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バウンティ・ハンター レイカ  作者: 武者小路団丸


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42/51

第42話 観察対象:罪

 金属の拘束音が微かに鳴る。


光を遮断された隔離室。

中央に設置された椅子は、医療用でも軍用でもない。

“観察専用”に設計された拘束具だった。


フクロウはすでに座らされていた。

腕、胸、額。各部を締める拘束バンド。

そして左腕には、発動アンプルの供給装置が接続されていた。


静かに、青白い液体が管を満たしていく。


彼は、それを見ない。

目を閉じたまま、ゆっくりと口を開いた。


「——レイカ。聞こえてるかわからないが……

 いや、たぶん、聞かせるために仕組まれてるんだろうな。

 お前の“感情反応”を誘導するために」


静寂。

だが、装置の駆動音がひとつだけ響いていた。

それは、まるで“心音の代わり”のようだった。


「俺は……あの“保釈保証金”のターゲット案件、

 お前に振った。

 あの時は、“面白い案件だ”なんて気取って言ったけどな……

 あれが始まりだったんだ」


アンプルの液体がゆっくりと彼の腕へ。


目の奥に熱が灯る。

だがフクロウは、まだ笑っていた。

皮肉で、寂しくて、どこか悔しげに。


「あれは、“君と発症体を接触させる計画的事故”だった。

 俺は知ってた。

 だけど……“橋は渡らない”って言ってたくせに、

 気づけば最初から、この側だったんだよ」


肩が震える。

骨の奥から、異物の熱が這い上がってくる。

爪の先、関節の内側、眼の奥……

自分の中に、自分でない“構造”が生きていた。


「本当は……

 お前を見てるのが、怖かったんだ。

 “ああ、自分もこうなるんだな”って」


照明が赤く染まる。

脈拍センサーが異常値を刻む。

目の色が、微かに褪せた。


「俺は……

 お前と、アイツ——あの失敗個体、

 両方を同じコンテナに入れて、軍に引き渡すつもりだった。

 “観察対象”として。

 それで全部終わらせる。

 そうすれば、“俺の過去”も、消せると思ってた」


しばらく黙る。

だが、その沈黙は“罪の輪郭”を研ぎ澄ませる静けさだった。


やがて、かすれた声で続ける。


「でも、お前はまだ……

 選ぼうとしてた。

 自分で。感情で。

 怒って、傷ついて、それでも“何かになりきらない”でいようとしてた」


涙ではない。

でも、目の奥にうっすらと熱が滲む。


「すまなかった。

 このまま俺が壊れるのを見て——

 “人間でいようとした自分”を、どうか笑わずにいてくれ。

 ……それだけだ」


彼の爪が黒く変色する。

背中の神経接合部が浮かび上がり、脈動が脳に響く。


《発動率:82%》

《構造異常:侵蝕進行中》

《感情干渉:“罪悪”反応、過剰値にて上昇》


それでもフクロウは、微かに口角を上げた。


「……これで、お前が怒っても、

 それでも誰かを殺さずに踏みとどまったら……

 俺はそれを“祈り”って呼ぶよ」


目を閉じた。

アンプルが最後の一滴を静かに流し込んだ。


その瞬間、室内の赤いランプが、

“観察ログの更新”と共に点滅を始めた。



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