第44話 刻まれたナンバー
足音だけが、室内に残った。
フクロウの身体は、もう微動だにしない。
刃は納めた。
けれど、重さだけが、まだ手に残っていた。
レイカは何も言わず、部屋の奥へと目を向けた。
さっきまで気づかなかった壁の一部が、ごくわずかに開いている。
目を凝らさなければ通り過ぎてしまうほどの、薄暗い隙間。
「……こんなとこに、出口なんてなかったはず」
だが、誰かが通った痕跡があった。
床に落ちた、濡れた足跡。
こびりついた機械油の線。
そして、ごく微かに冷たい空気が流れ込んでくる。
刃を背負いなおし、レイカは歩を進めた。
狭い。
金属の板で組まれた無機質な通路。
壁には“観察録”と刻まれたラベル付きの記録管が、ずらりと並んでいる。
それぞれに記されたナンバー――
【KR2-014】【O-RK12】【R-Ka1031】
そして、最後尾にあった文字列。
【R-Ka1032】
【記録中】
その文字を、レイカは黙って見つめた。
やがて、ふっと鼻で息を吐く。
「なら、終わらせてやるよ。
この記録も、実験も――全部、斬ってやる。」
通路の奥、空気が変わる。
重たい扉の先、
正体のない“中心”が、レイカの到来を待っている。




