第49話 赤く染まる培養槽
巨大な円形ホールの中央。
その床のほとんどは、透明な観察パネルで組まれていた。
下層には、薬液の中で異形の身体群が静かに浮かんでいる。
白衣の裾を翻して、グラド・マレーンが冷却カプセルの数値をチェックしていた。
「再構築率87%。素晴らしい……この因子なら、対象“R-Ka1032”さえ……」
——ドン。
背後の防護扉が、
通達なしで開いた。
マレーンが振り向く。
その顔に、ほんの一瞬、生身の人間らしい“驚愕”が走った。
「……お前……この座標、通知してないはずだ……!」
光の向こうから現れたのは、
血の匂いと怒りを纏ったレイカ。
刃は納められていた。
だがその目は、あらゆる監視システムより正確に、
マレーンの“呼吸の異変”を見逃さなかった。
「ようやく、観察者が“見る側の恐怖”を知る番ね」
マレーンの指が震え、背後の端末に接続される。
「くっ……まだ“外部干渉ログ”が入らないのか……。
しかたない……想定前倒しだ!」
彼の腕に仕込まれたインターフェイスが起動する。
床下の培養タンクが、一斉に赤く染まった。
《制御コード:Phase-Z》
《対象KRM体群、拘束解除》
《“ゼロ遮断式”により暴走許容》
床の下から、何かが蠢く。
ガラスパネルの下で、異形の瞳が全て同時に開いた。
「来い。私の“証明”たちよ……
お前の進化が“偶然”でないと教えてやる!」
レイカは無言で、足を一歩踏み出した。




