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第34話 それでも誰かが見ている
——金属の焼けた匂い。
誰の足音も届かない封鎖区画。
その中で、レイカはひとりだった。
背中には痛み。
爪の先は微かに黒ずんでいて、呼吸は乱れていた。
でも、耳元で、再びあの声が届いた。
「R-Ka1032。君は……生きている」
涙は出なかった。感情の芯は、とっくに手の届かない場所に置き去られていた。
感じるより先に、壊れてしまっていたのかもしれない。
けれど、その言葉が、確かにどこかを“支えてくれた”。
「私は……誰かの道具で終わらない」
「誰かが見てる。それだけでいい。私はまだ“私”でいられる」
通信が途切れ、また静寂が戻る。
けれどもう、その静けささえ――怖くなかった。
暗闇の向こうに、通信の先に、誰かがいる。それだけで、この孤独は完全じゃなくなった。




