノが覗く。


「ちょっとゴマちゃん、それだけじゃ説明にならないって」

青年はゴマを後ろに下げる。


「悪いなおっさん。父さんの護衛から外されたことで機嫌が悪いんだ」


ドスッ。「いたっ」

ゴマが青年の背中を殴ったらしい。


昼間とは全く印象が違う。

いや、これが本性か。

あの時はカエル隊長がいたから猫を被っていたのだろう。


俺は頭をポリポリしながら言う。

「あぁよろしく。俺はイサムだ」


「イサムさんね。昼間も言ったけど、俺はライコって呼んでよ」


「ああ、覚えた。それで、こんな時間にどうした?」


「そうそう。俺達二人、明日からあんたの護衛なんだ」


「ラゼムが言ってた信用できる兵ってお前らのことか。

それに父さんって……二人はラゼムの子供なのか?」


俺は二人をまじまじと見る。


ライコは笑って言った。

「あぁ似てないの気になるよね?

血はつながってない。父さんは育ての親だ。

まぁその話は明日の移動でゆっくり」


俺は短く頷く。

「すまなかった。分かった。明日からよろしく頼む、ライコ、ゴマ」


二人は背を向けて去っていく。


「……ふぅ」

小さなため息が漏れる。


静まり返った部屋に、再び重苦しい沈黙が落ちた。


「よし。当分帰ってこれないなら、忘れ物がないように準備だ」


続く

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