第47話 SUB-PROTOCOL Z
無人の廊下を抜けた先。
白い照明だけが点く先端で、静かに開かれたエレベーターの扉があった。
誰も呼んでいない。
でも、待っていたように、既に“下行き”が点灯している。
レイカは警戒しながらも、足を止めなかった。
もうこの施設は、“見せたいもの”を隠す気すらなくなっている。
むしろ——見せることで試している。
「……誘ってるつもりね。でも……」
刃にはまだ血は残っていた。
それでも、レイカの手は震えていない。
ステンレスの箱に乗り込むと、扉は無音で閉じられた。
操作盤にはボタンが一つだけ。
↓【SUB-PROTOCOL Z】
押さずとも、数秒後には自動で降下が始まった。
最初は静かだった。
だが、降下が進むにつれて、音が変わった。
ガタリ。
小さな軋み。
機械の継ぎ目が風圧で振動する。
重力が、爪先から耳の奥まで少しずつ変質していく。
カチ、カチ、カチ。
どこかで“録音装置”が作動したような乾いた音が、周期的に鳴っていた。
レイカは動かない。
ただ、天井の点灯が一つずつ消えていくのを見ていた。
一階、二階……
やがて、数字の表示すら消えた。
下がっているのに、階数の概念が消える。
(ここから先は、
“記録にも残らない場所”ってことか)




