40/51
第40話 その扉の先へ
照明が落ちたビルの中。
かすかな非常灯だけが、一定間隔で床を照らしている。
まるで誰かが“通ってほしい場所だけ”を選んだように。
レイカは銃を構えたまま、ゆっくりと足を進める。
カツン、カツン……
足音が、あまりにも規則的に響く。
それが、この空間の“想定どおり”の動きなのだと思わせるほどに。
廊下の途中で、壁の一部が──
まるで呼吸するように、ぬるりとスライドした。
現れたのは、仄かな明かりをたたえたガラス通路。
天井と足元が透明で、下階の様子がぼんやりと見える。
その下では、別の強化個体が“静止したまま”何かの命令を待っていた。
レイカは足を止める。
「……わざと“見せてる”のね」
その通路の先、ひとつだけ扉がわずかに開いている。
ほんのわずか。
呼吸の隙間のような、油断を誘う角度。
レイカは近づき、銃ではなく──刀の柄に指をかけた。
「……観察者の導線。その先に、何があるのか……見てやる」
足を進めるたび、
床のLEDが“レイカの歩みに合わせて”淡く点滅していく。
もう、導かれているのか、自分が選んでいるのか、区別がつかない。
だが、レイカの目には一点の揺らぎもなかった。




