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バウンティ・ハンター レイカ  作者: 武者小路団丸


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36/51

第36話 全て、見せるための戦争

 鋼鉄の床が揺れた。

上層から伸びるハッチの枠が、鈍く鳴る。


ギィ……ガシャァン……


空気が落ちる音がした。

まるでこの空間ごと、地中に沈んでいくような静けさのあと——

四方の壁が分割され、ゆっくりと“観察ドーム”の天井が開いた。


その瞬間、床下から昇降機に乗って現れたのは、

人間の形を模した者たちだった。

だが、彼らの肌は蒼白く、眼は焦点を結ばず、

それでいて、無音の“殺意”だけが明確にそこにあった。


「強化個体群03、起動」


彼らのスーツに刺されたIDナンバーが、光に照らされる。


同時に、反対側のスロープが開く。

ガスのように噴き出す黒煙。

その中から這い出してきたのは、制御不能な“発症体”だった。


足が逆関節に折れ、骨が外気で呼吸するように蠢いている。

モンスターと呼ばれる“混合個体”たちが、複数、咆哮を上げた。


「観察フェーズ:タクティカルフェイズ開始」

「都市部市街地区画:E-7内、交戦記録を開始」






最初に動いたのはモンスターだった。

鉄骨の足場を引き裂きながら跳躍し、

強化人間の一体に組みかかる。


ガッ。


そのまま首に噛みついたが、血は出なかった。

代わりに金属音。装甲骨格が火花を散らし、

“噛みつかれた者”がモンスターの顎を握り潰した。


「捕食想定値、非適合。

反撃許可——」


ドンッ。


モンスターの胸に、強化兵の肘が突き刺さる。

だがそのまま、モンスターの爪が腹部を抉る。

再生と破壊が交互に繰り返されるその光景は、

「生きる」こととはかけ離れた、ただの“暴力の反復”だった。






「反応速度:0.42秒。

 発症因子波形:上昇。

 再生限界、未到達。観察続行」


スクリーンの中、何人もの研究者が

まるで麻酔を打たれたような無表情で、画面を見つめていた。


「強化人間No.17:左腕欠損。発症は未達。

 被験体-KR4:第三段階まで移行済み」


そのとき、画面の一隅で強化人間のひとりが叫ぶことなく崩れ落ちる。

再生しない。

因子に喰われ、肉体が“発光するように”焼けはじめる。






戦場から離れた通路の奥で、

レイカが唐突に胸を押さえて足を止める。


「何……今の“熱”…?」


彼女の脈が、戦場の“誰か”とリンクしていた。

観察対象R-Ka1032としての中継回路が、

都市全体の戦闘観察と“同期”している。


つまり、これは——


「全て、見せるための戦争……!」


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