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第35話 心は止まらない
通路の奥、通信が途切れる寸前に、最後の言葉だけが届いた。
「君は……まだ、生きている」
──ブツッ。
耳の中が一瞬真空になるような感覚。
誰の声も届かない。ノイズもない。
けれど、その“言葉”だけが、脳の裏側で揺れていた。
レイカは静かに目を閉じた。
そして、ゆっくりと刀を引いた。
「……わかってる。私が証明する」
通信は途絶えた。
だが“声”は消えなかった。
モンスターが咆哮する。
壁を蹴って跳躍。
レイカの視界に、時間が歪む。
そのとき、あの声が脳の奥でふたたび響いた。
「──生きている」
「……生きている」
「…………生きている」
レイカの動きに迷いはなかった。
その言葉を“条件反射”のように胸で鳴らしながら、彼女は刃を放つ。
血が飛ぶ。視界が赤く滲む。
だが、心の中心は静かだった。
──孤独は終わらない。
でもこの声がある限り、“心は止まらない”。




